1. 連載企画
  2. 車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち
  3. 【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #3「軽い力で使えるノック式油性ペン」

【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #3「軽い力で使えるノック式油性ペン」

波子

[毎月25日更新]

「引く」という動作は、思った以上に力が要ります。
例えばファミレスのドアを開けるとき、杖をついて歩いていた頃の私は、引くより押す方が楽でした。押すときはドアに手をかけ、そのまま手を突き出すようにしつつ進めば開けられますが、引いて開ける場合は立ち止まり、時には両手でドアを引きながら足を踏ん張り、全身の筋力を総動員してドアを引っ張っていました。

そこまで大仰な動作ではありませんが、文具を使うシーンでも、引っ張る動作を必要とすることがあります。
そのひとつが、ペンのキャップを開けるとき。
中でも特に「太い油性ペン」は、キャップを開けるのに苦労するんです。

ぺんてるの「ノック式ハンディ Pentel PEN」と「ノック式ハンディラインS」


キャップ式の太い油性ペンが開けにくい理由は、キャップが固くて「引っ張る」のにそれなりの筋力が必要だからです。

キャップを握る握力はもちろん、それを引っ張るためにはペン本体もしっかりと持つ必要があります。引っ張るときには両腕の筋力が要りますし、腕を引くのに肩も動かしますね。そうやって固いキャップを開けるときは、体幹の筋力もある程度必要です。

そんなややこしいこと、力が弱くなるまで考えたこともありませんでした。だって、何も考えなくても普通に開けてましたもの。

でも、固いキャップを開ける必要がない、キャップレスの油性ペンがあります。

ぺんてるの「ノック式ハンディ Pentel PEN」は、ノック式の油性ペンです。
キャップがない代わりに「ボールシャッター機構」でペン先の乾燥を防いでいます。半球状のフタが中でくるりと回転する様子は、思わず何度もゆっくりノックしながら眺めてしまいました。

新180520_ノック式油性ペン01.jpg

キャップを引っ張ることに比べたら、ノック部分を押し下げることは(少々力は要りますが)とても楽です。握力15kgの私は、親指や人差し指で簡単に押し下げられました。
もし指で押し下げることが難しい場合は、逆さにして机や壁、自分の太腿などに押し付けてもいいですね。
キャップと本体の両方を手に持つ必要がないので、片手で使えるのもとても嬉しいです。
私が持っているのは中字(丸芯)ですが、太字(平芯)もあります。色は黒のほかに赤と青も。

新180520_ノック式油性ペン03.jpg

太い油性ペンのキャップ開閉時に、ペン先が手に触れて汚れることがありましたが、ノック式ならその心配は無用です。また、キャップをなくすことがないからか、お寺の絵馬を書くテーブルに置かれているのを見たことがあります。

ぺんてるの商品には、ほかにノック式の蛍光ペン「ノック式ハンディラインS」もあります。
細いペンのキャップは開けるのにさほど苦労はしませんが、閉めるときにちょっと手先が震えてペン先で手を汚すことがあるんですね。そんな難儀な私にとっては、蛍光ペンがノック式なのも嬉しい仕様です。

新180520_ノック式蛍光ペン01.jpg

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて「車いすでみるなら」連載中。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」 http://nam-kid.hatenablog.com/

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう