1. 文房具ラボ
  2. 【舘神龍彦の手帳講座・2019春】手帳の根本と活用の基本 Vol.1

【舘神龍彦の手帳講座・2019春】手帳の根本と活用の基本 Vol.1

舘神龍彦

新年度がスタートする4月は、手帳デビューする人が多い時期。社会人としての第一歩を踏み出すフレッシュマンはもちろん、「今まで手帳をちゃんと使ってなかった」という人も手帳を使い始めることが少なくないようです。そこで、“手帳王子”こと手帳評論家の舘神龍彦さんに、手帳を使うための基本なことを全3回で解説してもらいます。

第1回目となる今回は、「手帳を使う目的」について教えてもらいました。

手帳は時間を有効活用するツール

今回から3回にわたって表題のことを解説していく。

よく、「手帳が続かない」「1月は頑張るけれど、4月頃には白くなってやがて使わなくなってしまう」という話を聞くことがある。

これは、手帳が予定を記入するツールだと考えているが故に起こることである。


手帳は、時間を有効活用するためのツールである。そのために、まず予定を記入する。

そして予定に関連する情報や、他の予定を記入する。

さらに、予定と予定との間の時間について検討し、その使い方も逐一記入していく。

これが手帳のオーソドックスな使い方である。

だから、予定を書くのは当然のこととして、その後に以下のことを書くことだ。

すなわち、予定にまつわる各種の事柄だ。たとえばその予定の場所への移動の経路や所要時間を書いておく。もっとも最近はスマートフォンのアプリなどで検索結果をクラウド上のカレンダーに連携させられる。だから移動予定として目的地と時間を端的に書いておくのがいいだろう。スマートフォンとの併用については次回に触れる。

また、予定に関連すること、たとえば仕事の内容やポイント、段取りなども書いておく。もし手帳のメモの記入面には書き切れない場合は、手帳と同サイズの別冊のメモやノートを用意しておき、そこに書いておく。

なお、起床や出社、退出や就寝といった毎日の習慣なども、できるだけ予定として書いておきたい。見開き一週間の予定記入欄で毎日これを書くのが面倒だという場合は、月曜日のみ書き、他の曜日には延長の線を引いてわかるようにしておくのでもいい。

あるいは他者とのアポイントであれば、候補となる日時複数を手帳の上であらかじめおさえてしまい、どちらになっても対応できるようにしておくことだ。

いつ書くのか

さてでは、予定を手帳にいつ記入するか。

これは、予定が決まったらすぐが望ましい。あるいはあらかじめ決まっている予定については、できるだけ早めに書いてしまうことだ。少なくとも、翌週の予定は前の週の金曜日の朝ぐらいまでには、すべて書いてしまいたい。こうすると、調整が必要な事柄が見えてきて、同じ時間内でできることが結果として増えるからだ。

前述のように、手帳は時間の有効活用のためのツールである。だから、予定がわかり次第、早めに記入すると、残りの使える時間が見えるようになる。そのために、なるべく早く記入するのだ。

逆に言えば、調整すべき予定があるのならば、なるべく早めに決めてしまった方がいい。そのことで、使える時間がわかるからだ。

これは、銀行の通帳に例えるとわかりやすいだろうか。銀行の預金残高を知るためには残高照会をする。その前には、その時点での当面の税金や公共料金、生活費の支払いが終わっていることが望ましい。それらを支払い終わっていて初めて、自由にできる金額がわかるわけだ。

手帳もこれと同じだ。やるべき仕事や約束事、また移動時間など、時間が必要な各種の事柄・予定を、手帳の時間軸に沿って記入することで、残りの時間がはっきりわかる。

もしわかっている予定を書かないままでいると、残り時間もわからず、準備もできない。また、次から次へと押し寄せてくる予定に場当たり的に対応することしかできなくなる。

かくいう筆者も、手帳を自覚的に使うようになるまではそうだった気がする。

だが、手帳を、時間の有効活用のツールとして意識してから、幾分はましになったし、なにより楽になった。

手帳術の目的とは

そして世の中にあまたある手帳術の目的とは、ほかならぬ、この時間の有効活用のための各種工夫なのだと言える。

たとえば、美容院や散髪などの、毎月の予定は最初に予定日を押さえてしまう。

あるいは読みたい本やDVDなどのリストを作っておく。

さらにはやりたいことの100のリストを用意しておき、ちょくちょく参照する。

より長期の計画やそのポイントを明確化しておき、これも参照しつつ、具体的な予定に落とし込んでいく。

これらはみな、仕事や生活の時間を使った上でまだ残っている自由な時間を有効活用するための工夫なのだと言える。

もっとも、手帳を使い始めたばかりで、そこまで手が回らない、いきなりできないという人もいるだろう。そういう人は、まず最初に書いた事柄を励行して欲しい。すなわち、まず予定を書き、関連する情報を書き、空いた時間にやることを書くことだ。

手帳を利用するのは目的ではない。手帳を利用する目的が時間の有効活用なのである。 だから“手帳が続いている”という人は、手帳を書くことが目的ではなく、時間の有効活用を目的として使い続けているのに過ぎない。

まず時間を有効に活用することを頭に置いて、手帳に予定を記入しよう。

そして、あらかじめ準備すべきことを記入し、実行していく。

これをするだけでも、手帳=時間の使い方は変わっていく。

いろいろな工夫はそのあとでも充分間に合う。なにより、使って便利であることを実感することで手帳は便利な道具だと認識される。それが結果として“手帳が続く”ことにもなる。

手帳開けば運も開けるよ。是非やってみて欲しい。


【次回予告】手帳とスマートフォンの違いと使い分け

プロフィール

舘神龍彦(たてがみたつひこ)
アスキー勤務を経てフリーの編集者/ライター。デジタルとアナログの双方の観点から知的生産について考え、著作を発表。主な著書はiPhone手帳術ふせんの技100』『手帳の選び方・使い方 』(いずれもエイムック)、『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)、『システム手帳新入門!』(岩波書店)、『手帳進化論』(PHP研究所)、『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(枻出版社)、『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)、『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)、『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『最新トレンドから導く 手帳テクニック100』(枻出版社)、『iPhoneの凄い設定』(出版社)。最新刊の『手帳と日本人』がNHK新書から好評発売中。

また、「Yahoo!クリエイターズ」で、文具・手帳・ガジェットの紹介や活用法について動画で配信中。
https://creators.yahoo.co.jp/tategamitatsuhiko


舘神本1.jpg

『手帳と日本人』をAmazonでチェック

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう