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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.83 ブング・ジャム的防災の心得 その3

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、「防災と文房具」をテーマにブング・ジャムのみなさんに語っていただきました。その模様を3回にわたって掲載します。

(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2023年11月11日撮影
*鼎談は2024年1月31日にリモートで行われました。

コレクションの収納には気を付けて!

【高畑】きだてさんは、普段は何か持てったりとかするの? あんまり持たない?

【きだて】もともと筆箱に中に普段からカッターとかミニツールみたいなの入れてて、その辺りはいざという時にも役立つだろうってことで。

【高畑】俺もそうだけど、普段からあれこれ道具の多い人っていうのはいるよね。

【きだて】書類なんかも「A4シェルター・タフ」に入れて持ち歩くといいのかな、とも思ってるんだけどね。書類ファイルがヘルメット代わりになるやつ。

――防災頭巾みたいな感じ?

【きだて】そうそう。あれで一応 1トンまでの衝撃には耐えられるみたいなことを言ってるやつ。首の方が折れるんじゃねえのかっていう話なんだけど。

【他故】そうだよね(笑)。

【高畑】頭を守るのは大事とか言うじゃん。僕ら3人とも普段帽子かぶる派だから、そこはないよりはいいけど。

【きだて】結局のところ、3.11もそうだけど、俺は神戸の地震も体験してるしで。

【高畑】ああ、そうだよね。

【きだて】エリアは京都・滋賀だったから直接の被害はそんな無かったけど、結構揺れたしね。なんかそのわりに呑気というか防災意識薄くてさ。他故さんのさっきの防災持ち出し文具の話を聞くと(こちらの記事を参照)、あー、俺もやんなきゃダメだなという気にはなったね。

【他故】俺のはちょっと偏りすぎてるけどな(笑)。

【きだて】だいぶ他故カスタムが過ぎるんだけど(笑)。

【他故】人に勧めるわけではないが(笑)。

【きだて】辞書は要らねえよっていう(笑)。

【高畑】きだてさんは 3.11 の時にも被害にあってるしさ。

【きだて】そうそう。家中の棚が倒壊したし、蛍光灯が割れてガラス飛び散ったから家の中でしばらく靴履いてた。あと奮発して買ったばかりの大型テレビも画面が割れちゃって。

【高畑】やっぱ、僕やきだてさんに関して言うと、むしろ文具減らせっていう話ではあったりするんだよね。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】減らすのは無理だから、せめて置き方はちゃんと気をつけようってことでさ。重いものを上に積まないようにしようなっていう。天井まである棚もやっぱり倒れるからね。

【他故】そうだよね。

【きだて】3.11の時は文具棚も総倒れで泣きをみたので、あれ以来はノートとかの紙類は下の方に積むようにしてるし、はさみとかの刃物系も下に変えたね。

――危ないですものね。

【他故】飛び出るかもしれないから。

【きだて】それはできるだけ下にして、天井の方に積まないっていう。あとは棚自体崩れてこないように、ちゃんと滑り止めを施したりとかそういうのしてるんだけども。

――コレクションの収納は、気をつけないといけないやつですね。

【高畑】俺が引っ越してきた時に最初被害がほとんどなかったのは、開封してなかったからなんだよね。なので、基本的に今棚に置いてないものは、コンテナに入れてあるんだけど。コンテナは比較的飛び散らないし、丈夫なので。倒れても、パチッて留まってるとあんまりぶちまけないじゃない。

【きだて】でもね、3.11の 時はコンテナの上に別のコンテナの角が突き刺さって割れたことがあったよ。

【他故】恐っ!

【きだて】あの下になってたらヤバかったな。

【高畑】なるべく閉じられるものに入れておく。

【きだて】それは大事だね。

【高畑】あとあれは貼ってる。3Mの本棚用の落下防止テープ。本棚の前にバーとか付けちゃうと、出し入れ面倒で多分続かないかもしれないけど、滑り止めのテープみたいなやつだけど、ほとんど見えないテープなんだけど、本棚の手前に貼っとくと本が出てこないという。

3M.jpg落下抑制テープ 書棚用」(スリーエム ジャパン)

【きだて】あれ効くよね。

【高畑】実際、図書館的なところで落下被害がかなり防げるらしいので。なので、俺も一応本棚の手前に落下抑制テープを貼ってる。

【きだて】俺も本棚にはそれを貼ってる。

【高畑】普段から面倒になってしまうとやっぱり続かないので。あと、せっかくロックが付いてるのに、外した状態で使ってるときに地震が起きたりするじゃない。それも良くないなと思うので、普段からできる方向に持っていこうと。

【きだて】張り切ってガッツリしたシステム組んじゃうと、本当にそれが面倒くさくて使わなくなっちゃうというのは絶対あるからね。いかに普段楽に防災できるかっていうのが大事なんじゃないのかね。

【他故】そうだろうね。

【高畑】防災かどうか分からないけど、僕は不安症なので、いつも自分が行くところに大体パソコンを背負ってるじゃない。ハードディスクは自宅には置いてあるんだけど。そういうのとか、自分がこれがあれば、いろんなことが継続できると思っているものっていうか、実際地震とかになったらそれどころじゃないのかもしれないけども、なんか心の拠り所的な部分っていうのはちょっとあるじゃない。他故さんだったら辞書なのかもしれないけど、そういうものを持っていることで心の安心みたいなのがちょっとあるかなと思っているので。

【きだて】ほう。

【高畑】さっきカッターナイフみたいな話があったけど、被災したところとかで何とかするっていうときに、段ボール工作の技術が役に立ってるじゃない。簡易トイレだったり椅子だったり、パーテーションだったりをダンボールとかその辺にあるビニールシートで何とかしようみたいな話はあるので、そういう意味ではカッターナイフと粘着テープというのはあっていいんじゃないって思うね。

【他故】そうね。

【高畑】あとね、ちょっとした話なんだけど、ゴミを入れる場所が必要だっていうときに、昔おばあちゃんがやってた紙を折って作る器とかが案外役に立ったりするわけです。そういうのが案外知識としては役に立つ場合がある。この間、新聞紙の話が「趣味どき」(こちらの記事を参照)でも出てたんだけど、新聞紙で防災用のスリッパ作るとかさ今新聞紙がほとんどないからなかなかなんだけど、ただそういう事を知っていると案外役に立つ。紙の器って、別にそんな万能じゃないんだけど、とりあえずこぼれないで物を入れられるだけでちょっとよかったりするみたいなのがあったりするんで。ああいうのって、折り紙を知ってる日本人のちょっといいところみたいなのもあったりするよね。

【他故】なるほどね。

【きだて】サバイバルの話をすれば、紙で鍋を折って水を沸かせるからね。

【高畑】実際やったことないけね。A4 の紙ぐらいは手に入るかなと思うので、そういうものはちょっとできる。最低限はさみとかカッターとか、あと粘着テープがあるとできそうだなという気がするので。だから、粘着テープがカピカピになってないかどうかを確認しておこう。

【きだて】だから防災筆箱を作って、ちゃんとローリングストックをしようっていうのはひとつ言っとく。

【高畑】きだてさんは、EDCというかいつも小っちゃいペンとか持ってるじゃない。キーチェーン的なものにしてるじゃない。あれはいつも何が付いてるの? はさみとペンとサインペンかな。

【きだて】カギの方に、これが財布でこれがメジャー。今ちょっと外しちゃってるんだけど、キー型のマルチツールを付けてた。あと爪切りだね。

きだて.jpg【高畑】爪切りは何で付けてるの?

【きだて】俺は、爪がすぐささくれるから、持ってないと嫌なんですよ。使うことが多い。この爪切りすごい。よく切れるし、いいよ。

【高畑】薄くなる爪切りは俺も1個持ってて、出張用のカバンには入ってるんだよ。出張のカバンに入れるポーチっていうのがあって、その中には必ず常備薬、アレルギー薬とか頭痛薬とかそういうやつと、ティッシュももちろんそうだし、大体必要なものは入っている。ひげそりとか爪切りとか基本的なものが入ってるんだけど、出張先で生活する用のツールが入ってるって事は、それがあるとちょっと生活が快適にはなる。

【他故】ああ、そうだね。

【高畑】あとはインスタントコーヒーが入ってたりとか。出張の時にはそいつをポイって入れて持っていく。

【きだて】意外とそっちは大事な気するよね。今の日本で、そこまでサバイバルに腐心しなきゃいけない事って多分なくて、避難所まではだいたい逃げられるとして、あとそこから文化的な生活をどれだけ取り戻せるかっていうのは、精神安定上大きいと思うんだよ。【高畑】避難所に行って戻ってこれなくなる可能性があるから、「じゃあ避難所に行きます」と言ったときに、「40秒で支度しな」って言われてできるかどうかというところで行くと、まとめておくのはいいんだよね。

【きだて】そうそう。まとめてあれば、変にサバイバルキットとかそんなのではなくて、髭剃りとかインスタントコーヒーとかって、持ち歩くのはかなり重要な気はするんだよ。

【高畑】確かに。

【きだて】文具王が言った出張セットは大事だね。

【他故】そうね、いいね。

【高畑】その出張セットを持っていくと、一応出張先の生活と同じような感じのことができそうな気がするので。出張セットは、毎回出張に行くたびに中身入れ替えてるから、確認をしてメンテしてる。毎月1回ぐらいはどこかに行ってるわけだよ。だから、毎月ちゃんと中身が補充されてるっていうところでいくと、案外大丈夫な感じだったりするんで。むしろ逆にその出張セットとかに、最低限のペンとかを入れておけば、防災用のそういうツールになるのかもしれない。

【きだて】そういうことだね。

【高畑】今は出張セットの中には、ノートとかペンを入れてないんだよ。だから、それに入れておけばいいんだ。

【きだて】布テープも入れておけ。

【高畑】布テープとあとちょっとしたものね。ただ、はさみやカッターを入れると、飛行機に乗れない可能性が出てくるけど。

【他故】ああ、そこだけね。

【高畑】貨物室に預ければいいんだけどね。そういうところかな。

【他故】いいね。

【きだて】そういうのをやっていくと、どんどんどんどん重くなるんだよな(笑)。

【高畑】だから、あんまり重くしたくないので、最低限本当に必要なものだけ。さっき言ったシャープペンとメモ帳ぐらいは入れといてもいいな。

【他故】そうだね。

【きだて】シャープペンはちゃんと入れよう。

――今日出た話だと「防災ペンケースを作ろう」的な感じですかね。あと出張セットも。

【高畑】非常持ち出し袋っていうのが、出張持ち出し袋と実は意外と近いんじゃないのかというのが発見だったな。いつも使ってるのにノーチェックだったから、何かいい発見だった。

――きだてさんの、鍵に色々つけとく的な話も。

【きだて】普段持っているものに安心感を持たせておくのも重要だね。

【高畑】そして我々は、コレクションが倒壊しないように気をつける。

【他故】ははは(笑)。そこ大事。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/

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