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【Special】コミックス『文具を買うなら異世界で!』刊行記念トーク!!

1.jpg左からとよだたつきさん、海産物さん、高畑編集長


本サイト編集長の文具王・高畑正幸さんが「文具監修」を務めたコミックス『文具を買うなら異世界で!』が本日1月27日KADOKAWAより刊行。剣士や魔法使いなどファンタジー世界ではお馴染のキャラクターたちが、ジャポニカ学習帳など実在する文房具と出会うと――!?  原作担当のとよだたつきさん、漫画担当の海産物さん、そして高畑さんに、本作の創作秘話と魅力を語ってもらいました。

元ロフト店員の経験を活かしたマンガ

【高畑】ここ数年、文房具を題材にしたマンガがびっくりするくらい始まってますよね(*)。
*『文具少女ののの』(星屑七号/2016年5月刊)、『ぶんぐりころころ』(安藤正基/2017年6月刊)、『文野さんの文具な日常』(榎本あかまる/2017年6月刊)、『きまじめ姫と文房具王子』(藤原鳴呼子/2018年1月刊)

今回の『文具を買うなら異世界で!』を入れて5つ。

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その前だと2005年あたりに『ケシカスくん』(村瀬範行)とか『文具天国』(噌西けんじ)があったんですけど、2016年にコミックスが出た『文具少女ののの』あたりから、同時多発的に文房具マンガの企画が出た印象です。そんな中、とよださんと海産物さんが文房具マンガをやろうと思ったきっかけはなんだったのですか?

【とよだ】そうですね、新しいマンガの連載テーマを決めようって時に、自分の経験を活かした作品を作りたいなと思いまして。実は僕、昔ロフトでアルバイトしていたことがあって、そこで文具担当でした。ちょうどその頃はフリクションやジェットストリームが出てきて、売っている立場としても、もの凄く文房具に興味がわいてくる時期だったんですよ。それまでは漫画家志望ということで、道具として文具を使うことはあっても、性能とかをつきつめてこなかったんですが、働いてからは文具ひとつひとつにも個性があるなと思って興味が強くなりました。その経験をマンガに活かしたいと思って始めたのが今回のマンガです

【高畑】おそらく10年前くらいのことですね。ジェットストリームとか革命的な文房具が出始めた頃で、文房具に対する一般の人の見方が大きく変わり始めた時期ですね。そして文具ブームになり、5年前ぐらいから文具を語る人が増え、2年前くらいから文房具を題材にしたマンガが次々と生まれたわけですから……。今回の企画も出るべくして出たのかもしれないですね。

【とよだ】そうかもしれないですね。

「中二病」×「カエル好き」から生まれた異世界設定

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【高畑】文房具マンガはいろいろあって、それぞれ文房具へのアプローチの仕方が違ったりするじゃないですか。今回は、なんで異世界が舞台なんですか?

【とよだ】当初は現実世界の文具屋さんの話だったんですけど、なんかこうパンチに欠けるなぁと…(笑)。もうひとつ、文具を面白くする要素はないものかと考えている時に、フリクションで書いたものが摩擦熱で消えるのって、中二病っぽいよねって話が出たんです(笑)。

【海産物】フリクションは火属性の魔法みたいだなって。異世界の魔法っぽくないですか。それと、カエル好きの私としては、異世界なら登場人物にカエルキャラクターを出せるって最高だなって(笑)。

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【高畑】原作担当の中二病的発想と、作画担当のカエル趣味の両方がやれるなと。

【海産物】そうですね(笑)

【高畑】まぁでも、「十分に発達した文房具は魔法と区別がつかない」ということですよね。実際の文房具の中には、魔法のように色が変わったり消えたりするアイテムもありますし。今回のマンガの舞台って魔法を使える世界で、そこに実在する文房具を扱う「しろがね文具堂」が現れて、異世界の人達が「文房具すごっ!」って。それって、『ドラえもん』とか日常世界にすごい道具がやって来るマンガの真逆の発想。最初、監修の依頼をもらった時、それは面白いなって(笑)。でも、ファンタジー的な世界に、リアルな文房具を登場させるのって実際どうなんですか?

【とよだ】正直、難しいです(笑)。単純に異世界にポンッと文房具を登場させるだけだったら簡単なんですけど、異世界の人が驚いて、使えて、便利だと思えるものをチョイスして、ストーリーに落とし込むというのはなかなか……。

【高畑】ストーリー作りに大変な工夫が必要そう。

【とよだ】このストーリーには、別にこの文具じゃなくても成立するよねっていうことがないよう作りましたね。

「異世界」で使える文房具?

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【高畑】そういえば、僕はマンガの中に登場させる文具のアイディア出しや、文具の描かれ方の監修をやらせてもらってるわけですが、そもそも、どうして僕に依頼をくれたんですか?

【とよだ】それは担当編集さんからの提案です(笑)。もちろん「TVチャンピオン」を観ていたので、高畑さんのことは存知あげていたんですけど。

【海産物】私も田舎のおばあちゃん家が文房具屋だったのもあり、もともと文房具が日常生活の一部で、「TVチャンピオン」の文房具選手権に出ていた高畑さんを拝見して歓心していました(笑)。

【編集】お二人で描いていただくっていう方法もあったのですが、文房具の奥深さにたじろいでしまい……。文房具に込められた作り手側の知恵や工夫とか歴史や商品トレンドがあったりするわけで、そういうものはプロのお力をお借りしたいなと。そこで「文具王」である高畑さんにご相談させていただいたんです。なんてったって文具の「王様」ですから。

【高畑】確かに、王が監修ということで、異世界っぽい感じもしなくもないですね(笑)。監修の依頼をいただいた時に、ここ10年くらいの仕組みや工夫が面白い文房具がそのまま異世界の中に登場して活躍するのは面白いなと思いましたね。異世界に登場するジャポニカ学習帳の柄が、まるっきり今売ってるものと同じところとか。表紙の植物は、異世界では生えてないですけどね。

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【海産物】そうですね(笑)。

【高畑】僕はいつもは「普段の生活に使える便利な文房具を教えてください」といった依頼が多いんですけど。

【海産物】今回は「異世界で使える文房具を教えてください」(笑)。

【高畑】そう(笑)。だから、いつもとは提案の仕方を変えないとって。

【海産物】「魔法使いが使える文房具を教えてください」って突然言われても、「?」ですよね(笑)。

【高畑】びっくりしたのもあるけど、僕としては面白くて。マンガの題材を考えるブレスト会議を、スカイプで延々と「あーでもないこうでもない」ってやってますよね(笑)。

【海産物】私たちに、高畑さんが「その題材にはこれはどうですか? これはどうですか?」って。

【高畑】そう(笑)。僕としては、文房具の素晴らしさを伝えたくてこういう仕事をずっとやっているんだけれども、もっと文房具のすごさを伝える方法って色々あっていいなって思ってたんですよ。そんな時にマンガを切り口にしたお仕事の依頼があって、これはチャンスだなって思ったんですね。異世界が舞台だと、雑誌で文具を紹介したり実演販売する時とは異なる形での紹介が可能で、めちゃくちゃドラマチックに語れたりする。それこそ第1話の中で、剣士がフリクションボールを振り回して「フリクションヒートスラーッシュ」って叫びながらモンスターを倒す妄想をしたり(笑)。

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子供の頃って、必殺技的に文房具を友達の前で披露していたと思うんですよね。そういうのを大人になった今、マンガ作りに関わって大真面目にやれるのって、すげぇいいなって。だから、僕としてはすごい好きなんですね。文房具をヒントに必殺技を考える時もあって、相談内容が「戦う神官「武闘神官」の必殺技に使える文房具のアイディア出しお願いします」とか(笑)。僕はあのお話好きです。文房具の機能とその仕組みをヒントに、必殺技を主人公が生み出すお話。

【海産物】むちゃぶりですよね(笑)。

【とよだ】ハードル高いですね。

“ブング”の原理を応用した必殺技を開発!

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【高畑】でも、頭を捻って考えて、敵の攻撃の力を守りに利用する「デルガードの構え」ってのがあるとメチャクチャ面白いなと。その「デルガードの構え」を、いざ海産物さんの絵で描かれたのを見て、すごいむちゃくちゃな方法でデルガードを紹介できたなって(笑)。しかも、このマンガの面白いところは、そんなむちゃくちゃな登場のさせ方にも関わらず、デルガードの機能をちゃんと説明しているところなんですよね。文房具の面白さを、別の角度から見直す面白さがあります。毎回どの文具を登場させるかは、なかなか決まらないけど(笑)。

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【とよだ】そうですね(笑)。僕も、バイモ11とデルガードが登場する第4話は結構楽しかったです。

【高畑】この回、バイモ11のメーカーであるMAXさんに監修を出したら、マンガに描かれている図面が微妙に違いますっていうチェックバックをもらって、細かい図面の修正が入るっていう。やっぱりみんなマンガとはいえ、プロなんでちゃんと監修してくれる。

【とよだ】文房具そのものに関するリアリティだけは、嘘つけない。

【高畑】MAXの方も戸惑っただろうね。バイモ11の原理を応用した武闘神官の必殺技「バイモフィスト」なんて監修しようがない(笑)。

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【とよだ】そんなことわからないですもんね(笑)。

【高畑】そのぶっ飛んだところと、文具のリアリティについて理屈っぽく説明するところが面白い。そういえば第3話には、フエキちゃんのことが大好きな測定学者が登場しますね。ダンジョンにいるモンスターがとうもろこし好きで、とうもろこしでんぷん等でできた「フエキ糊」を持った学者が…。あっ、これ以上言ったらネタばれになりますね(笑)。

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【海産物】フエキちゃん、かわいいですよね。キャラクターとしても大好きです。

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『文具を買うなら異世界で!』の作り方

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【高畑】あと、この作品についてはストーリーの作り方も面白かったですね。最初にとよださんが作った大まかなプロットと、「真っ暗な文房具屋を冒険してる小さな妖精が遭遇すると面白い文房具」といった登場文具の大まかな方向性があって、その上でキャラクターを成長させるのに最適な文房具は何かを考える。そうやってできたマンガは面白く、わかりやすく文房具の特徴を紹介しつつ、キャラクターが成長するドラマを描いている。さらに、僕らの現実世界にとっても文房具っていいよねっていうメッセージを発している。こういうの全部ひっくるめて表現できるのがマンガの醍醐味ですね。

【とよだ】文房具が少しでも好きな人には、とにかく楽しんでもらいたいですね。

――もし皆さんがこの作品の異世界住人だったら、何になりたいですか?

【高畑】この世界に行けるんだったら、絶対「しろがね文具堂」開きたいです(笑)。

【海産物】店長?

【高畑】やりたいですよ。店番は可愛いマリアさんにやってもらって、仕入れ担当として。いつも小難しい話をしていて、変なものばかり仕入れてくるみたいな。

【海産物】そんな店長、いてほしいです(笑)。私はモンスターになりたいです。でかいカエルの化け物になって、倒した敵の魚拓をとって保存したいです。趣味悪いかもしれないけど、ご朱印帳みたいに倒した敵の手形を押して「やったー!」って。

【高畑】店長としてそんな方へのオススメは、最初の頃は「ジャポニカ学習帳」を、上級者になったら「トラベラーズノート」をお勧めします(笑)。

【とよだ】僕は商人やりたいな。文具を活用して、アイテムを量産できそうだなって。例えば、武闘神官の第4話に登場する術封を、文房具を使って印刷できるようなタイプにして量産できるようにする。そうしてガポガポ儲ける(笑)。

――最後に「文具のとびら」の読者の皆様へメッセージをお願いします。

【海産物】文房具の好きな方にも、文房具への新しいアプローチとして楽しんでいただけるよう頑張りましたので、よろしくお願いします。

【とよだ】いろんな文房具マンガがある中、1つの切り口として見て頂ければいいなと。気に入って頂けたら、ぜひお手元に一冊(笑)。

【高畑】僕はずっと文房具について、文具王という立場で発信してきたんですけど、やっぱり僕ができないやり方ってあるんだなっていうのを今回すごい感じました。僕が伝えたいことをすごく上手い形でマリアさんが、僕がやるよりずっとステキに紹介してくれてるので、大人だけではなく子供たちにも読んでもらって、文具の世界に引きずり込みたいですね。もう既に文房具を好きな人もそうですけど、マンガとして楽しみながらも「文房具っていいな」って思ってくれたら嬉しいです。「ぶんとび」の読者の人は、たぶん文房具好きなので読んでくれるだろうから、このマンガを友達や友達の子供に貸して広めてください。

【海産物】いいですね(笑)。

【高畑】あと、いつかリアルなお店で、イベントやりたいですよね。文房具マンガも増えてきたし、「文房具マンガ」フェアを開催していただき、その一環として本当に「しろがね文具堂」を作ってみたい。妖精が登場する第5話に出てくるマリアさんのPOPもちゃんと付けて。

【海産物】異世界住人向けPOP(笑)。

【とよだ】「戦闘中に使用すれば、くいしんぼうのモンスターも騙されて動きを止める! 本物そっくりな不思議な消しゴム」とか(笑)。

――興味を持った書店さんは、版元のKADOKAWAさんへお問い合わせを!(笑) それでは、本日はありがとうございました!

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『文具を買うなら異世界で!』
原作:とよだたつき 漫画:海産物
文具監修:高畑正幸
大好評発売中!
定価(本体570円+税)
B6/162ページ
発行 株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス
試し読み http://dc.dengeki.com/newreleases/978-4-04-893603-3/

とよだたつき
漫画原作者・シナリオライター。
『妖怪百姫たん!ゆけむり異文録』『佐倉ミツルは呪われてしまった。』を連載。「妖怪百姫たん!」ゲーム内にて『ものの怪録』を連載中。
Twitter https://twitter.com/mimihane2

海産物(かいさんぶつ)
漫画家・イラストレーター。
『フォトカノ』『妖怪百姫たん!ゆけむり異文録』を連載。「電撃萌王」にて読者投稿ページのイラストを担当。「妖怪百姫たん!」ゲーム内にて『ものの怪録』を連載中。
Twitter https://twitter.com/kaisanbutu


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