【連載】月刊ブング・ジャム Vol.08後編
Vol.08前編はこちら
シンプルでカッコいい! 革カバー
測量野帳専用革カバー(THING OFTHINGS)、右は限定柄の測量野帳(コクヨ)
――前編では手帳を取り上げましたので、後編では皆さんがお使いの手帳まわりのアイテムをご紹介いただければと思います。
【高畑】どうしましょう。2個ぐらいずつ紹介しましょうか。
【他故】どうしようかな、「ジブン手帳」の話とかしちゃったので。今考えているのは、「測量野帳」のカバーの話をしようかと思っているんだけど。1枚革でできている、特に何の変哲もないものだけど。
【高畑】それ、知らないな。
【きだて】革を折っただけだ。
【他故】そう。
【きだて】すっごいシンプル〜。
【高畑】じゃあ、その話から行こうよ。
【きだて】それは気になるね。
【高畑】どこで売っているの?
【他故】コクヨが原宿に出店した「THING OFTHINGS(シンク オブ シングス)」で売ってたものなんだけど。そこでしか売ってないのかな。
【きだて】見たことはないね。
【高畑】初めて見た。
【他故】これが今、ちょっとお気に入りなので。
【きだて】かっこいいね。
【他故】本当に何もない、1枚の切りっぱなしのやつが、ダンボールのケースにベロンと入っていたんだけど。この黒と茶があったのかな。
【高畑】折り目も付いてないの?
【他故】何もない。本当に1枚で入っている。
【きだて】折り目付けるのは自分で?
【他故】大分かかった。
【高畑】最初はさんでから、しばらくはブヨンとなってたんだ。
【他故】そうなっているから、重しを置いたりして折り目をすごい付けた。
【きだて】へぇ~。
【他故】これ、「THING OFTHINGS」ができたときに買ったから、4月だったっけ? お店ができたのは。
【きだて】5月じゃないかな。
【他故】それから半年くらい経って、ようやくこのかたちになったけど、未だにブワンとなるから。
【きだて】これがもっとビシッとすれば、すごいかっこいい気がする。
【他故】ただこれ、革が厚いので、さすがにエッジがビシッとならないんだよね。
【きだて】でもふっくらしている分、持ったときの手の当たりはいいのかな。
【高畑】面白いね~。
【他故】個人的に気に入っているのは、専用で設計されているから、この裏のところまで革がピッタリくるんだよ。これをやると段差が一切出ないので、書くときに邪魔になるところが全くないので。ここまでできている革のカバーって、あんまりないんだよね。
【高畑】あえてどこも留めていないけど、ずれたり、気持ち悪いところとかはないの?
【他故】特にない。もしあるとしたら、上下が分からないということだけ。開くと逆さまということが多い(笑)。
【きだて】マーフィーの法則だ。
【高畑】そこに、箔押しか何かをしたくなっちゃうけど。
【きだて】それが1点入っているのもいいけど、何もないのもいいよ。
――お店にそういうサービスはなかったんですか?
【他故】野帳に押すのはあったよ。もしかしたらあったのかもしれないけど、買った段階でどの位置が真ん中かぴったりと分からないですからね。
(一同)あ~。
【他故】かなりクセがついてからでないと。
――クセがついた段階でお願いするとか(笑)。
【他故】できるんですかね(笑)。
――裏メニューとして(笑)。
【他故】本当にシンプルなんだけど、めちゃめちゃ丈夫だし、中に入れている野帳がノーマルなやつじゃなくて、限定品の明るい色のやつだと、差し色っぽくなって非常にいい感じなので。
――はい、はい。
【他故】これがノーマルな緑の表紙だとあんまり目立たないんだけど、赤とか黄色とかのを入れていると、ちょっと見えるところがきれいだったりする。で、最近は野帳をラフに使うように変えたんで、横長開きにして裏面を使わないで軽く書くようにしているので。昔は縦長開きでビッシリ書いてたんだけど、ちょっとラフに使ってみようと思って、絵を描いたり、何か貼ってみたり。書くことにこだわりすぎていたので、これに変えてからラフに使ってみようかなと思って。
【高畑】他故さんが使うと素敵に見えるな~。
【他故】そんなことはないよ(笑)。
【高畑】でも、そうやって片面使いの横長開きにして。
【他故】書きたいときはもちろんビッシリ書くけども、どっちかっていうとすき間を空けて絵を描いたり、必要なものがあれば貼ったりして、ちょっと気楽に使っていこうかなと。
【高畑】きれいだな~。
【他故】表紙に何も描いてないから。今まで自分の中に、変なこだわりがあったんですよね。表紙に文字が書いてあると「縦長開きだ」と思い込んでいたところがあって。
――あ~、なるほど。
【他故】これだと、完全に何も書いてないので。横にするときに、自分の中でハードルがなくなるから。
【きだて】抵抗がないよね。
【高畑】これは何で書いたの?
【他故】これは「キャップレス」万年筆。万年筆を使いたいけど、これは裏面が抜けちゃうので、これで裏面を空けているというのもある。
【高畑】太書きを使うと抜けちゃう?
【他故】太いと抜けちゃう。
【高畑】そんでそのカバーか。いいよね、キレイだよね。
【きだて】その革厚いよね。ゴツッとして。
【他故】かなり厚いよ。
――これ、お幾らぐらいだったんですか?
【他故】5,000円(税別)ですね。
【きだて】いい革なんだよな、これ。
【高畑】「トラベラーズノート」のカバーも、切りっぱなしのただの四角い革じゃない。
【他故】トラベラーズのエイジングとちょっと違うんだよね、これが。あっちは、古くなって手になじむ感じがあったんだけど、こっちはもっと抵抗しているという感じで(笑)。ラフに使っているからボロボロなんだけど、これそんなに簡単に悪くならないぞという(笑)。
――野帳がまた、フィールドで使うものというイメージがあるから。
【他故】これ、ペンを挿したいという人には向かないんですよ。どこにもペンを挿すスペースがないから。ここに無理矢理挿そうかなと思ったんですが、ピッタリすぎてうまく挿さらないので(笑)。
【きだて】無理に挿してこの革に変なクセついちゃうと悲しい気がするよね。
【他故】だから、もったいないというのがあって。これ自体セカンドの手帳なので、他に筆記具があるのでこれに付けるのはやめようと。その割には、いろんなところに連れて行っているんだけど。サッと出してすぐに使える野帳の良さみたいなのがあるので。
――高畑さんは、旅行に行くときはいつも野帳を持って行かれるんですよね。
【高畑】僕は、カウネットで売っている透明カバーを付けているんですけど、これだともうちょっとおしゃれに持てるよね。まあ、透明カバーだと、中に何かはさんでも外から見えるという楽さ加減があるんだけどね。
【他故】ああ、そうね。
【高畑】それにしても、200円の「測量野帳」に対して、5,000円の革のカバーだから。それで、200円のリフィルを入れ替えている感がないのがいいよね。
【他故】野帳はいつでも手放したくないというかさ、サッと持っていたいという気はあったんだけど、手元にたまたま革ものが増えてきちゃっているから、合わなくなってきちゃったんだよね。ただ裸で持っていると。
――なるほど。
【他故】旅屋さんのカバーを持っていたんだけど、カバーごと紛失してしまったので、どうしようかと思っていたときにこれが出てきたので、「こりゃいいや」ということで。
【きだて】かっこよろしやん。
【高畑】いや~、こういう大人になりたかったな(笑)。
(一同爆笑)
【他故】今でもなれるだろ(笑)。
【高畑】『黒革の手帳』じゃないけど、ポケットからスッと黒い無地の手帳が出てきたらかっこいいじゃないですか。
【きだて】今から目指しても、俺たちはもう無理なんだよ。
【他故】何でやねん(笑)。
【高畑】俺たちはもう手遅れだから。
【きだて】この生き方にはなれないんだよ!
【高畑】ちょっと、これはあこがれるものがあるよね。
【きだて】子どもの頃に思っていた大人は、こういうのを使っているんだよ。
【高畑】ああそうね、そんな感じがする。
【他故】でも、中がラフに使えるのはいいかもしれない。これが本当に革製の手帳で、4、5千円するいい手帳だったら、むしろ身構えて書けないかもしれないけど。
【きだて】中が野帳という気軽さがいいよね。
【高畑】本当に専用だから、ぴったりできているのがいいよね。
【他故】全くムダがなく、ぴったりとシンプルで。ここまでのかたちになるのに手こずったというのもあって、むしろ今は愛着がわいている感じがあるよ。
【高畑】他故さんはあれだね、いい感じになるところまでちゃんと使っていて。
【きだて】何にでもマジックテープ貼るようなやつとは違うね。
(一同爆笑)
【他故】開くたんびにバリバリって(笑)。
――何か言われてますよ(笑)。
【高畑】いや最近ね、ノートパソコンにこういう革カバーを付けてたりするんだけど。
【きだて】おい、どうした。どうした、高畑!
【高畑】持ち運ぶときにカバーがあった方がいいので。まあそれはともかく、いいものを見ましたよ。
開きたいときにスパッと開く
ブックダーツ(銀座吉田)
【きだて】じゃあ、他故さんもう一個。
【他故】もう一個といっても、小さいやつなんだけど。「ジブン手帳」に付けてる「ブックダーツ」ぐらいしかないんだけどね。何だろう、すごい便利というわけじゃなくて、スピンを増設するのが面倒くさかったんだけど。スピンが足りないところをすぐに開きたかったので、最初はクリップで留めていたんだけど、クリップって厚いでしょ。閉じると邪魔なんだよ。それで、薄くてはっきり分かるやつで、開いたときにある程度重量があってスパッと開くもの何だと考えたときに、手元に「ブックダーツ」があったので。
【きだて】じゃあ、スピンも併用してるんだね。
【他故】一番重要なところはスピンで開く。月間と、今日の日付が入っている週間は、スピンで開く。だから、この2本はぐるぐる動かすんだけど、第3のいつも付けているガントチャートに、前も言ったけど体重とかそいうのをつけているので、日に一度はここを開く。
――そうか、そうか、日課ですものね。
【他故】スケジュールのところは、日に何度も開くので、スピンじゃなきゃ困るんだけど、スピンを増設するのはさすがに面倒だったので、何か手軽にはさんで動かせるものはないかといったときに、ブックダーツがあった。
【高畑】ブックダーツって、その手のものの中で、極端に薄いからね。それはいいよね。
【他故】薄くて、多少重量があっった方が、パッと開いたときに分かりやすいから。
【きだて】そうだね。ペラッとやったときに、確実に開くものね。
【他故】挿している場所っていうのが、たまたま「ジブン手帳」はガントチャートが上下に2カ月あるので、今はここだけど翌月になったらずらす。
――そのページの下にずらすわけですね。
【他故】「ここですよ」というのが自分でも分かるようにしている。ダーツが挿しているところがそうだという感じで。
【きだて】きちんとしてるな~。
【高畑】ブックダーツだからね。サイズ的にもちょうど合ってるんだね。
【他故】これが悪くなったりしないので、1個あれば何十年でも使える。
【きだて】そりゃそうだよね。
【高畑】あれ、1缶に大分入っているよね。
【他故】缶で買っちゃったけど、全く減りゃあしない(笑)。
――まあ、そうですね。
【他故】そういうことで、これは「ジブン手帳」にしてから特に使っている。前に「モレスキン」を使っていたときは、重要なページに挟んだりしたことがあったけど、実はそのときは手帳の中味を見直すということはあまりしていなくて、書きっぱなしのものが多かったので。こっちは、毎日このページだけは常に見返すので、自分の中で気に入っているものを付けておいた方がいいかなと思って、ブックダーツを付けている。かっこいいとかそういうことは二の次で、どっちかというとこ薄さと重さが、自分にとっていいので。
【きだて】分かる。
これさえあれば、どんなマス目にも合う!
ウチダテンプレートNo.78(マービー)、下は高畑編集長自作のテンプレート
――次はどなたにいきましょう?
【高畑】じゃあ、俺がいきます。これです。
【きだて】テンプレートか。
【高畑】ウチダの「No.78」という、これ銘柄指定なんですけど。手帳を使っていると、手帳のマス目に合わせてToDoのチェックボックスとか書きたくなるんですけど、それでいろんな四角を書くのにテンプレートが必要で、よく手帳のブランドなんかでテンプレートを出したりするのね。テンプレートはいろんなものがあるんだけど、要らない絵がいっぱいあるんだよ。トイレの男女のマークだったり。
【他故】俺も持ってるけど、要らない絵がたくさんありますよ。使っているのは4つある四角のところだけ。ToDoの四角しか使ってない(笑)。
【高畑】でしょ(笑)。こんなに面積あるのに、使わない矢印とかなんかがある割に、丸は12と10と8しかなくて、サイズがさほどないとかね。でも、最近の手帳の方眼とかが㎜単位でいっぱいあるじゃない。ってなったら、ピッタリはめたい訳ですよ(笑)。で、ちょうどいいのがなかったりするので。これは、四角も丸も2㎜から10㎜まで、1㎜刻みであるんだよ。丸も四角も2~10㎜まで1㎜刻みであるので、どのマス目でもペタッと合わせてみるとちょうどいいのが見つかったりするので。この木のかたちとか犬のかたちとかは要らないじゃん。この指差しマークですら要らないから。
【きだて】とりあえず、この丸と四角があればということだね。
【高畑】あと、マス目をつないで囲ったりするときに、このカド丸四角は悪くないんだけど、まあそれくらい。いっぱいテンプレート見たんだけど、俺が手帳用に使えると思ったのはこれぐらい。手帳に入れておいて、どんなマス目にも合わせられるので、結構いいよ。6㎜はよく使うじゃん。5㎜、10㎜に6㎜があって、測量野帳とかだと3㎜だったりするからというと、どれでも行けるんだよ。これはピッタリはまるのが気持ちいいので。
【他故】そうだね。
【高畑】どうせテンプレートを持つんだったら、これかなという感じ。値段も320円で高くないんだよ。色々と探した中でこれ以外にないとういうのがあって。
――なるほど。
【高畑】これに至る前に、自分でも作ったんだよ。自分の手帳に合わせたやつを、レーザーカッターで作ったの。ブロックマンスリーのブロックにピッタリ合うようにしているので、俺がブロックを囲うのにちょうどいいように作ったので。カスタムできれば、もちろんこういうのがいいんだけど、そこまではなかなかできないので、汎用性があるものというと、この2㎜から10㎜まで1㎜刻みというのは、何かと超便利だよ。
【他故】いいね~、うん。
――今は、「No.78」の方を使っているんですか?
【高畑】これは1個しか作ってなくて今も時々使うけど、精度的な問題があるから、使い勝手は「No.78」の方がいい。
【きだて】やっぱり専用で売られているものの方がいいんだ。
【高畑】う~ん、やっぱりいいんだよね。というのと、これはよく使うので、会社にも家の引き出しにも入れてあって。自分が「アクセスノートブック」を使うじゃない。最初の目次のところを目盛りとして使っているから、そこを塗りつぶしたりとかするので。
【きだて】チェックしたところをね。
【高畑】そうやって、きれいに使いたいというときに、全然使いやすいので。あと、クレジットカードサイズなので、カードホルダーに必ず入るんだよ。厚みもほとんどないので。手帳と合わせて使いたい機能としては、これが一番買ってよかったというものなので。
【他故】いいっすな。
【高畑】ステンレスのかっこいいやつもあるんだけど、よく見れば大体使わないという。
【他故】四角いところしか使わないから。
【高畑】かっこよく、「Rいくつ」とか書いてあるけど、まあ使わない。
【他故】そもそも、こんなところだんだん見えなくなってきちゃうからね。こんな大きさで書かれても。
もしもの時に! フィルム型の薬を手帳に常備
コルゲンコーワ鼻炎用フィルム
【高畑】あともう1個が、これが手帳道具かといったらどうかという話なんだけど、手帳で絶対大事なのがこれ。「コルゲンコーワ鼻炎用フィルム」。これね、薬がフィルムになったのって、すごいと思うんですよ。
【他故】はい、はい。
【きだて】分かるよ。
【高畑】これはね、手帳にはめられるからすごいんだよね、と思ってて。人前で話をしなくちゃいけない仕事とかするじゃないですか。そういう時に、直前で鼻がズビズビになるときがあるんですよ(笑)。
【きだて】鼻炎持ちはつらいなぁ。
【高畑】つらいよ。タイミングが悪いとさ、現場に向かう途中でやられることがあるんだよ。
(一同)あ~。
【きだて】3枚で、カードサイズじゃないんだ。ちょいでかいんだ。
【他故】さすがに、そこまでは考えてないだろう(笑)。
――「手帳に入れる用」とかではないですよね。
【高畑】この鼻炎用フィルムと、あと「トメダイン」っていう下痢止めとか、緊急時になんとかしたいという薬がフィルムになっているのは、すごいありがたくて、これは手放せない。年中、手帳のポケットに入れてて、うっかり季節を忘れて花粉にやられたり、あとハウスダストとかにやられることもあるから。
【他故】分かる。
【高畑】結構、これが命綱だったりすることがある。まあ、鼻炎持ちは大変なんですよ。
――これは、即効性があるんですか?
【高畑】ある。5分、10分で効いてくる。しばらくの間は効いているので、講演の間は鼻をすすらなくて済むという。
――これをペラッと開くと…。
【高畑】中にシート状の薬があって。
――それをペロッてなめて…。
【高畑】ペロッてなめて、舌の上で溶かして飲むんですけど、割と即効性があるので。
――はは~、いいですね。
【高畑】希望としては、これの他に頭痛薬とかね。
【きだて】痛み止めのフィルムは欲しいね。
【高畑】痛み止めがフィルムになったら最高だと思うんだけど。
【他故】そうだね、それはまだ錠剤しかないよな。
【高畑】「バファリン」とかがフィルムになったら超いいんだけどな、といつも思うんだけど。
――このフィルムの薬、知らない人多いと思いますよ。
【高畑】これはね、もっとフィルム状のものを開発してほしい。
【きだて】ピルケースって本当に邪魔なの。
【高畑】邪魔なんだよ。
【きだて】邪魔だし、カバンの中で「あれっ、どこへ行った?」ってなるんだよ。
【高畑】分かる。
【きだて】だから、こういうフィルムになってて手帳にはさめるというのは、すげーいいと思うんだよ。
【他故】薬の定位置として最高だものね、手帳って。
【高畑】目薬みたいなのは、忘れても「まあ、しゃーない」ってなったりするんだけど、もう「今欲しい」というものはね。
【きだて】エマージェンシー性の高いものはいいし。
【高畑】もうね、錠剤をつぶしてもっと薄くするでもいいぐらいなんだよ、俺の気持ち的には。
【きだて】分かる、分かるよ。
――それなら、顆粒の薬でもいけるんじゃないですか。
【きだて】でも、それだと水がないとダメじゃないですか。
――ああ、そうか。
【高畑】これは、なめて飲めるというのがいいんですよ。極論だけど、顆粒タイプの頭痛薬があってもいいと思うけどね。風邪薬はあるのに。薄っぺらい袋に入っていて。
――自分で錠剤すりつぶしてやるしかないですよ。
【高畑】あっ!
【他故】それ、大丈夫なのか?
【きだて】密閉するものがないからね。
【高畑】安全性の問題もあるか。まあでも、そんな感じですよ。そのぐらい、毎日持っていなくてはいけないので、痛み止めなんかもフィルムになってくれれば嬉しいけど。
――下痢止めの「トメダイン」もシート状なんですか?
【高畑】シート状なんですよ。それも、通勤中にストレスでお腹下す人がいるらしくて。そういう人は、おサイフとか手帳に挟んでおいて、サッと取り出して。
【他故】そうね。定期入れとかにも入れておけるね。
【きだて】水無しで飲めるというのが、それが一番大きいね。
――これは緊急性が高いからこうしたんですかね。
【他故】そうでしょうね。
【高畑】成分によっては、作れないものもあるみたいだけど。フィルム状にできない成分のものもあるでしょうし。鼻水が出るきっかけって、自分でも分からないんだよ。家を出るときは平気だったのに、突然崩れていくというか。
【他故】あ~、はいはい。
【高畑】それは、歩いている途中で、どこかの前を通ったらやられるみたいな。そうなった時に、一々準備してないから。
【きだて】そうだよな。
【高畑】いつも警戒していて、カバンの中にピルケースの袋を入れている人はいいんだけど、でもそうじゃなかったりするじゃん。そういう時が多いので、でも、手帳だけは毎日持っているので。
【きだて】バイアグラなんかもフィルムになればいいのにね。コンドームと一緒に持ち歩けるみたいな。
【他故】いざという時に。
【高畑】そういういざという時は「予見しろ」。
【きだて】分かんないじゃないか(笑)。
【高畑】恋は突然に?
――バイアグラを使うような人が突然の恋ってしますか?
【他故】「頼むぞ、バイアグラ」って(笑)。
【高畑】話を戻すと、これ季節性があるじゃん。ついうっかり、忘れている頃にやられるんだよ。体調がいいときは平気なんだけど、ちょっと疲れているときに、バァッと出るときがあるんだよ。こういうアレルギー薬もそうだし、他のものでもこういうパッケージにしてくれると嬉しい。
【きだて】普段飲まなきゃいけないい血圧の薬とか糖尿の薬なんかでも、こっちの方が持ち運びに便利だしさ。ありがたいんだよ。
【他故】そう、うちに置いといて定時に飲む薬だったらいいんだけど、出かけることが多いんだったら当然そうだよね。
【きだて】薬を持ち歩くのって、それだけで無駄にストレスなんだよね。
【高畑】それがフィルム状になってたら、手帳に入れて持ち運べるから。
【きだて】サイフの中にでも入れておけるじゃん。
【高畑】それはすごくいいよね。これ、自分もそうだけど、他人を救うこともあるんだよ。「鼻炎でひどくって」という人に、ピって出してあげることができるから。
【きだて】昔は、手帳のポケットにバンドエイドを入れている人が結構いたじゃん。
【他故】俺も入れてるよ。
【きだて】入れてるよね。
【他故】わざわざ、バンドエイド入れるところを作ったりしたもの。必ず入れてるよ。
【きだて】それよりさらに一歩進んだメディカルなものが入っているのって、結構面白いよね。
【高畑】そうだよね。でも、これから増えるんじゃない。
【きだて】増えてほしいね。
【他故】顆粒状の胃薬とかは手帳に入れていたけど、あれはあれでかさばるんだよね。思ったよりも厚みがあって、中でガサガサするものだから。
【高畑】手帳のあり方として、もちろん情報もそうなんだけど、そういうものを常に入れておくものとして考えるのはアリだよね。
一世を風靡したカードサイズ文具
カード文具いろいろ(右上から時計回りに、「カード・コーナー」「カルボ・スコープ」「トランパル」「スタッカード」「カードメカ」「パズカ」)、それぞれ展開するとこんな感じに(右)。
【高畑】極力薄ければ、「持っていると助かる場合があるじゃないですか」と思ったら、目の前に何かごちゃごちゃあるんですけど(笑)。
【きだて】そう。薬を持ち歩きたいとか、手帳にはさんで持ち歩きたいというのがあるわけじゃん。
【高畑】分かるよ。
【きだて】というわけで、カード文具を取り上げるんですが。色々と出してみましたけど。これなんか好きなんだけど。バンダイが出した「トランパル」。
【高畑】これなー。
【きだて】カードがガチャッと変形してハサミになるという。
【高畑】しかも、非対称な収納がかっこいいよね。
【きだて】そして、ハンドルの内側に一枚切りカッターが潜んでる。
【他故】素晴らしい。
【きだて】この芸の細かさがいいのよ。
【他故】ちゃんと隠し武器があるんだよ。
【きだて】どういうシチュエーションで使えばいいのか見当も付かないけど。
【他故】わはは。
【きだて】なんで我々人類はカード型ツールに惹かれてしまうのかね。クレジットカードのサイズが遺伝子的になにか刷り込まれてんのかというぐらい。
【高畑】このクレジットカードサイズって絶妙だよね。テンプレートもそうだけど、やっぱりいいよね。
【他故】そう、そう。
【きだて】これがルーペになったり。
【高畑】望遠鏡じゃなかった?
【きだて】あれっ、そうだっけ?
【他故】「カルボ・スコープ」だね。どっちなの?
【高畑】「簡単操作で望遠鏡になります」だよ。
【きだて】そうか、組み立てると望遠鏡で、カード状態のままだとルーペだ。
【高畑】ルーペにもなるんだね。で、向こうをちょっと見なきゃいけないときは望遠鏡に。
【他故】「向こうを見なきゃいけないとき」って(笑)。
【きだて】カード文具って、80年代後半から90年代前半のデザイン文具ブームあたりですごい色々と出たわけじゃない。今はあんまり出てないんだけど、当時は面白いものがいっぱい出てたなと思って今回取り上げてみたけど。
【高畑】たたむギミックもかなかなすごいしね。
【きだて】カール事務器、バンダイ、ゼブラ、学研…。
【高畑】サンスター文具もやってたしね。
【きだて】サンスター文具もやってたんだ。
【高畑】「MILLI シリーズ」だよ。
【きだて】あ~、はいはい。
【高畑】ノギスとか入っているやつがあるんだよ。
【きだて】このトンボ鉛筆の「パズカ」がすごい好きでさ。
【高畑】あ~、分かる。
【きだて】ボールペン黒・赤とシャープのセットがカードに合体するというんだけど、このシャープユニットがオーパーツ的にすごいんだよね。これのデザインをした人に、中の機構が見えるものをもらったんだけど、この平べったい中にね…。
【高畑】平べったい軸を入れるんだ。
【きだて】このノックギミックがね。芯ストッカーとノックバネが一列に入らないから、横に並んでるんだよ。
【高畑】ほ~、なるほどね。このノックのバネを、普通は外側に入れるんだけど、それが入れられないから横に持ってきましたよという。これ、いいね。面白いね。
【きだて】このスケルトンモデルで中を見るまでは面白さに気付いてなかったんだけどさ。ただ単に、薄い中に入れただけでしょと思ってたから。
【高畑】しかもこれ、左右にバネが2本入ってるね。
【きだて】あ~、そうだね。それでバランスを取ってるね。
【高畑】これ、めっちゃいいな。
【きだて】このカード型にするために、意外と技術を使っているという面白さもある。
【高畑】一時期流行った知育パズルみたいに、最終的には長方形になるけど、すごい変な分割をするじゃない。曲面で分割しましたみたいな。こんな曲面で分割する必要ないじゃん。
【きだて】それが、あの当時のデザインの文脈の面白さなんだよね。
【他故】確かに。
【きだて】カード文具のメリットとして、印刷面積が大きいというのがあって、ノベルティで大量にばらまかれたのね。
【他故】そうだね。
【きだて】いつもお世話になっているニフティなんかもパズカでノベルティ出してたんだけどさ。
――なるほど。
【きだて】で、このサイズで文具いっぱい持ち歩けるという安心感。
【高畑】昔、システム手帳が流行ったときに、これが3段で入るんだよね。
【きだて】そうそう、カードがね。個人的に好きなのが、この「スタッカード」ね。カードサイズというにはあまりりにも分厚いんだけど。
【高畑】これ、パンチの方だね。
【きだて】ステープラーの方を持ってこようと思って間違えた。
【高畑】ステープラーもあるよね。
【他故】あるね。
【きだて】これで1穴パンチになるというシンプルな構造なんだけど。パンチをカードサイズにしようという発想がそもそもないよね。
【他故】すごいよね。
【きだて】ステープラーの方が、マガジンがかっこいいんだよね。
【高畑】横マガジンが入ってるんだよね。
【きだて】本当に、機関銃のようにガシャンと。
【高畑】パンチの方は、ちょっと径が小っちゃいんだよね。カードサイズにしたかったがために。穴が小さいんだよね。システム手帳ぐらいの大きさの穴があくんだけど。
【他故】大分小さいよね。
【高畑】まあ、でもいいよね。
【きだて】切れ味自体は悪くないんだよ。
【高畑】よくやるよね、こういうの。同じ断面の中に、いろんな機能を持たせてるというのは。だから、世の中の全てのものをこうやって持ち歩くことができますよ、ということだよね。
【きだて】カードになってないものはないんじゃないかというぐらい、ほぼすべてのツールがカードサイズになっているわけですよ。だから、カード型ツールコレクターの人のを見ると圧倒されるね。
【他故】「こんなのもあるんですか」というものまで取ってあるからね。
【きだて】ということで、こういうのがありましたということで。まあ、普段は使ってないんですよ。手帳使ってないから(笑)。
――何とまあ(笑)。
【きだて】まあ、今日は見せびらかしのために持ってきましたけど(笑)。こういうのもあるよねということで。
チラッと見えるインデックス
チラットINDEX(デザインフィル)
【きだて】次からガチで使おうと思っているのが、前編で話したリヒトの「卓上カレンダーにもなるダイアリー」なんだけど、これにはインデックスが付いていないので。
【他故】それで「チラットINDEX」なんだね。
【きだて】カレンダーなら1ヶ月同じ場所を開きっぱなしだけど、手帳兼用だからやっぱり表紙を閉じて持ち歩くよね。でもカレンダーに戻すときは可能な限り素早く今月のページに戻りたいわけでさ。そのときにいちいちページをペラペラと繰るの面倒だからインデックスはいるなーと思ったのね。ただ、リヒトのは構造上カバーもつけられないから、あんまり大きくツラからはみ出すようなインデックスは貼りたくない、と。その中で、ちょうど12カ月表記が使えて、可能なかぎりはみ出さないのが「チラットINDEX」ということで。これは、ガンガン使っていこうかなと。
――それ、私も使いたいですよ。
【高畑】やっぱり、インデックスはあった方がいいよね。
【きだて】うん、欲しくなるんだよ。
――それ、フィルムでしたっけ?
【きだて】そうです、フィルム。
――フィルムだとヘタらないからいいですよね。
【高畑】すごく出てるとクシャクシャってなるけど。これ実際に貼ってみたけど、ツラからちょっと出てても、他のみたいな痛み方はしないよ。
【きだて】フィルム自体コシがあるので、曲がっても復帰するし。
【高畑】そのくらい短くて、二つ折りにすると、結構強度が出るので、曲がってクシャクシャしないんだよ。これは割といいよ。
【きだて】ただね、ふせんと同じで再はく離するので、衝撃が加わると、ペロッといくことが。
【他故】ああ、はがれちゃうんだ。
【きだて】どっちかがちょっとはがれてきちゃうんだけど、それでもグッと押し返せばまた付くので。まあ、大丈夫だろうという判断で。
【他故】まあね。
【きだて】だから、来年はこの組み合わせで行こうかなと思っております。
【他故】なるほど。
【高畑】いいんじゃないですか。「チラットINDEX」は、インデックスが付いていない手帳ならば、ほぼほぼどれも使えるからね。
【きだて】手帳用インデックスって、ほんとはあれこれ書き込む必要がないじゃん。自分がいつも使っている手帳だから、大体の場所は分かってるわけでさ。このページから開くんだな、という手がかりがあればいい。
【高畑】分類だと違うのもあるんだよね。
【きだて】数字バージョン以外には、マークだけ、というのもある。
【高畑】だから、「ここからがメモ欄だよ」というのを分かるようにするために、これもアリなんだけど。
【きだて】どっち使ってもいいんだけどねという話で。
【他故】いいじゃないですか。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。
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