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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.09後編

ブング・ジャムが選ぶ! 2017年の〇〇な文具

ジャム.jpg
左からきだてさん、高畑編集長、他故さん

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.09後編では、2017年を振り返ってブング・ジャムのみなさんが一番〇〇と感じた文具を紹介してもらいました。

*Vol.9前編はこちら

戦慄するほどの切れ味!

ハサミ.jpg「包丁バサミ」(フタバ)分解して包丁単独で使える


――後編は、2017年の締めくくりとして、みなさんの「今年一番の○○文具」をご紹介いただきます。まあ、無茶ぶりかもしれませんが(笑)。

【他故】無茶ぶりです(笑)。

【きだて】俺ははさみ持ってきました。今年一番の…というか、今年一番衝撃的だったはさみ。

【高畑】お~、じゃあきだてさんから。

【きだて】他故さんは見たけど、文具王はまだ見てないよな。はい、このはさみ。

――おおっ、その名も「包丁バサミ」(笑)。

【きだて】今年の秋に他故さんと岐阜県関市の刃物まつり取材に行ってさ。そこで色々なはさみを専門的に売ってるショップを見つけて。

【他故】そう、はさみセレクトショップみたいな、はさみ何でも屋があって(笑)。

【きだて】そこでね、他故さんが見つけて。

【高畑】恐っ! これ、分かってても恐いわ。

【きだて】まず見た目の禍々しさがすごい。さらに分解すれば名前の通り包丁としても使えるの。これがまた包丁として良く切れるんだ。とりあえずアジをさばいたりしてみたけど、何の不満もなかったね。

【他故】ちゃんと、包丁として最適な切れ味になっているんだ。

【きだて】さすが関の刃物ですよ。よー切れるわー。「エクスシザース」じゃないけど、刃物として良くできてる(笑)。

――それはそうでしょう。

【他故】「包丁として、はさみとして、アウトドアに」だって(笑)。

【高畑】いや~、これは怖ぇな~。

【きだて】ちょっと、これ切ってみ。

【高畑】(試し切りをして)いや~、音がいいね。

【他故】全然十分だよ。はさみシリーズに入っていても、何の問題もないよ(笑)。

――厚めのフェルトとかはどうだろう?

【きだて】どうだろう? それはまだ切ってないな。

【高畑】(試し切りをして)よ~く切れます。

【他故】「エクスシザース」クラスやんけ(笑)。

――これ、おいくらだったんですか?

【きだて】いくらだろう? 1,300円とか1,500円だったような。

――安いじゃないですか!

【きだて】これ、研げるからね。

【他故】あ~、包丁だからそれはそうだよね。

【きだて】研ぎ直しできますから。

――包丁じゃない方の刃はどうなんです?

【他故】こっちは、分離したあとは特に使いようのない、恐い武器みたいな(笑)。

【きだて】鎌っぽい。

――草が刈れるかな(笑)。

【高畑】何かそれっぽいね。

【他故】これを見つけたときには、僕は専門家じゃないから、「すげーのあるよ」と言われて見ていても、こんなのただのイロモノだと思っていたからさ。だから、シャレで買ったのかと思っていたぐらいで。

【きだて】なんかね、これは只者ではないな、というニオイがしたのよ。いや見た目から只者じゃないけど。

【高畑】シャレはシャレだけどさ。

【きだて】見た目が、とにかく恐いじゃん。

【高畑】恐い。これ、刃が出てないって分かっていても触りたくないもん。

【きだて】一応、閉じてる時は刃は外に出てないから。

【高畑】はさみだからな。

【他故】なってる、なってる。

【きだて】だから、包丁としてもちゃんと使えて、アジの二枚おろしとかもちゃんとできましたから。

――これ、調理用になるのかな。パッケージの写真だと、はさみでネギを切ってますよ。

【きだて】まあ、どう見ても調理ばさみカテゴリーですよね。でも紙も良く切れるという。

【高畑】最近よく聞く、包丁を使わずにはさみだけで調理するみたいなことに使えるんだよね。

【きだて】そうそう。あと、同じように「包丁はさみ」として売られてるやつで、静刃がまな板、動刃が包丁になってるのもあるんだけど、ちゃんとはさみとして動刃静刃両方から切れる分だけこっちの方が使いやすい気がする。

――ああ、確かに「これ1本あれば、何でも調理できますよ」みたいなね。

【きだて】商品パッケージの説明で「アウトドアに」と書いてあるけど、外で調理するときはまな板が足りなかったりして、意外とはさみの方が重宝することがあるんですよ。

【高畑】鍋の上で、はさみで切りながら入れちゃうとかね。

【きだて】ネギとかはその方が全然ラク。あと、この包丁はさみならタマネギが丸の状態から切れた。普通の調理ばさみでは無理だな。

――肉も切れますよね。

【きだて】切れる、切れる。これで鶏肉も切れた。

【他故】切れたんだ。

【きだて】皮付きの鶏肉が切れたので、間違いない。

【他故】とうもろこしいけるかな?

【きだて】とうもろこしいけると思うね。

【他故】お~、すげー。

――冷凍にした肉とかは?

【他故】「冷凍食品には刃の厚い専用包丁をお使いください」と書いてあるね。

【きだて】ああ、刃がこぼれるからね。それは普通の包丁と一緒だよ。

【高畑】冷凍食品には、専用があるの?

【きだて】冷凍食品専用の、出刃っぽい分厚い包丁あるよ。あとノコギリ刃みたいになってるのとか。

【高畑】このはさみに分厚いのがあるわけではないのね。

【他故】これで厚いやつがあったら大変だよ(笑)。

【きだて】それこそ、「エクスシザース」じゃないか。「エクス包丁シザース」だよ(笑)。

【他故】「そっちの方が便利だよ」って言われるかな(笑)。

――でも、それ欲しいですよ。

【きだて】包丁の板厚を3mmにしました、みたいな。

――ちょっと握れないかも。

【きだて】重いよ、きっと!

【他故】それ、持ち歩いたら危険なやつだ(笑)。

【きだて】これ見たとき、何か既視感あるなと脳内で画像検索していったんだけど、それで思い当たったのが、「ファイナルファンタジー8」の主人公の武器。「ガンブレード」だよ。ガンじゃなくて、「はさみブレード」(笑)。

【高畑】はさみブレード、まんまやん(笑)。

【他故】しかし、はさみとしてはあまりにも過剰だよ。

【きだて】いやもう、ビジュアルが過剰過ぎてさ。

――これは、キッチンにしまっておくのが一番ですよ。こんなの、ペン立てに挿してあったら大変ですよ。

【きだて】包丁が刺さってるペン立ては恐すぎるね(笑)。これは俺もさすがに、箱に入れて文具棚にしまっています。

【高畑】引き出しとかね、そういうところにしまっておくのがいいよね。

【きだて】調理ばさみとしてはかなり高性能だし、アウトドア用にも使えるしで、1本持っておいても悪くはないと思うのよ。「是非っ!」ていう。

【高畑】前に何かできだてさんが紹介していた、「フォーク&ナイフはさみ」に比べたら、大分戦闘能力が高いよね。

【きだて】高いね。大分実用的だね(笑)。

【他故】関の刃物市で売っているようなものだから、全くの冗談のものはないなと思ったよ。

【高畑】それで、ちゃんと切れちゃうんだよね。

【きだて】そう、切れ味はご覧の通りで。

――調理用はさみとして、結構売れているのかしら。

【きだて】どうだろう。売れているんだったら、もっとよく見かけると思うけど(笑)。

【高畑】特殊過ぎるよな。

【他故】もしあったとしても、これが並んでいる売り場って、かなり限定されますよね。何だろうな、専門の…。

【きだて】うーん、専門の売り場じゃなくて、スーパーの催事コーナーでアイデア商品セールとかやってるじゃない。あそこでしか売られないやつだよ(笑)。

【他故】それにしては、刃物としてあまりにもヘビー過ぎるよ(笑)。

――これは、調理用のはさみ売り場でしょうね。

【きだて】包丁売り場ではないですね。

――これ、使っているんですか?

【きだて】普段はちゃんとした包丁使ってます。これは「駄目な文房具ナイト」で紹介するスライド用に、アジとか鶏肉とか切って撮影したけど。

――「駄目な文房具」じゃなさそうな気がしますけど(笑)。

【高畑】「文房具」じゃないから。

――(切りながら)やっぱり、よく切れるな。実力は折り紙付きですね。

【きだて】間違いない。

【高畑】中途半端に実力がすごいから(笑)。何だろうな、「キン肉マン」に出てきた変な超人が意外と強いのと一緒だよね(笑)。

【きだて】「スプリングマンがウルフマンを倒しちゃったよ」みたいな(笑)。

――ベンキマンとかね。

【高畑】そう。「え~、マジでこいつそんなに強いの?」みたいな(笑)。いや、だから冗談かと思ったらすごいよく切れるというね。

【きだて】包丁で紙を切るのってどうなんだろう。刃によくないのかな?

【高畑】それはちょっと、よく分からないね。

【きだて】まあ、後で研げばいいやと思って、色々と試しちゃったけどね。

――大丈夫でしょう。

【高畑】でもこれ、何かちょっと切るときなんかは、わざわざ外して包丁として使うより、簡単でいいんだろうね。

【きだて】それこそ、調理ばさみだけで作る料理本とか出ているからね。

【他故】あるね、見たことあるよ。

【高畑】まあ、それでもいいのかな。

【きだて】全然いいと思うよ。

【他故】調理ばさみのすごい版としてね。

――たまには、はさみを使いたい人もいますからね。

【他故】これは、見たときに「かっこいいな」と思ったけど、「俺のジャンルじゃない」と思って見逃したんだけど。

【きだて】他故さんが見つけたのをすかさず買うという(笑)。

【他故】「何かあるよ」って(笑)。

【きだて】ちゃんと教えてくれるからね。分かってるな他故さんは(笑)。とにかく、今年買ったはさみの中で、一番インパクトのあるはさみだったということです。

【他故】こっから先、インパクトのあるはさみがどれだけ出てくるかのね(笑)。

【きだて】しばらくは更新しなさそうなぐらいの感じでした。

――いい買い物でしたね。

ちょっと硬めですごくイイ!!

ココフセン.jpgクリップココフセン」の新色スモーキーカラー(写真は「マスタード」、カンミ堂)

――次はどなたにしましょうか?

【高畑】俺にする? 地味な話ではあるんだけど、ここしばらく使っているものの中で、今年新しくなったものが面白かったので。「ココフセン」は前から、本を読むときに付けていて便利なので、手帳に必ず2個ぐらい入れているんですけど。で、クリップタイプの「クリップココフセン」が出て、より便利になったのでこっちにシフトして使ってたんですけど。今年出たのかな? 「手帳用」が発売されているんですよ。前と一緒かなと思っていたら、「ふせん硬め」って書いてあるんだよ。

【きだて】へー、本当だ。ちゃんと「ふせん硬め」って書いてある。

【高畑】これ、触ってみ。

【きだて】(触ってみて)あ、全然違うよ。コシが全然違うよ。

【他故】そこは本気で盲点だった。全然違うじゃん。何これ。

【高畑】でしょ。「ココフセン」好きなんだけど、本からはみ出した部分がピラピラするじゃん。あれが、他の何かに当たったときに弱いなと思っていたので。

【きだて】あ~、分かる、分かる。

【高畑】それがですよ、硬くなっているのに気が付いて、それが小躍りするぐらい嬉しかった。

【きだて】それは、よく見逃さなかったね。

【高畑】枚数がちょっと少ないのかな。25枚入りなんだよ。

【きだて】あ~、厚みがあるからね。

【高畑】でも、絶対こっちがいいって思って。違うでしょ?

【きだて】全然違うよ。

【他故】全く違うね。

――これ、従来品と値段が違いますよね。

【高畑】値段が違うんだ。

【きだて】前より高い?

――いや、安いです。前のが税抜420円で、これは税抜390円。

【高畑】厚みがあるから、この張りが気持ちよくって、僕はこれが大好きなんですよ。

【他故】これ、替えのふせんはあるの?

【高畑】あるよ。2個入りで売っているよ。

【他故】そうなんだ。完全に見逃してたわ~。

【高畑】従来品を使っていたとしても、貼り替えれば使えるから。

【きだて】クリップは一緒だものね。色合いが違うだけか。

【高畑】いや、一緒。製品的には一緒のはずだよ。

――ちょっと見逃してましたね。

【高畑】でも、カンミ堂のふせんで硬いのは、これだけなんだよ。

【きだて】もうちょっとアナウンスすればいいのに。

【他故】女の子向けとか色々あるけど、おじさんにめちゃめちゃいいじゃん。

【高畑】他のふせんでも、「ペントネ」みたいに巻いてあるやつは薄くないとできないけど、「ココフセン」は平だから問題ないし。これは張りがあるから。俺はね、これを全力で流行らせたい。

【他故】これはいいね。これって、色はこういうアースカラーっぽいやつ?

――2色あるみたいですよ。

【高畑】この硬いやつのハーフサイズが欲しいんだよ。

【きだて】あ~、なるほど。

【他故】硬ければハーフでもいいよね。

【高畑】ハーフだと、細くてちょっとクシャッてなっちゃうからね。

【きだて】細いのだと、指でつまみ出すときにクシャッとなっちゃいそうで嫌なんだわ。

【高畑】あと、使って分かったけど、擦れに強い。

【きだて】あ~、やっぱりそうだ。

【高畑】ケースの一番上に出ているやつが、手帳なんかにずっと入れておくと擦れちゃうから。それにも強い。

【他故】ほぉ~。

【高畑】俺的には、これのハーフサイズも出してよと思うんだけど(笑)。これはね、小さな違いかもしれないけど、実は僕にとっては大きな違いなので。

【きだて】これは、欲しい人結構いるよね。

【他故】いると思うよ。

【きだて】言われると、「あ~欲しかった」ってなるから。

【高畑】使ってみた人の記憶の中で、なんとなく「あ~、硬くてもいいかも」というのはあるんじゃないの。

【きだて】これは、「サラサドライ」いけるんじゃないの。

【高畑】書いてみて下さい。俺は、フィルムふせんにはクッキリ書きたい派なので、パイロットの「ツインマーカー」をいつも持っているよ。

【きだて】(試し書きをして)うん、やっぱり「サラサドライ」はくっきりだね。

【高畑】「サラサドライ」は強いよね。

【他故】ちゃんとインクがのるもんね。

【高畑】これは、今までと使い勝手が変わらず、ちょっと枚数が少ないけど、その代わりにこの張りのある感じが俺的に好感触なので。

【他故】完全に知りませんでした。カンミ堂は新製品がどんどん出てくるから、ちょっと見逃してたね。

――ちょっとくやしい感が(笑)。

【きだて】何か、文具王にしてやられた感があってムカつくな。ちきしょう。

【他故】「ちきしょう」まで言わなくても(笑)。

【高畑】最初に触ったときの「あっ、違う」っていうのが(笑)。

――実際に触ってみないと分からないですよね。

【きだて】それって、自分で気が付いて、他人にドヤ顔したいやつじゃん。だから、文具王が嬉しそうに言っているのが腹立つんだよ(笑)。

【高畑】「知ってた?」みたいな(笑)。

【きだて】これ、自分で気付いて記事にしたかったわ。

【他故】そうだね、「お前も気付いたか」ぐらいは言われたいよね。

【高畑】カンミ堂のフィルムふせんに関しては、もうちょっとコシがほしいなと前からずっと思っていたので、私としてはすごい嬉しい。

――他故さん的にも、硬い方がいいですか?

【他故】今触ってみて、硬い方がいいですね。「ココフセンカード」は、硬くすると入れられなくなるかもしれないので、あれはあれでいいと思うんですけど。

【高畑】あれも硬くできるんだったら、それでいいんじゃない?と思うけど。

【他故】それだと、チャージしにくいんじゃないかな。

【高畑】それはあるか。まあ、「クリップココフセン」は使い切りだしね。

――従来品はここまで硬くないですよね。

【高畑】ここはここで独自なので、他のメーカーと比べても仕方ないんだけど、全体的には他より薄くて柔らかいものが多いんだよね。

【他故】やっぱり手帳用っていうと、出ていると引っかかっちゃうとか、あるいは他のノートと比べて長く貼っておくからとかそういう理由があるんだろうか。

【高畑】その辺は、「手帳の使い勝手を考慮し」としか書いていないから分からないけど。とにかく、このちょっとした厚みの違いがすごく気持ちいいな。

【他故】それは、明日買いに行きます(笑)。

【きだて】これが文具王の今年一番の文具になるの?

【高畑】今年一番のというか、今年一番の小さな発見かな。

――これ、結構革命じゃないですか。

【高畑】ねえ。こういう小さな改善だとか工夫なんかをちょっとずつやってくれると、ユーザーとしてはすごい嬉しいな。

【きだて】この辺の小回り利く感じはカンミ堂っぽくていいよね。

【他故】選べるようになったのは、すごくいいことだよね。

【高畑】選べるようになったのにまだみんな気が付いていないので、そこは声を大にして「これもあるよ」って言いたい。

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シャープペンを振り続けて40年

モーグルエアー.jpgモーグルエアー」(写真は0.3㎜タイプの「03」、パイロットコーポレーション)


【きだて】じゃあ、他故さん。

【他故】僕の中では、勝手に盛り上がっているところがあるんですけど。

――「モーグルエアー」ですね。

【他故】社会人になると、シャープペンシルをそうそう使うことはないだろうと言われていて、実際にはそんなに使う人はいないと思うんですけど、ここのところシャープペンが進化したとかブームになっているので、買ったからには使うという感じになってきたんですね。強引に使うのは無理なんですけど、手帳に使うとか何かを書くのに使うとか。たまたま、シャープペンシルで絵を描くのを久しぶりに復活させたのが今年だったので、やっぱり使わないといけないな、使ってみようと。それぞれ各社のものを新しいものから昔のものまで使っていって、最後に手元に残ったのが現状では「モーグルエアー」ということになったので。私はと言うか、シャープペンを40年振っている人なので。

(一同爆笑)

【高畑】40年振っている人(笑)。

──「モーグルエアー」には、振るだけで芯が出る“フレフレ機構”が搭載されてますからね。

【他故】振っちゃうんですよね。だから、振れるものを手元に残しておきたかったというのが一つ。あと「モーグルエアー」が、今の僕のデザイン感覚でいうと、めちゃくちゃカッコよく見えるんですよ。これ、カッコよくないですか? 軸の先端が半透明になっていて、この中のメカが、0.3㎜になって紫になったんですよ。0.5㎜だと黄緑だったけど。

――それ、気になってましたよ。

【他故】この紫が、非常にいい感じで、カッコいいと思うんですけどね。

【きだて】俺ねー、前からこのコイルな感じが「奇械人ガンガル」に見えてしょうがないんだ。

【高畑】えっ、何それ?

【きだて】『仮面ライダーストロンガー』に出てくる怪人。

【高畑】ストロンガーがこんな感じじゃん、手が…。

――変身するときに、手袋を取って…。

【きだて】そう、手のコイルでね。でも、ガンガルはもっと全身がコイルなんですよ。

【高畑】(スマホでガンガルを検索して)これか(爆笑)。

【他故】ガンガルでウケてる(笑)。

【きだて】だろ。これ「モーグルエアー」の中だろ?

【他故】奇械人の中でもいろんな軍団があって、これは動物の軍団なんだよ。

【きだて】いいよ、他故さん。そこに乗らなくていいよ(笑)。あんたはシャープペンの話をしろよ(笑)。

――話が途中になってますよ(笑)。

【他故】そうそう。シャープペンシルを使うこと自体が僕の中でブームから外れてたんですよね。いろんな筆記具を持っていて使っていたのにもかかわらず、やっぱりシャープペンはセカンドであり、サードであり、なかなか出番がなかった。こんだけモノが出ていて、小中学生が楽しく使っているのに、どうも今ひとつ乗り切れなかったんです。実は、僕は筆圧が全然高くないから、折れない系はあんまり意味ないんですよ。どんなに頑張っても全然折れないので。だから、強い筆圧をかけてどうのというのは全然必要なかったんですが、小学生の頃に使っていたシャープペンシルが、芯をギュッと押すとちょっと引っ込むというのが、普通だった時代。そういうところの感覚にすごい近いのがモーグルだったんですね。キュッとちょっとだけ戻る感覚。それとプラス、40年も振っている人なので、最終的には振りたい。どんなシャープペンでも、いつかは振っているという(笑)。

【高畑】これ、ユニットが潜るだけじゃなくて、先端も引っ込むのね。

【他故】そう、先端も引っ込むの。なので、芯そのものがなくなるという感じで、露出面も減るんだけども、この潜る感じが僕にとっては好きな感じなので。

【高畑】振る感じは、前のに比べるとかなりマイルドになったね。

【きだて】ゴツーン、ゴツーンというのがなくなったんだ。

【他故】これはスプリングになっているのかな。前の鉄の筒が入ってたやつは、ガツーン、ガツーンいってたからね。

【きだて】これ、ゴンゴン動いているのが見えるな。

【他故】ここのところに窓が付いているから。振ったところが見えるって言っているんだけど、どうも上手く見えないな(笑)。

――高速で動いていますから(笑)。

【きだて】追いきれないよ。

【他故】そうそう。

【きだて】(ペンを持って)あ~、何度持ってもこれ滑るわー。

(一同爆笑)

――手汗系の人は(笑)。

【他故】だめだよ、ここヌルヌルしてるじゃん(笑)。

【きだて】ごめーん。

【高畑】やっぱ、グリップはね。そこはストレートだものな。

【他故】何もないからね。まあ、ここから先、ドクターグリップとくっつくという可能性もあるから。

【高畑】ここさ、切子職人に頼んで「チュイン」と入れてもらえば?

【きだて】ローレット彫ってもらうの?

【高畑】そう。手で入れたローレットを彫ってもらって、江戸切子の人にななめに入れてもらったらどう?

【きだて】手彫りのローレット?

――それ、高いんじゃないですか(笑)。

【他故】でも、ローレットモデル出たら欲しいな。

――その辺は、バリエーション違いで出る可能性はありますよ。

【他故】ここからまた出てもおかしくないから。500円クラスで売れている時代だから、今のうちにやっておけというのがあるんですかね、

――金属軸モデルが出てもいいでしょうしね。

【高畑】オリンピックイヤーに向けて、フレフレは強いよ。

【きだて】2020で「フレフレ」だものね。

【高畑】そういうこと。

【きだて】それは強いわ。

【高畑】だから、2020年は「フレフレイヤー」なんだよ。多分、それに向けて、フレフレの最高級モデルを開発しているんだよ。

【きだて】多分、ゴールドモデルが出るよね。

【他故】ゴールドモデルはやってもいいよね。

【きだて】「2020ロッキー」の最新バージョンとか出て欲しいな。

【他故】今は、「ロッキー」の名前のものがないからね。その辺も、名前として活かせるなら、出てくるんじゃないか。

【高畑】これで、冬のオリンピックだったら、最高だったんだけどね。「2020」で「モーグル」だからね。

【きだて】バッチリだよ、もう。

【高畑】でも0.3mmが出て、ガツガツ使うんだったら0.5mmかなと思っていたけど、この0.3mmていうのも、振るの好きな人にはいいんじゃない。俺も振る派なので。

【他故】0.3mmが好きな人にも、「フレフレを出してあげたいな」というのはあったと思うし。

【高畑】振るのに慣れちゃうと、パイプスライドを使わずとも、ちょうどいいところで振れちゃうから。そこはいいよね。

【他故】好みはあると思うけど、「リズミカルに振ってそれで芯がでればいいじゃん」っていうタイプの人ならばね。

【きだて】これを使ってみて、やっぱり「グニュッ」と先端が入るのは俺は苦手なんだけど。

【他故】その辺はね、各社色々あって選べるのがいいところだから。

【きだて】好みで色々選べるという現状はとても素晴らしいんだけど、他故さんはこれなのね。

【他故】僕は、最後に手に残ったのはコレだったね。

――それは、色々試してみての、結論だったわけですか?

【他故】うちにはもう、何十本のシャープペンシルがあるわけですよね。それを順番に使っているぐらいに、それぞれローテーションを組んで、絵を描いている。で、最後に手元に残ったのが「モーグルエアー」。

――フレフレ楽ですものね。

【高畑】楽だよ。

【きだて】俺も「2020ロッキー」で中学時代を過ごしたからさ。

【高畑】俺も。四角いやつな。

【きだて】そう。

【他故】「2020ロッキー」って俺が大学生の頃だったんだよな。だから、俺はロッキーを経てないのよ。

【きだて】そうなんだ。俺が中学生だったから、そのぐらいだよね。

【他故】みんな「懐かしいね」と言うでしょ。もちろん、商品を知っていたし、見ていたけど、買ってないんだよ。

【きだて】他故さんは、その流れに触れてないんだね。

【他故】俺の時は、真鍮の胴軸で、先にでかいプラスチックのグリップが付いて、でっかく「2020」と書いてある時代のやつだから。

【高畑】それで、四角断面で角錐形だったじゃない。あれが当時、すごいカッコよく見えたんだよ。

【きだて】カッコよかったし、手にもなじんだんだよねあの形が。

【他故】中高生に爆発的に人気だったというのは当然知ってたんだけど、当時の大学生だとあの青や赤は買わない。ビビッド過ぎて(笑)。

【高畑】まだ「BOXY」とか流行ってた頃だからね。

【きだて】俺の「2020ロッキー」は黒だったなー。

【高畑】俺は青だったな。で、あのデコボコのグリップが気持ちよかったんだよ。

【きだて】あ~、はいはい、そう。

【高畑】そういう意味では、きだてさんが言うように、グリップが欲しい感じはするね。

【他故】もうちょっとボコボコのやつが欲しいよね。

【高畑】これ、中が透明で全部見えているのがきれいなんだよね。ここにグリップをかますと、中が見えなくなるからね。

【きだて】そこはもったいないよね。

【高畑】ここの黄色いパーツがきれいなんだよね。それも分かるんだよな~。

【きだて】この振るのもね、いい気分転換になるんだよ。

【高畑】それは分かるな。

【きだて】これは、疲れて手首を振る感じに近いよね。ちょっとリフレッシュの動作なんだよ。

【他故】はいはい。

【きだて】だからいいんだよ。しかも、中学時代ずっと使っていたというのもあって。

【高畑】そうなんだよね。

【きだて】他故さんが「体に染みついている」というのは、俺もそうだし、文具王も多分そうだよね。

【高畑】そう。あのね、タイプライターのキャリッジリターンと一緒なんだよ。

【きだて】分かる。ガシャーンってやつね。

【高畑】1行書いて戻すみたいな。これも、1行書いて振るという、ちょうどいい感じの流れがあるじゃん。ちょっとまとまった文章を書くとそうなるよね。その気持ちも分かるな。他のも好きなんだけど、これはこれで好きなんだよなぁ。

【きだて】うわぁ、中を開けるとメカメカしいな。

【他故】開けると、ここが思ったよりカッコいいんだよね。

【高畑】まあ、俺が中学生だったら、バラしてるよね(笑)。

【きだて】そうだろうな。「授業聞けや」っていう(笑)。

【高畑】それでいて、この透明度の高さがね。金型の精度の高さが、やっぱりちゃんとしてるよね。

――0.3mmはちょっと色が違うんですね。

【きだて】ちょっとスモークかかってますね。

【他故】0.5と0.3があまりにもデザインが違わな過ぎなので、差を付けようということだよね。

【きだて】そういうことだよね。

【他故】店頭で間違えちゃうからね。

【高畑】カッコいいね~。この先端の部分の削り方が「ハイテックC」っぽい感じがね。「ここから細いよ」っていう。まあ、各社各様だよね。他のも好きだけど、これはこれで。振る気持ちはすごい分かる。

【他故】シャープペンは何でもつい振っちゃうので(笑)。

【高畑】分かるわ。

――「Bun2大賞」でも「モーグルエアー」を「他故賞」に選んでましたよね。

【きだて】他故さんは「モーグルエアー」が本当に好きなんだね。

【他故】これは、「待ってました」というよりは、不意に現れた感じがして。どちらかというと、僕の盲点を突かれたというイメージなんだよ。

――「月刊ブング・ジャム」のVol.1でも「モーグルエアー」を取り上げましたね。

【他故】その頃はまだ、色々と使っている最中だったので。

【高畑】使ってみて結局…。

【他故】結局ここだった。

――今年の締めくくりとして、何か上手くまとまった感じがしますね。ありがとうございました。

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プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。

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