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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.82 新春スペシャル ブング・ジャムが語る「どうなる・どうする2024年」 その2

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は「新春スペシャル」として3日連続で、ブング・ジャムのみなさんに2024年の展望や抱負などを語っていただきました。

第2回目はきだてさんです。

(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2023年11月11日撮影
*鼎談は2023年12月11日にリモートで行われました。

遊び場の管理人さんをがんばります。

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【高畑】じゃあ次は、きだてさんに語ってもらおうかな。

【きだて】俺は未来予測ではなくて、普通にやりたいこととして「文具マーケット頑張るぞ」というところかな。

【他故】おお!

【きだて】モノから経験っていうのは言われて久しいわけですけど、文房具界隈においてもイベントってすでにあれこれあるじゃない。なんだけど、わりと初期から先鋭化してない?というのが感じとしてあって。

【高畑】とは?

【きだて】「ペンショー」とか「紙博」とか、「インク沼」だとか、なんでいきなりそこまでジャンル絞ってるの?という。最初はもうちょいプリミティブに、それこそデザフェスとかコミケのようにオールジャンルの形の文房具イベントから始まるもんだと思ってて。まぁ、おかげでそこが空いてたから我々がそこを広げられたんですけども。で、それだけマージン取れたからこそ、いろんな人が参加してくれてるなというのがまず一つ。

【他故】ああ、そうだね。

【きだて】それこそ、文房具を使ったボードゲームの人と、木軸のボールペンの人と、スタンプ作ってる人と、ミニ額縁作ってる人が同時に出るイベントって他にはなかったわけで。文具マーケットって今、来たときに自分が好きじゃなかったけども、新しいものを見つけられる可能性が非常に高いイベントになってるなというのがあるんですよ。

【他故】うん。

【きだて】木軸のペンを買いに来た人が、意外とスタンプにはまっちゃったりとか。古文具見つけて、「あ、こういうのもいいな」って帰れたりとか、そういう経験的なところで鮮烈さがあると思うんだ。

【高畑】鮮烈さね。

【きだて】もちろん「ペンショー」に来た人は、ペンを見に来てるのであって。そこでペンだけ見て帰るだけでも充分に満足できる。でも、そこで何か別のジャンルを見つけることはできなかったよね、と。せっかくの機会だから、新たななにかを経験して帰れるというのもいいんじゃないかってことで、それを提供できるイベントとして頑張りたいんすよ。

【高畑】これまでに僕が見てて違うなって思ったのは、元々「文具女子博」とかは企業が出てるじゃない。キーワードに女子っていうのを付けてるっていうのもあるし、紙とかペンとかっていうのはそういうのとの差別化みたいなところもあるし。でも、基本的にはある程度出店メーカーとか出店者っていうところに対して、ある程度きちんとした最初からの根回しがあってできてるところに対して、コミケってきだててさんが言っているように誰でも参加できる代わりに、逆に言うと大企業みたいな感じがないわけじゃない。出てないから。だから、オールジャンルではあるんだけど、逆に言うと小っちゃいところに絞ったという感じもしなくもない。そこは今後広げたいとかいうことなのかな。例えば、「コクヨさん出てくださいよ」って話なの?

【きだて】いや、それは全然ないね。

【高畑】だから、ちょっと違うんじゃない。

【きだて】最初は「文房具版コミケをやろうぜ」みたいなことから始まったんだけど、そういう雰囲気だとオリジナル文房具というかハンドメイド系に強みが出てくる。となると、企業はちょっとアピールが弱くなってくる。

【高畑】そのイベントの個性っていうのが必要だよねっていう気はするんだよね。他と違うってことが。文具マーケットは、どっちかっていうと趣味でやっていたり、小っちゃいところだったり、ハンドメイドだったりみたいな。

【きだて】結局、個人の作家が一番の出店媒体にはなっているんだけども。でもそうか、ペンショーも企業か。

【高畑】多分それぞれ違うんだよ。紙博とかは、手紙舎が自分たちがいいと思っている人たちに声かけているんだよね。「出たい」って言っても、なかなか出られないんだよね。ペンショーは、「みんなボランティアでやっています、ペンに関わっている人だったら出てください」っていうのでペンをやっています。トノリムさんとかがやっている「宇宙遊泳」とかだとインクだけなんだけど、「インクに関わる人出てください」っていって、その特徴を明確にしないと、他のところとかぶっちゃうから、ちゃんと棲み分けようとしている感じがするけどね。

【きだて】そこに無理をして住み分ける意味はあったのかな。

【高畑】でも逆に、きだてさんは棲み分けているんじゃないのかな。そういう受け皿として、そういうところよりもずっと安く出店できるから。宇宙遊泳と文具マーケットに出る人とか、ペンションと文具マーケットに出る人は、それぞれやっぱりいると思うので、かち合いはしてるんだよ。

【きだて】部分的にはかち合っているんだけどね。

【高畑】「文具マーケットで何?」って言われたときに、多分他のと違うっていうのは、そこの敷居の低さなんじゃないのかな。逆に、大きいところ出ないじゃん。だから、こっち側に寄せたんじゃないのって気がしてたんだけど、そうでもない?

【きだて】んー、そういうつもりでも無かったんだけど、でもまぁ方向性としてハンドメイド作家さんが多くなっているので、スケール感もそこに合って維持されてるという話よね。

――大手の文具メーカーが「文具マーケット出たいんですけど」みたいな感じでお願いしてきたらどうなんです?

【きだて】もちろん、そこは普通に出てもらえますけど。

【高畑】だから逆に僕が思ったのは、そういうメーカーがもしいっぱい入ってきて、そっちがガンガン増えてきたら、今の良さが違う方向に行っちゃうんじゃないのかなっていう。

【きだて】いや、そうなったら企業と個人でスペース分けるだけよね。今のコミケみたいにそれはそれで、企業間と個人間でブース分けるだけだよねっていう。今のコミケみたいに、南ホールに企業ブース集めますみたいな。

――「ホビーショー」的な感じで、クリエイターブースと企業ブースみたいなね。

【きだて】たぶんそれで普通にまとまっちゃうと思うんだ。一緒にやってるスモール出版中村さんは、がっつりと個人寄りの方向で行きたいと思ってるはずなんで、そこは無理のないように着地させたいんだけど。ただやらしい話、企業さんからお金いただく方が手っ取り早いからねというのもあって。

【高畑】そうやって手っ取り早くなっちゃうと、手っ取り早いイベントになってしまうので、ユーザーからするとその今ある雑多な楽しさがなくなっちゃうのが残念かなと思うね。

【きだて】だから、そこは一緒に混ぜなきゃお客さんもうまく回遊してくれると思ってて。

【高畑】なるほどね。

【きだて】その辺はシンプルにやっても問題ないんじゃないかなというふうには俺は思ってます。

――そこは高畑さんがイメージしてる文具マーケットと、きだてさんの思ってるのがちょっと違うわけですか。

【きだて】クリエイターズイベントとしては、文具王が気に入ってくれてる今の文具マーケットは維持できるはずなんだけど、とはいえ企業がイベント限定商品を出してくれる分には、それもお客さんとしては嬉しいわけじゃない。

【高畑】そこはさ、女子博とかはそういうのを最初からコミットしてるじゃない。集客もそうだ。それに対してレジを作ったりとか、いろんなことをやることによって、その代わりに出るメーカーに対しては限定品を作ってねと言ってるわけじゃない。じゃあ、そういうことができる組織かっていうと。そこではないじゃない。

【きだて】そう、具体的な方法が今のところないのでどうしようもないという状況なんだけどね。それこそ我々はPOSレジも用意できないし。

【高畑】規模が小っちゃいことが、結果的にはそれが違いになってるんじゃないかと思うけど。良い意味でもね。そこが楽しみとしてはあるし、出店する側もさ、もう年中いろんなところでやってるからさ、「じゃあどこに出るの?」みたいな話になって。例えば、僕が「ブース出したいです」って言っても、女子博とかは門前払いをくらうので、そこは受け入れてくれるのがきだてさんのところだから。

【きだて】ほら、クリエイターズ系はデザフェスもあればクリエイターズマーケットもありで、色々と出せるっちゃ出せるじゃない。

【高畑】いやだから、「デザインじゃないです、文房具です」と言ってるところが文具マーケットだから。あと、そろそろさ「何でもありです」って言ってるけど、差別化が効いてると思うのは、山ほどイベントがある中で、「全部出るの無理」ってなってきているじゃん。そうなってきたときに、「文具マーケットってどんなマーケットなの?」というのは、ある程度文具マーケット側が表明してもいいと思う。

【きだて】うーん。

【高畑】「何でもいいです」っていうのがいいのか、「文具マーケットはこんなマーケットです」って言った方がいいのか。

【きだて】現状、まだね「何でもいいです」って言っても許される時期だと思ってるので、もうちょっとそこで様子を見つつ。まだ大きな問題が起きてないからこそ言えることなんだけども。

――今度で何回目になるんでしたっけ?

【きだて】4回目です。

【高畑】年何回やるの?

【きだて】3回。1月、5月、9月。

――そういう感じで開催時期を決めてるわけですか。


第4回「文具マーケット」は2024年1月14日開催

【高畑】結構イベントが増えちゃったので、そろそろ「これは出るけど、これは出ない」とか、「1回お休みする」とかっていうのが、可能性としてはやっぱり出始めるよねって感じはちょっとしているので。

【他故】まあ、連続で出るとは限らなくなってくるよね。

【高畑】それより気になるのは出展料かな。このまま上がり続けるんだとしたら、ちょっとそろそろ厳しいなと思ってね。

【きだて】一応、ここで止める気ではいる。正直、一般のクリエイターズ系では、デザフェスとかの方が高いんだけど。とはいえ、この辺がまあギリだよなとは思うので。

【高畑】だから出せるというのはあるのでね。

【他故】他と同じぐらいじゃないとね。

【高畑】敷居の高さって価格でもあるので、価格が安いから雑多な人たちが出られてる部分があると思うんだよ。

【きだて】結局のところ、元取れるギリギリのところだと思うのよ。「あんまり売れないけども作りたい」っていう人たちが出て。

【高畑】ギリギリだと思うので、これより高くなるとちょっと本当に出るのが厳しいなっていう。売り上げじゃなくて、利益で1万円出すって結構大変なのよね。

【他故】まあそうだね。

【高畑】「みんな赤字でもやっています」みたいなのって、続かなくなるからさ。そこら辺がまあなんか結構兼ね合いとしては気になるね。

【他故】あるね。

【高畑】ふんだくるのは企業からふんだくってくださいよ、という感じはちょっとしなくもないけど(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】だからそういう意味では、企業ブースをもうちょっと誘致したいってところはあるのよ。

まあ、個人が1回の出展で出せるのはやっぱり1万円がギリだよね。

【高畑】もうそろそろかなとは思うんだよね。

【きだて】いやー、個人的にはもうちょい安くしたい気持ちでいるんだけど、でもまぁ我々の持続可能性のためにすいませんがお願いしますという(笑)。

【他故】今のところはね。

【高畑】まあ、趣味でそういうイベントをやるっていう場所って考えたときに、今のところ差別化の一番のポイントは、多分価格でもあるんじゃない?女子博とかに出るというと、多分企業としてはかなり大きな負担を強いられるじゃない。その中では、比較的参加しやすいっていうのが文具マーケットの面白いところではあるんだけど。逆に言うと、儲からないというところなんだけど(苦笑)。

【きだて】でも、クリエイターズ系のイベントとしては、まあ普通の金額なので、文具イベントというよりはクリエーターズイベントの側面の方がでかいのかな。

【高畑】ただ、クリエイターズになると、単価が高い人は出られるけど、今文具マーケットに出ている人って、単価がそんなに高くないものをやってて、細々だけどやれてますみたいな人が出てるからね。

【きだて】ここでも、文房具の単価の安さがネックになるんだよ。ほんと良くない。

【高畑】デザフェスとかだったらさ、こんな小っちゃいアクセサリーとかでも作品一個3,000円ぐらいで売ってたりするじゃん。でも、文具マーケットで売ってるものって、平均的に単価がめっちゃ安いので。

【他故】そうだね。

【高畑】それこそ他故さんみたいに、500円の同人誌売っていたらさ、じゃあ何冊売ったら出店料出せるのって考えるとさ。

【他故】いやいや、そんなこと考えてないよ。

【高畑】「考えてないですよ」って出られる限界線が、多分1万円ぐらいのところで。

【他故】今コミケが、7,000円でシステム料が1,000円なんだよ。合計8,000円。コミケより高いっていうのは、同人誌持ってくる人にとっては多分厳しいんだよ。

【高畑】運営が大変なのはすごく思うんだよ。だからこそ、文具マーケットの楽しさみたいな部分は、「何でもいいからこうなった」っていうよりは、「みんなが参加しやすい器だったからこうなった」じゃないと。

【きだて】そうだといいなという感じなんですけども。

【高畑】じゃあ何ですか、きだてさんはガンガン規模拡大で?

【きだて】規模拡大すると、スタッフが少ないので死んじゃうから。とりあえず、ここからもうちょっとじわっと大きくなりたいっていうだけだね。

【高畑】もうちょっと大きくしたいんですか?

【きだて】もうちょっとじわっと大きくなって、自力を貯めたい。最終的には、それこそ東京流通センターなりビッグサイトなりというのは夢はあるんだけれども、今のところそれ言うと全員が死んじゃうので、ちょっとずつじわじわと頑張ります、というところだね。

【他故】ふふふ(笑)。

【きだて】今は本当に、命を大事にしつつイベントをやるという、結構ね無茶な考えでやってます。

――スタッフ何人でやってるんですか?

【きだて】常勤は俺と中村さんの2人で、あとふじいなおみさんにSNSを手伝ってもらってるだけ。

【高畑】運営とか会場設営とかは?

【きだて】とりあえず当日にアルバイトを雇うという感じ。なので、文具マーケットのバイトは募集してるので、ちょっと気になる人はぜひ応募してください。

――それも告知で(笑)。

【高畑】ペンショーはボランティアなんだよね。ボランティアでやるだけの魅力があるんだろうね。

【きだて】ペンショーはボランティアで来ている人たちが買える買い物タイムがあるって聞いたよ。それもアリなのかな。

【他故】なるほどね。

【高畑】お客が帰ったあとに、各フロアを交互に閉めて買い物をする時間を作ったんだよ。結局、お店をやってると買えないから、それを入れ替え制でお互いに見て回って買う時間を作ろうというのをやってたね。

【きだて】この間その話も聞いて、上手いやり方だなと思って。

【高畑】店出した人も、また来年も出展したいって思うような仕掛けはほしいよね。何か、わーってやって「終わっちゃいました」ってなっちゃうからね。確かに、それは面白いなと思った。

【きだて】その辺は、色々と参考にさせてもらいつつって感じかな。

【他故】なるほどね。

【高畑】なかなか胴元ビジネスも大変だなと思うけど。きだてさんの夢の胴元ビジネスが。

【きだて】やってみると大変しかないなっていう(苦笑)。

【他故】何も入ってこないみたいな(笑)。

【きだて】現状、労力の割に言うほどの利益はないなーっていう。

【高畑】イメージ的には、もうちょっと大きくしたいという感じなの?

【きだて】もうちょっと。文房具系のクリエイタージャンルって、もうすこしポテンシャルあると見積もってるから。まだこんなもんじゃないはず。

【他故】こんなもんじゃない。

【きだて】規模的には、今の3倍まではいけるかなという。

【高畑】次回が何だっけ?

【きだて】えっと、138ブースだね。

【高畑】138か。その3倍までいけるっていうことか。

【他故】400ぐらい。

【きだて】俺の中では、450ブースぐらいはこのままの流れでいけるはずという予想なんだ。次の会場は300ブースまでは対応はできるから、そこからもう一段階大きくして。

【高畑】それは1月じゃなくて5月?

【きだて】いや、1月の会場。蒲田のPiOってところだけど、300ブースまでは蒲田で大きくしようかなという。

【高畑】今回は130だけど、次回はその倍までいけるってことね。

【きだて】行きたいねっていう(笑)。次回とは言わないけど、もうちょい何回かやって。300超えたら、もう流通センターへ行くかなとか、色々と考えます。

【高畑】なるほど、そこまで行ったら、それこそちょっとそれ系のところに、「私が主催者です」って言ってきだてさんの顔写真が出てきて、何かろくろを回してる…。

【きだて】それに何のメリットがあるんだよ(苦笑)。

【他故】それ系(笑)。

【高畑】何か、それ系のニュースのところで、きだてさんがろくろを回しながら、「こういう世界を作りたいんですよ」って言ってるのが。

【他故】いいね。セミナーを開いて儲けようぜ(笑)。

【きだて】セミナーが一番なんだろうな、お金を儲けるには。どうなの?

【高畑】そこが、文具っていうジャンルだからな。

【きだて】そこな(笑)。

【高畑】今流行りの投資なんかの講演とかはあるけどさ、文具の講演で儲けるのは難しいよね。

【きだて】そうなんだよ。講演を聞いてくれた人たちがなにか儲けの糸口を掴めるとかあれば、みんな聞きに詰めかけてくれるんだろうけど。その可能性が異常に薄すぎてさ。

【高畑】「えー」っていうぐらいしかないから。なかなかそれも難しいよ。まあ、スケールしていけるのは、やっぱりイベント主催のメリットではあるけど、まあなかなか難しいね。

【きだて】とはいえ、やっぱり文房具とリアルイベントって相性が絶対にいいので、もうちょっとみんな楽しめるでしょ。

【高畑】それはね。せっかくなので、記事としてはきだてさんがどういう思いでイベントをやっているかを語っておいた方がいいなという気がする。なんかほら、「ぶっちゃけ企業の方が儲かるでしょ」みたいなことを言っててもしょうがないので。「文具文化に貢献するためにきだてさんは頑張っているよ」っていうのはちょっと記事的にはなんか表明しといて。

――そうそう、あんまりお金の話をしててもね(笑)。

【きだて】いや、俺らがそんな高尚な話をしててもそんな関係ないかなと思ってるんだ。

【高畑】でも、結局「僕らの遊び場を誰が作ってくれるか」問題ではあると思ってるんだよ。

【きだて】逆にそこだけだよ。その場所を提供しているだけであって、そこに理念とかの入り込む隙はあんまりないと思うんだよ。

【高畑】理念っていうか、遊び場を作るのが理念なんじゃないの?

【きだて】そこがそうだと言えばそうなんだけども、要は単に公園の管理人のおじさんなわけだよ。

【高畑】いや、そうなんだけど。でも別に、管理人をやりたいっていうのがなければやらなくていいわけじゃん。そんなわざわざ大変なことやらなくてもいいけど、やっているのは「いや儲かるからです」って言うんだったら、それはそれで答えなのかもしれないけど、そうじゃなくて「何でやってんの?」っていうのはどうなの?

【きだて】だから、それは儲かるかなと思ってやってみたら、そんなに儲からないねっていう。

【高畑】そういうことなのね。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】でも、みんな楽しんでくれているので、これはやめちゃいけないなと。

【他故】まあまあね。

【高畑】一応そこはね、参加者としてあってほしいなと。

――まあ、きだてさん的には、そういう話をかしこまってするのは、照れくさいっていうのもあるんじゃないですか。

【きだて】あんまり、理念、理念みたいなことを言うのも苦手だから。

【高畑】まあでも、「他のところでもいいじゃん」ってなるのかというと、文具マーケットには僕も出てるけど、他のところにあんま出てないわけで。それはやっぱり、参加のしやすさだったりとか、雰囲気だったりとかもあると思ってるので。そういう意味では、きだてさんが遊び場を提供してくれてるから、そこに行ってる感じはしているので。「いや、思ったより儲かんねえじゃん。じゃあやめちゃえ」って言われると、それはそれで遊び場がなくなっちゃうから残念だね。

【他故】「もうちょっと頑張って」みたいな(笑)。

【きだて】いや、思った以上にね、みんな喜んでくれるからさ。

【高畑】みんな喜んでいるんだよ。

【他故】喜んでるよ。

【きだて】やめようがなくなっちゃったよ。

【他故】いやいや(苦笑)。

【きだて】「とても良いイベントです」ってほめてくれるからさ、うれしくなっちゃって。

【他故】だって、面白いんだもん。

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大勢の来場者で賑わう文具マーケット会場(2023年2月25日に東京・五反田TOCビルで開催された第2回「文具マーケット」のもよう)


【高畑】他故さんは出てみてどうだっの?

【他故】明らかに自由度が高かったし、参加してみて面白いのもそうだし。あとね、他にないタイプのマーケットなので、「いいとこない?」って聞かれて、「文具マーケット出ませんか?」っていう風に紹介しやすいんだよ。例えば、コミケに出展してて、小説を書く友達ができて、「コミケどうですか?」って聞かれたら、「やめたほうがいいんじゃない」という風に言っちゃうこともあるけど、でも文具マーケットの場合はさ、例えば「文房具イベントないですかね?」って聞かれたらもうすぐにでも「今度 1 月にあってですね。もしよかったら来ませんか?」って言って実際に声かけた人がかなりの成約率でブース出してるので。

【きだて】他故さんも文具王も営業してくれて、本当にありがとうございます。

【他故】そんだけ面白いし、1回出た人がもう1回出るかどうかは分からんけど、少なくとも出て面白かっただろうと思うのよ。正直ね、あの体験っていうのはなかなかできないよ、ああいうのって。

【きだて】これに関してはね、やっぱり来てる人が文房具好きというので固まってるのがでかいなと思って。

【他故】そうだね。

【きだて】文具というジャンルの中で、いろんなもの見れるっていうのが一つ大きいし、来る人みんな結局文房具好きなんで、文房具に関するものに対して財布のヒモがゆるい。

【高畑】まあ、安いから。

【他故】他の文房具のイベントで売ってるものに比べると安いので、何周も回って2周目、3周目でも買ってくれるっていう。

【きだて】本当にね、みんなもうちょっと高く値付けして儲けなよって思うんだけどさ(笑)。

【高畑】そこは色々だよね。俺が売るものはまだ高い方だと思うんだけど、それでもね。でも、どうやって値付けするか考えるね。難しいね。だから、あのイベントは、どこにそれを持ってくるかっていうところの割とギリギリのところをみんなやってる感じがする。それがいいところなんじゃないのかなと思うので、きだてさんが突然中世の地主みたいになって「ウハハ」とか言って「もっと税金をよこせ」みたいになってくると、ちょっと感じが違っちゃうからね。

【きだて】それをやったら、普通に一揆と打ち壊しが起こるのが目に見えてるのでしませんよ。

【高畑】そこは、きだてさんと中村さんの人の良さが出てるのかなっていう気はするけどね。

【きだて】いやだって、俺なんかでも、いちおうは文房具業界でそこそこ顔が出てるわけだから、あんまり阿漕なこともやりづらいという。

【高畑】確かに。

【きだて】業界内でみんなに好かれていたいんですよ。

【高畑】「きだてはあくどいことをして儲けてるぞ」って言われないようにしないと。

【きだて】そうそう。それで最終的に、みんなが出展料を超えた利益を出してくれたら、それで最高ですよね。

【高畑】そこだよね。

【きだて】他故さんが紹介してくれているというのは、きっとそこもあるでしょ。「コミケで売るよりは同人誌売れるよ」とかそういうことでしょ?

【他故】それもあるし、やっぱりそのジャンルの人が固まっているっていう体験をするかしないかで大分違うと思うんだよね。小説を書いてるから文フリなら売れるっていうタイプと、「小説を書いているけど、僕のは文房具小説なんで」って言った瞬間に話を聞いてくれる人がたくさん来るのとではやっぱり違うというか、出会いの方向が全然違うので。文房具と名乗ってるものを売るんだったら、文具マーケットいいですよっていうのは多分正解だと思う。どっちにしても、まず1回試してみようよっていう。

【高畑】とりあえず今年は、今流行りのっていうか、今注目されているイベントとか集まる場所を提供するというのが、木立さんの2024年の抱負になるんだね。そこをちゃんと運営していくというか、ちゃんと育てていく。

【きだて】みんなの遊び場を、もうちょっとちゃんとなるように、管理人のおじさんとしてうまいこと整備しますよ、ということで。

【高畑】全体的には拡大していきたいよね。

【きだて】地方でもちょっとやりたいね。

*次回は他故さんです

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/

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