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【連載】他故となおみのブンボーグ大作戦!Bootleg  #27 学校現場で役に立つものを作る「+teacher」の挑戦

ふじいなおみ

30分間、文房具の話題だけをお送りするラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ「なおちゃん」こと、ふじいなおみです。

番組では毎週たくさんの文房具が登場します。その中から、他故さんとなおちゃん2人で選んだ商品をピックアップ。より掘り下げてご紹介していきます。

photo1.jpg「マス目フセン"Kaketa!"」(左)と整えて貼れるマスキングテープ(右)


今回は、6月18日の「オープニング」でご紹介した+teacherの「整えて貼れるマスキングテープ」と日本文具大賞2023デザイン部門優秀賞を受賞(2023年6月末現在)した「マス目フセン"Kaketa!"」をご紹介します。

学校現場で出た「困った」を解決するマスキングテープ

今回番組で取り上げた商品は、+teacherの「整えて貼れるマスキングテープ」でした。
この商品が生まれたきっかけは「マスキングテープでメモや掲示物を貼っていたら、テープが曲がって貼られていたことをすごく指摘された」という1人の小学校の先生からの「困った」話でした。

photo2.jpg斜めに貼る例(上の段)と理想とされる貼り方(下の段)


よく内容を確認してみると、掲示物に対してマスキングテープが少し斜めに貼ってあったことを指摘されたとのこと。気にしない方は気にしない話なのですが、その先生は実際に困っていたのです。

photo3.jpgマスキングテープの模様


そこでマスキングテープに斜め45度の格子状に点線を入れ、掲示物の角をきっちり45度の角度で貼れるようにしました。またこのデザインならば格子の頂点を拾っていくことで垂直・水平で紙を捉えて貼ることができます。

photo4.jpgマスキングテープ使用例


こだわったのはただ格子状の点線が入っているだけではありません。あくまで「掲示物が主役」なのでテープ自体の色が目立ってしまわないように落ち着いてその場に馴染むものを選び、かつ、格子状の点線の色にも同様の配慮をしたことがわかります。

+teacherというプロジェクト

このマスキングテープをはじめ、学校現場の「困った」を解決するプロダクトを開発しているのは、+teacherの立ち上げ人でもある渡利幸治さん。渡利さんは学生時代に「経済格差が子供の学力格差に繋がる現状」に疑問を持ち、学習支援団体を設立。卒業後は大手文具メーカーに就職し、商品開発やマーケティング業務に従事。その後「文具で教育現場を変えていけるのではないか?」と+teacherというプロジェクトを立ち上げました。
現在も教育に必要・便利であるプロダクトの開発を行っています。

+teacherの商品開発は渡利さんが進めます。その中で例えば仕様を検討する際にいくつかのパターンを準備し、+teacherのコミュニティに参加している学校の先生や子どもの保護者に意見を求めたり、Twitterで相談をしながら内容を詰めていくそうです。

困っている人と、ものを作る人の共同作業なのですね。

マス目がついたフセン"Kaketa!"の使い方に気づいた瞬間

+teacherのプロダクトで最初に世の中に出たものが「マス目がついたフセン"Kaketa!"」です。

photo5.jpg漢字練習帳と"Kaketa"


大人の手のひら大に収まるサイズ。上部には少しの余白があり、十字に点線が入ったマスが2行2列に配置されています。よくみるとそのマスの右隣には数ミリほどの縦長な記入欄もあります。このデザイン、どこかでみたことがあるのではないでしょうか? そうです。小学校で使う漢字練習ノートを一部抜粋したかのようなデザインです。

実はわたし、初めてみた時にこのプロダクトの使い方がまったくイメージできませんでした。ですが、あることをきっかけに「あ!!」と気づいたのです。

photo6.jpgペン習字のプリントに実際に貼りました


私は今年4月からペン習字を習い始めました。その教室ではお手本が印刷されている、解説+記入用のマス目のあるテキストを使用して、直接万年筆で書き込んでいきます。現在はまだひらがなを練習中ですが、記入欄が10以上もあるにも関わらず、どの文字にも納得いかないことが多くあるのです。でも、他のノートを用意するのはわずかですが手間がかかります。でも、次回受講日に先生に添削をしていただきたいという気持ちにはなっていて……というときに閃いたのです。「あのフセン書いて貼れば良いのでは?」。

"Kaketa!"も開発のきっかけは小学校の先生の声から

このプロダクトを作ることになったきっかけも小学校の先生からの「困った」でした。「学校で使っている漢字練習帳は余白が少なくて、字のバランスを指導しづらい」という悩みが寄せられていました。

そこから、10〜20名ほどの小学校の先生・小学生の保護者の方々を中心に意見を集めながら作り上げ、2022年にクラウドファンディングサイトで目標額の260%の資金を調達して製品化に成功しました。

なんといっても、このプロダクトのすごいところは「フセン」であること。
何かの上に貼ったとしても、必要になれば剥がして隠れていたところを見ることができる。つまり貼るところに制限がないことです。印刷されたマスの上にある余白もポイントなどをメモするためにとても便利。色は優しいグリーンの紙を使用。白い紙にまぶしさを感じてしまう方々への配慮ももちろんですが、鉛筆やボールペン、先生が使うことの多い黒や赤のカラーペンでも視認性が良くなっています。

Photo7.jpg小学2年生の娘が実際に使ったもの

そしてマス目の数。
現在40代の私が小学生の頃は「とにかくたくさん書いて覚えろ!!」という時代でしたが、どうも今は事情が異なり、量よりも質が重視されているようです。繰り返して字を書くことに難しさを感じるタイプのお子さんもいらっしゃるため、"Kaketa!"では1文字ならば4回だけ、2字の熟語なら2回だけ、と少ない回数で学びをサポートをすることができます。

「待ち望んでいた商品に出会えた」

この商品の話を小学校高学年のお子さんがいらっしゃる知人に話したところ、「便利すぎる!」と10個パックを一気に購入したそうです。中学受験を考えていたり、教育に力を入れていらっしゃりという保護者のパワーをここで思い知らされました。

使用している方の声の中には、「漢字練習ノートを出すのが嫌で復習をしなかったお子さんが、フセンを貼るだけならば、と気軽に書くようになった」とか、開発をした渡利さんも想定していなかった「国語ではなく社会の回答に書く漢字の間違え直しに使用する」といった使い方に出会うこともあったようです。

日本文具大賞2023のデザイン部門・優秀賞に選ばれました

マス目フセン"Kaketa!"は、6月に発表された日本文具大賞2023のデザイン部門・優秀賞に選ばれました。その中から選ばれるグランプリは7月19日、東京ビッグサイトで行われるISOT会場内で発表されます。結果が今から楽しみです。

商品情報

+teacher整えて貼れるマスキングテープ
https://shop.plus-teacher.com/items/73735630

+teacher マス目フセン"Kaketa!"
https://shop.plus-teacher.com/items/66335815

ブンボーグ大作戦!こぼれ話

6月3日に都内某所で開催されたブンボーグ大作戦!初めての公開録音を無事に終えることができました。会場に来ていただきました皆様ありがとうございました。この連載が掲載される頃にはすでに2週分放送が終了していますが、7月16日・23日の放送も引き続き公開録音で収録した内容をお送りいたします。
大盛り上がりとなった「ふじいなおみ文房具10番勝負」のスピンオフ企画「v.s.ふじいなおみ おすすめプレゼン対決!」も残り2回。文具王&きだてさんという文房具界の頂点に君臨する方々へ恐れ知らずな対決を仕掛けた、ふじいなおみのプレゼンに刮目せよ!!

さて、公開録音のお土産の1つだったので読んでくださった方もいらっしゃると思いますが、ブンボーグ大作戦!では毎月最終放送日の番組終了の頃に"ZINE"を発行しています。
番組でご紹介した商品や曲・ゲストのご紹介や、他故さん&なおちゃんがそれぞれ書き下ろししている随筆(エッセー?)を掲載しています。

ブンボーグ大作戦!のホームページにあるZINE(https://daisakusen.net/zine/)のページより、ぜひダウンロードをしてご覧くださいね!

プロフィール

【ふじいなおみ】
1979年北海道札幌市生まれ。ラジオパーソナリティ/文房具プレゼンター
ナナコライブリーエフエムで放送中のラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ及び制作・技術を担当。万年筆インク(中でもご当地インク)コレクター。
他故壁氏さんとユニット「たこなお文具情報室」として、文房具の楽しさを伝える活動を行っている。
2015年生まれの娘とともに知育・学童文具を使用しているため、リアルな声を届けられる数少ない存在である。
そして、きだてたくさんと色物文具をひたすら紹介する動画コンテンツ「イロブンの引き出し開けていこう」もYouTubeにて配信中。

【他故となおみのブンボーグ大作戦!】
埼玉県朝霞市のコミュニティFM「ナナコライブリーエフエム」にて放送中の30分間文房具の話題だけをお送りするラジオ番組。
パーソナリティーは他故壁氏&ふじいなおみ。
放送時間は毎週日曜日19:30~20:00/毎週水曜日 11:30~12:00(再放送)
FMラジオ77.5MHz(埼玉県朝霞市・志木市・新座市・和光市とその周辺地域)の他、パソコンやスマートフォンではListenRadioのサービスを利用すると気軽に聴くことができます。

詳しい聴き方は番組Webページへ
https://daisakusen.net/howto/

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