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【コレ注目!】紙への愛が止まらない!印刷所発の文具雑貨「Kaminokoya」

文具のとびら編集部

名古屋の印刷会社が手掛ける、紙雑貨ブランド「Kaminokoya(かみのこや)」。味のあるクラフト紙から作られたポーチやカラフルでやさしい雰囲気のレターなど、どこかワクワクとした気持ちにさせてくれるものを生み出しています。そんなKaminokoyaのアイテムは、きっと文具好きさんの心を鷲づかみにするでしょう。

実はKaminokoyaの製品たちは、印刷の過程で出てしまう端材など本来なら捨てられてしまう紙から作られたもの。印刷所の紙を包んでいた紙「ワンプ」を使ったカバンやポーチ、印刷の過程で裁断されてしまった小さな紙を詰め合わせたセットなど、役目をいったんは終えた紙が、Kaminokoya代表の大野さんによって新たに息を吹き込まれ、やさしい雑貨へと生まれ変わっています。

そんなKaminokoyaの魅力をより深く知るべく、東京・神田神保町の画材店「文房堂」で行われているポップアップを訪問。文房堂 店長の下端さんと、Kaminokoya代表の大野さんにお話しを伺ってきました。

店長の一目ぼれから始まったPOP UP!

普段はネットショップやイベントなどでしか購入できないKaminokoyaですが、実際に手に取って購入できるPOPUPショップが2023年10月31日まで、文房堂で展開されています。文房堂の店長・下端さんが訪れた展示会でKaminokoyaに出会い「一目ぼれ」したことから企画が始まったそう。

文房堂 下端さん:「神保町に来るお客様は紙好きの方が多くて、クラフト紙も人気。うちのお店にマッチしていると思い、声をかけさせていただきました」

そんな「紙好きの街」で特に売れているのがこの「紙束の詰め合わせ」。さまざまな種類の、いろんな色、たくさんの形の紙が、詰め合わせになっています。


詰め合わせ_ヨリ.jpg1セットに約1㎏の紙がはいっている

文房堂 下端さん:「展示会でこれを見て『あっこれ絶対売れる!』と思いました。うちに来るお客さん、紙大好きな方が多いんですよ。『何に使うのかな、でも欲しい』って思えるような、ワクワクするような感じをお届けしたいなと」

そしてもう一つ、書店が多く立ち並び"本の街"と言われる神田神保町で、"紙"でできたブックカバーにも注目。
今回店頭に並んでいるのは、Kaminokoyaが名古屋のアンティークショップ「Glitter」とコラボし、レトロなタグを貼った1点モノの数々。紙の異なる2種類をそろえています。

ブックカバー.jpg

文房堂 下端さん:「この街は本を大事にしたいという方が多く、ブックカバーもよく売れます。それにこの街はレトロな街並みもあるので、こうしたレトロなデザインは若い方にもご年配の方にも手に取っていただけます」

Kaminokoya 大野さん:「素敵な本の街なので、このブックカバーで大切な1冊を使っていただけるとうれしいですね。ちなみに私はマニアックな本を持ち歩くので、このブックカバーのおかげで外でも安心して読書を楽しめています(笑)」

印刷所で出る端材を詰め合わせて

先ほど店長の下端さんが紹介してくれた「紙束の詰め合わせ」。こちらはKaminokoyaがスタートした2021年に、代表・大野さんの想いから作ったのだそう。実はこの紙たちは元々、印刷所で出た端材だったもの。印刷物を指定のサイズにカットする際、どうしても出てしまう”端っこ”なのです。

日々多くの印刷の注文を受ける中で生まれる、いろんな色や形の紙。それらを、大野さんをはじめとするKaminokoyaのスタッフが、同じ形に切りそろえ、組み合わせて、ひとつのセットに仕上げているそうです。よく見ると、一つひとつのパックの中身も、少しずつ異なっています。

詰め合わせ_世おk.jpg紙の色によって帯の色も変えているそう

Kaminokoya 大野さん:「前に同業者の人に『これって廃材でしょ?』って言われたことがあって。でも、私たちは全然そうは思ってなくて。実は断裁って結構手間なんですけど、いろんな紙を同じサイズに断裁して、色を選んで、帯をかけています。私の中では、この紙たちにおめかしするような気持ちを込めて作っています。大きい紙からどんどん切っていくので、大きく残ることもあれば、本当に細長くなるものもあって、それを私が、このくらい(なら使いやすい)かなと、切っていって」

文房堂 下端さん:「パックによって中身が全然違いますね」

Kaminokoya 大野さん:「そうなんです。詰めるスタッフによっても違いますし、季節によって印刷の注文を受ける紙の色が違うので、夏だとブルー系、冬だと茶色系が多くなってきます。印刷会社なので、製本に適した紙を使うことも多いです。逆に言うと、黒インクが乗らないので濃い色の紙よりもやさしい色の方が多いですね。

詰める作業の時にもこだわっていて、スタッフに(このパックを)開けた人の気持ちになって詰めてほしい、と伝えていて。スタッフ同士でも「この横にこれはどう」とか話すこともあって、そういう意味ではうちのスタッフも楽しめているし、笑顔が生まれるのがうれしいですね」

文具のとびら 編集:「何に使われた紙なんだろうと想像が膨らみますね」

Kaminokoya 大野さん:「(印刷の注文で)ゴールドの名刺の方とかもいますし、薄い紙は本を印刷するときの合紙(あいがみ)だったり、目次だけ色をかえた紙だったり。注文を受けた分だけ紙を取り寄せて、必要な箇所をカットした後の残り、です」

文房堂 下端さん:「次はだれのところに行くんだろう」

Kaminokoya 大野さん:「私もすごくそれ思います!」

「ワンプ」を使った雑貨

「ワンプ」と呼ばれるクラフト紙を使った雑貨も展開しています。「ワンプ」とは、紙メーカーや印刷所で紙を包んでいる紙で、雨や湿気などから紙を守る役割があるそう。

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Kaminokoya 大野さん:「紙って湿気が本当に天敵で、印刷の機械が壊れるくらい紙がぐちゃぐちゃになってしまうんです。(湿気から紙を守っているワンプは)クラフト紙の中でも、裏面に防水加工がしてあって珍しいもの。ただ印刷所ですぐに溜まってたくさん廃棄されちゃうので…。中の紙を出したら役目が終わってしまう、でもまだ使えると思って、それを一枚一枚伸ばして、断裁して、縫って…」

そう話す大野さんにとって、数あるアイテムの中でも特に愛着があるのがこのカバン。

カバン.jpg

Kaminokoya 大野さん:「試作を何回も何回も繰り返して。持ち手の部分や頑丈さとかを調整しました。ミシンで縫っているので、完全防水ではないんですけど、ある程度は雨に濡れても大丈夫ですし。使っていくと柔らかくなっていって、汚れたりもしますが、それも愛着のある味になっていきます。布や革とかと違った、紙にしか出せないおしゃれ感もあるかな、って」

時代には逆らえないけど…から生まれた「キリトリレター」

かつては「印刷の仕事なんて汚れる…」とネガティブなイメージを持っていたという大野さん。家業である印刷の仕事に勤しむようになってからは自身でも印刷機を動かし、その奥深さにハマってしまったと言います。大野さんが魅了された、紙やインクといった印刷時のこだわりも、商品に詰まっていました。


Kaminokoya 大野さん:「うちの印刷所はオフセット印刷と、オンデマンド機も入れているんですが、オンデマンドだとインクがテカってしまったり、オフセットにはかなわないと思っているんです。でも時代の流れでオンデマンドは主流になりつつあって、オフセットの良さがなくなっていってしまうと思っていて。
時代だから逆らえないけど、オンデマンドでオフセットみたいな”味”を出して刷りたいと思って作ったのが、『キリトリレター』です」

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≪大野さん解説:オフセット/オンデマンド刷り方の違い≫
オフセット印刷:インキが紙に染み込むため、インキと水・印圧を調整して好みの印刷に仕上げます。かすれた印刷がしたい時には、圧を弱めて、インキを巻き取り濃度を調整します。
オンデマンド印刷:紙の表面にインキ(トナー)が乗っているイメージになります。色はデジタルデータで、4色のインク(CMYK)で配合を調整します。
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反オンデマンド.jpg
すべて同じ色配合で印刷。白い紙には青く、黄色の紙には緑がかった色に。
紙の色が生きるように計算してインクの濃さを変えている



Kaminokoya 大野さん:「『キリトリレター』はオンデマンド印刷なんですけど、オフセット印刷のように紙の色を生かした印刷ができたら楽しいなと、色の配合を何度もスタッフに調整してもらいました。
この4色の封筒は同じ配合で印刷していますが、封筒の色が生きてデザインの色がそれぞれ違って見えます。そこも見てもらえるとうれしいです。」

文具のとびら 編集:「すごいこだわりですね」
Kaminokoya 大野さん:「でも会社では(スタッフから)『またおかしいこと言ってる』って言われています(笑)」

文房堂 下端さん:「そうなりますって、必然的に(笑)」
Kaminokoya 大野さん:「でも本当に、面白いなと思っていて。同じ色で刷っているのに、封筒の色によってこんなに色が違うって」

今の時代に、紙への愛を

2021年、大野さんはたったひとりでKaminokoyaを始めて、いまでは複数のスタッフとともに50点ほどの製品を作っているそう。
印刷業の家庭に生まれ、紙で遊んで育った大野さんは、紙への愛もいっぱいです。記事の最後に、大野さんの"紙愛"あふれる言葉をお届けします。


Kaminokoya 大野さん:「印刷屋では、まだまだ使える紙の端っこが捨てられていて。『もったいないな。この紙たちが活躍できる場所ってないのかな』と思いながらも何もできませんでした。今は時代が変わってSNSなどでも情報発信ができるようになったので、この紙たちを生かしてもらえることで、地球にもやさしくなる。

デジタルな時代だからこそ、紙の魅力や紙だからこそできる事(がある)。本や手帳もそうですし、誰かを想って書く手書きの手紙は、書く人も受け取った人もワクワクしますよね。紙の良さがデジタルと共存していけたらいいかなって。微力ではありますが、これからも紙の魅力を伝えていける活動をしていきたいと思っています」


■関連情報■
Kaminokoya POP UP(文房堂)
期間:2023年10月1日~31日
場所:文房堂2階
   東京都千代田区神田神保町1-21-1

Kaminokoya:https://mkaminokoya.official.ec/

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