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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.84 もうすぐ新学期! 学生に使ってほしいおすすめ文房具 その1

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、学生におすすめの文房具をブング・ジャムのみなさんにご紹介いただきました。

第1回目は、他故さんおすすめの「S3」です。

(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2023年11月11日撮影
*鼎談は2024年2月27日にリモートで行われました。

0.4㎜芯のシャープペンを知っていますか?

S3.jpg製図用シャープペンシル「S3(エススリー)」(パイロットコーポレーション)

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――ちょうど新入学の時期なので、学生に「ぜひこれを使ってほしい」というものがあったら、1品ご紹介いただきたいと思います。

【他故】まず私が紹介しましょうか。パイロットの「S3」という300円のシャープペンシルは僕も大好きで結構使っているんですけど、今回新しい軸の色が出たんですよ。

――出ましたね。

【他故】それも、改めて0.3㎜と0.4㎜で店頭に什器を置いて、「書き比べてみよう」みたいな売り方をしているんですよね。

【高畑】「文具のとびら」にもこのニュースは載っているんだよね(記事はこちら)。

【他故】そうそう。それで、「0.4 ってみんな知ってる?」っていう話をちょっとしたいなと思って。多分、0.4 っていう太さのシャープペンシルは、目に入ってないと思うんですわ。

【きだて】いや、出てはいるんだけど、店頭でも本当に見る機会がないというか。

【高畑】久しく表に出ない感じでしたね。僕が学生の頃はずいぶん好きだったんですけど。

【他故】ちょっと今、インターネットでチラッと見ると、0.4ってほとんどというか全部製図用シャープなのね。一般用の筆記具って言っているやつはなくて。「S3」なんかは別に製図用ってはっきりうたっているわけじゃないんだけども、まあでも製図用のかたちをしているじゃん。全く製図と関係ない今風のシャーペンシルで04っていうのは、もうないんですわ。その中で、一番カジュアルで一番安いのがこの「S3」なの。300円で(税込330円)。実は前は、0.4って赤軸と透明ブラック軸の2種類しかなかったんですよ。で、そこに今回、0.3の色が増えるのと同じだけ0.4も色を増やしてきていて。ノンカラーとか透明コーラルピンク、透明パープル、透明ミントグリーンというかたちで、今風の透け感のある女性が手に取りやすいようなカラーのを増やしてきているんですね。

S3-2.jpg

(左から)芯径0.3mm軸色:透明コーラルピンク、透明パープル、透明ミントグリーン
芯径0.4mm軸色:ノンカラー、透明コーラルピンク、透明パープル、透明ミントグリーン、
ミルキーホワイト(数量限定)、透明ネイビー(数量限定)


【他故】これ何で0.4を今売っているのかな?っていうのが、僕は正直言ってよくわからないんですよ。今の0.3って丈夫でそんなに折れないし、0.3でもいいんじゃないっていう気がずっと実はしていたんです。

【きだて】うーん、正直それはそうかも(笑)

【他故】だけど、僕は元々0.4が好きで、今文具王もちょっと言っていたけども、0.4が1989年 、90年ぐらいに突然ほんのちょっとだけ流行った時期があるんですよ。これもパイロットが確か0.4を出して、その時0.4の専用のシャープを作ったんですよ。「シーズ」っていう。

【きだて】俺はそれ記憶にないな。

【高畑】俺は、持っていたかもしれない。

【他故】女子中高生に買ってほしいっていう300円の0.4専用機で、これ0.5も0.3も存在しない。

【高畑】何て名前だっけ?

【他故】「彼女の」っていう意味で「シーズ」。それで、男性用には1,000円で「トラスティ」っていうのが出た。これは、社会人の男性に手帳に書いてほしいといって出したんだよ。

【高畑】うん。

【他故】僕は「シーズ」が大好きで、0.4にハマっちゃっていたんですよ。特に、システム手帳に書き込むときに、0.5じゃ太かったんだよね。しかも、その頃のシステム手帳の罫って割と細いのが多くて、0.5だとギッシリ目に書けちゃう。本当は0.3がいいんだけど、その当時の0.3は弱いので、簡単に折れちゃう。それで「良いのが出たぞ」っていって、実はこれシステム手帳を使っている間は本当に便利だったんですよ。「ドクターグリップ」が出るまでの3年間ぐらいは。

【高畑】昔は、システム手帳って5㎜くらいの罫線が多かったよね。

【他故】そう、ファイロファックスとかだとものすごく細いんだよね。4㎜ぐらいしかないんじゃないかっていうやつが多くて。元々罫線に沿って書く人だったので、余計にきっちり書きたいなと思って。それで、この0.4っていうのがものすごくお気に入りで。でも、90 年代の3、4年ぐらいしか流行ってないんですよ。他のメーカーからのフォロワーもほとんど出なかったし、実際のところ多分パイロットだけがほぼ奮闘してたんじゃないかなっていう雰囲気があって、ぶっちゃけ全体で流行ったものではなかったのかもしれないんだけども。それがすごく大好きで、今でもたまに0.4を引っ張り出して使ったりもしているんですわ。今回わざわざ0.3と0.4っていうセットを出してきて、何がしたいのかな?って思ったら、ホームページに説明があった。

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【他故】「横罫のA罫に合う芯径はどれですか?」みたいなので実際にアンケートを取っていたんですよね。0.3、0.4、0.5を書いてもらって「どれがいいですか?」みたいなので。それで7㎜のA罫だと 0.5 が一番いいっていう話だったんだけど、6㎜のB罫になると0.4と0.3がほぼ同数で、0.4がちょっと多い。5㎜の方眼罫だと0.4がちょうどいいっていうアンケート結果が出た。中学生から社会人1年目男女って書いてありますけど。これって実は、「シーズ」が出た時のアンケートと全く同じなんですよ。0.3と0.4と0.5を書かせて「どれがいい」ってやって、ほぼ同じような結果が出ている。それで、0.4の「シーズ」を販売したという。

【高畑】0.3と0.4と0.5を3本渡して、「どれがちょうどいい?」って言ったら、真ん中に寄りそうな気はしなくもないけど(笑)。

【他故】なんとなくね(笑)。

【高畑】決め打ちで、「0.4が本当にいるのか?」って言ったら、それはどうかわからない気もするけど(笑)。とはいえ、そう言われたら「まあ確かにこの真ん中もいいかもね」って感じそうな気がする。

【きだて】何だろうね。この黒と線の細さのバランスがこれなのかね。

【高畑】僕の高校生の時、ちょうど綺麗にノートを書きたい時期に、自分の中ではマイブーム的に0.4がめっちゃ流行った時期が僕にもあったので。僕のは製図用だったかな。0.4㎜はドラフィックスとかも出ていたと思うし、なかったわけではないんだよね。

【他故】製図用だったら出ていたのよ。「グラフ1000」とかもあったし。

【高畑】三菱もあった気がするな。だからそういうのは結構何種類も持っていて、俺はしばらく0.4専業でやってた時期があるよ。なので、それはすごいよく分かる。俺はB罫のノートだったけど、B罫のノートに綺麗に細く書きたいみたいなところで、折れにくさというのはもうそのまま言っている通りなんだけど。

【他故】そうそう。今回はそのカラーがよりバリエーションが増えて、女性でも手に取りやすかったり。あと男性でも、限定のカラーでちょっと今回すごくいい色が出ている。透明ネイビーっていう、ちょっと今までないタイプの色が出ていて、これがすごく綺麗なんで。これ男女関係なく使えるし、みんなにウケる色じゃないかな。

――ネイビーは限定色なんですね。

【他故】そう。これとミルキーホワイトが限定なんですよ。

【高畑】「S3」の0.4㎜っていうのは、別に珍しかっていうと前からあったんだけど、要は今回はカラーラインナップを一新した。限定色を足して、もう 1 回売り直そうとしているってことだよね?

【きだて】それでニュース化して、目を引いたという話だと思うんだけど。

【高畑】ここでこの0.4㎜っていうのを「推すぞ」っていう事を決めたわけだよね。パイロット的にはね。

【他故】そういうことだね。

【高畑】このタイミングで、今0.4㎜を流行らそうとしているっていう。しかも中高生女子に流行らそうとしているっていう。ここが、どこからの発想で、誰が言い出したのか、どの辺に着地したいのか、どのぐらい流行らせたいのか。0.4ってさ、お店にしても、最近あんまり0.4置いてないという店も結構多いわけじゃないですか。その中でこれをガッツリやってくっていうのがね。今、きだてさんがモニョモニョしているけど、それをちょっと聞きたいな。

【きだて】店頭で0.4の芯を見ないっていうのはそうなんだけど、昔と違って中高生も通販で物を買いやすくなっているので、店頭になくても0.4の芯はAmazonとかで買えちゃうからいいのかなと思って。

【他故】目の前になくても探せるって事だね。

【きだて】そうそう。シャープペンのトピックもしばらくなかったので、ちょっと目を引くかなというのもありで。

【他故】今回、「S3」の新色が出て、0.3と0.4にこの新色軸と同じ色をつけた芯を出しているんですよ。「グラファイト」の限定色で、それも一緒に什器に並んでいるので、まあ一緒に買ってくれということなんだろうな。

【高畑】ケースの色をってこと?

【他故】そう。ケースの色をわざわざ本体に合わせて限定で作っている。それで、0.3は従来品と比べて5本増量の25本って書いてあるんで、これで買うとちょっとお得みたいな(笑)。

s3_graphite.jpg

【高畑】微妙だな(笑)。

【きだて】えーとね、俺はとりあえず「回せるツマミはまず最大値まで回す」というタイプなので、なかなか0.4に行き着かないというか。

【高畑】どういうこと?

【きだて】例えば0.9㎜から0.3㎜というボリュームがあったら、まずは0.3にエイッて振りたいんだ。なので、0.4というなかなか微妙なチューニングに合わせられない。少なくとも、ベーシックな0.5と細い0.3があるなら間はいいんじゃね?という感じで。

【他故】間に行かないのね。

【きだて】間に行かないんだよ。

【高畑】うちオカンのコタツみたいだな。

【きだて】切るか強かっていう。とりあえずピーキーなものから試したいので、本当に0.4を使うという発想が今までなかったんだよ。

【他故】そういう人の方が多いかもね。

【高畑】しっかり目で普通の0.5があって、細いのが好きなら0.3、太いのだったら0.7とか0.9があってというコンマ刻みがあるじゃない。それであえて、この0.4を使うっていうのは、僕が学生の時とかだったら、まあ確かにそれは「ちょうどいい」を狙っているところもあるけど、鉛筆でHBでもHでもなくてFを使うみたいな。

【きだて】はいはいはい(笑)。

【高畑】そういう無駄なこだわりみたいな部分もちょっとあって。

【きだて】若干のこじらせが見えるやつだ。

【他故】謎のこだわりが(笑)。

【高畑】俺の中で0.4っていうのは、こじらせていたりとかこだわりが強過ぎる中で、「どうしてもここ」っていう感じがするんだけど。今回はそういう感じじゃなくて、明るく普通の人に0.4を訴求しようとしているような感じがするじゃん。

【他故】今回はね。

【高畑】今回のムーブメントっていうのは、あの時のこじれた俺たちとはまた違う何かを作ろうとしているんだろうなっていう気はするんだけど。果たして、それがどのぐらい受け入れられるのか。

【他故】ちゃんと刺さってくれるのかっていう話だね。

【きだて】なんかさ、「ちょうどいい」ってなかなか流行らないじゃん。

【高畑】まあ確かにね。

【きだて】OHTOが「低粘度過ぎない、最適粘度インク」って言ってたのも広がらなかったし。

【高畑】ギガ盛りみたいな方が分かりやすいし、ミニマリストみたいな方が分かりやすいみたいな。ちょうどいい生活をしている人は普通じゃんみたいな(笑)。

――ボールペンも0.5があって、0.4があって、0.3があってみたいな感じになっているから、そういうところを狙ったんじゃないですか。

【高畑】あ~、みんなの感度がその細かさを理解できるぐらいに上がっているっていう風に捉えれば、まああれかもしれないけど。

【他故】まあそうですね。その発想は、もしかしたら面白いかもしれないですね。実際、ジュースアップが0.3、0.4、0.5とあって、一番売れているのは0.4なので、そういう見極めをしてくれる人がシャープにもいてくれるといいなっていうことかもしれないですけどね。

【きだて】それで、三菱鉛筆が0.38芯とか出したら面白いな(笑)。

【高畑】それは面白いね。

【他故】JISの範疇に入っちゃうからダメだろう(苦笑)。

【高畑】「それ0.3じゃん」って。

【きだて】そうだった(苦笑)。

【高畑】毎回思うんだけど、パイロットはもうちょっと芯径が違うっていうことをちゃんと打ち出せって思う。多分、今回はきだてさんの話にも通じるんだよ。

【きだて】それな! それはもうちょいちゃんとアピールしなさいよ、と。

【高畑】芯径が違うっていうのは、ちゃんと打ち出してくれよって思うんだよね。

【きだて】「大事なとこだぞ」っていう。

【高畑】「もっと大きく書け」みたいな。0.4をうっかり買っちゃう人が出そうじゃん。「あれ、芯が入らない」みたいな。

【きだて】「これ違う」って。

【高畑】だからこそ、0.4っていう新しいのを流行らしたいんだったら、0.4ってドーンってデッカくして欲しいなっていう。そこだよなぁ。

【他故】でも、店頭の什器で見る限り、0.4の方が量が多くて、「0.4」って書いてあったけどね。まあ、0.4がどんなシャープなのかっていうのは、確かにもっと書かなきゃいけないかもしれない。

【高畑】0.4㎜っていうジャンルをちゃんと打ち出していくっていう。普段のものと間違えないように、ちゃんと「0.4ですよ」っていうのを、しっかり言ってあげるっていうのはあるよね。

【きだて】だからさ、それならもうシャープの製品名も「S4」とかにしろよって。

【高畑】それだと、400円で買うことになっちゃうから。

【きだて】それでもいいじゃん。

【高畑】確かに、「S 3」の0.4みたいな、ややこしいことにはなる。その微妙なセンスっていうのが、中高生女子にちゃんと伝われ、っていうところだよね。

【他故】シャーペン好きな男子だったら、もしかしたらもうちょっとピンと来てくれるかもしれないけど、女子にどれだけ通じるかっていうね。

【高畑】この色で出しているっていうのは、やっぱりそこを狙ってると思うんだよね。

【他故】絶対にそう。

【高畑】それだったらあれじゃん、「S10」とかで0.4出しましただったら、全然分かるんだよ。それは、どっちかっていうと、かつての俺がハマったのと同じようなところを狙っているっていう風には思うので、それは何かおかしくないんだけど。今回は特に、女子を狙いたいんだなーっていう。

【きだて】とりあえず、こじらせたやつはもう相手にしないという判断だろう。

【他故】もう昔のことを知らないんじゃない。作っている人たちが若いから。

【高畑】パイロットがここのところずっとやろうとしているのは、中高生や大学生、女子をちゃんと狙いたいっていう話でしょ。

【きだて】そうだね。「フリクションWaai」もそうだし。

【高畑】女性の層をちゃんと取り込みたいっていうのはすごくよく分かる。方向性はよく分かるのだが。でも今見たら、「Sシリーズ」は芯径のラインアップとしては「S10」とかもしっかり0.4があるんだね。

【他故】あるある、全部あるんだよ。ただカラーのバリエーションが少ないんだよね、0.4はみんな。今回これで、0.3、0.4、0.5で「S3」に関しては、カラーバリエーションが一気に増えたので、もう1回皆さんに分かってもらいたいってことなんだろうなと思いつつ。ただ、今の話とはちょっと直結しないんだけど、この0.4の赤軸が生産終了になっちゃったんですよ。一番好きな色で、めっちゃ綺麗な色だったんだけど、この「S3」の赤軸がなくなってしまうので、これだけが残念。

【高畑】パキッとした色がなくなっちゃったんだ。

【他故】もしかしたら、こういう色のものがどんどん落ちていって、ニュアンスっぽい色になっちゃうのかなっていうのが、古い感覚かもしれないけど、ちょっと残念。

【高畑】やっぱり、ちょっと柔らかい透明系の色に変わっていくんだね。

【他故】そういうことだね、

【高畑】それはなんか流行りで合わせていくっていうのは、分からなくはないけれども。ちゃんと「S5」とかも0.4もあるんだけど、今推したいのが「S3」の300円のタイプで、やっぱり女子中高生を狙いたいんだろうな。

【他故】そうだろうね。

【高畑】「S5」とか「S10」じゃなくて。0.3㎜のシャープって、使っている人はやっぱり女子が多いのかな?

【他故】ちゃんとした統計を見たことないんだけど、イメージで言うとそんな感じがするんだよね。

【高畑】男子は0.5とかでもいいのかね? 男子向けのシャープで細い芯がめちゃ売れている話はあまり聞かない。

【他故】そう。割とゴツいやつは、0.3が売れ残っていたりするよね。

【高畑】オートマチックシャープが出たときに、「0.3が欲しい」と俺とかが言うんだけど、案外そうでもないというか。

【他故】そうそう。

【きだて】女子が0.3を割と好んで使っているとしたら、女子に対して「0.4どう?」っていうおすすめなわけよね。

【他故】そう。やっぱり0.3だと折れちゃうとか、さすがに細過ぎるとかっていう人がいたら、「0.4があるよ」っていうのを伝えるって事じゃないかな。

【きだて】せっかく細く書けているのに、そこから分解能を悪くするような方向に行くかな? というのがちょっと疑問だったんだけども。

【高畑】きだてさんの言う「細い」っていう方に振るか、「太いなら太いでいい」っていうのでいくと、そうなるんだろうけど。

【きだて】せっかく細書きを選んで0.3を使っている子たちが、「ちょっと太くしてみよう」って考えるかな。

――「折れちゃう」とかも含めて、「ちょっと0.3だと細いけど、0.5だと太いっていう」人がいるのかもしれませんよ。

【他故】0.5を使っていた人が、0.3デビューする前に「0.4があるよ」っていうことかもしれないので。0.3を知っている人じゃないっていう。

【高畑】まあでも、そこがいけるかどうかはこれからなんじゃない。これが売れてくれるかどうかっていうところはチャレンジなのかもしれないけど。男子はオートマチックとか材質とか、製図用とかみたいなところが強いけど、じゃあ女子は何っていったら、可愛らしいかどうかっていう。芯径は、メカじゃなくて攻められる場所なんじゃないのかな。あとは消しゴムとかね。だから、そこが何かいけると踏んだんじゃない。

【きだて】そういう裏付けるデータか何かがあったのかね。

【高畑】目新しさはあるんじゃない。最近あるじゃん。ちょっと前に流行っていたやつを上手く掘り起こして、今の人に上手くはまるところを見つけるみたいなのはあるかもしれないから。これも0.4㎜っていう、かつてはこじらせた俺みたいな人たちが使っていたところから、そうじゃなくて別の視点で見ると「ちょうどいい細さ」っていう価値として、もうちょっと違うノリで今の人たちに受け入れてほしいなという。受け入れられるかどうかっていうのはこれからなので。

【他故】まあね。

【高畑】きだてさんが言うように「そんなの流行るか」っていう可能性もあるんだけど、それはどうなんだろうね。やってみないと分かんない感じはするけど。

【他故】僕は0.4っていう芯そのものが好きなので、「知らなかったらみんな1回使ってみたら」っていうような気持ちで今回紹介しました。

【高畑】僕が思うのは、ダイバーシティを保存したいっていうのがあって。どちらかというと、文具多様性が失われつつある時代なわけだよ。いっぱい出ているように見えて、割とみんな無難なところに行きがちだから。このまま行ったら、「もう0.4は不要」みたいな感じになって、メーカーが撤退みたいになっちゃうとちょっと俺としては困るので。0.4の芯は作り続けてほしいみたいなところはあるな。「文具多様性をちゃんと」っていう話で、「学生に使ってほしい」に戻らないといけない気がした。

【他故】学生のみなさんにぜひ1回使っていただいて、後世に繋いでいただきたい。

【高畑】「ちょうどいい太さ」について、1 回試してみてもらうのはいいかも。でも一時に比べたら0.4本当に減ったからね。

【他故】減ったね。調べてみてびっくりしたんだけど、新しいuni芯で0.4ってHBしかないのね。そういうものなんだって。

【高畑】「Pentel Ain」はどうなの?

【他故】「Pentel Ain」はそれなりにある。HB、B、2Bだったかな。

【きだて】まあそれだけあれば何とかって感じだね。

【高畑】ぺんてるはだって、やらないとね。

【他故】ぺんてるは、まだ製図用のシャーペンシルのラインアップがうなるほどあるからね。

【高畑】替え芯は、やっぱりぺんてるは頑張らないと。

【きだて】オートの「プロメカ」も0.4があるのね。

【他故】だから、一応製図用と言われるやつにはあるんだね。

【きだて】ちゃんとラインアップがあるんだね。

【高畑】基本、最低で行くと0.3、0.5、0.7、0.9だと思うので、なくてもという感じだと思うんだけど、やっぱしっかり揃えているところも多いよね。

【きだて】今、Amazon「プロメカ1000」を見ているんだけどさ、0.3、0.5、0.7、0.9は売り切れて、0.4のみ残ってるね。

【他故】じゃあ、他はもう終わりなのか。

【高畑】「プロメカ」だからじゃない。

【きだて】だから、0.4だけが残っているんだと思って。

【高畑】「MS01」とかに変わったからだよ。だから、0.4は売れてないっていう話なんだろうね。

【きだて】そうなんだろうな。

【高畑】なるべく生き残ってほしいなという。まあ、自分が使うシャープペンの芯の細さを選べるっていうのは、なかなか楽しいよっていうのが伝われば。

【他故】ぜひ一度試してください。

*次回は「フリクションシナジーノック」です。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/

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