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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.18前編

ちょっと気になる最新多色ペンをチェック!

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左からきだてさん、高畑編集長、他故さん

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.18前編では、多色ペン最新アイテムを取り上げました。

細かな工夫も見逃せない! 消しゴムで消せるカラー芯入り3色シャープ

ユニカラー3-1.jpgユニカラー3」(三菱鉛筆) 消しゴムできれいに消すことができる「ユニ ナノダイヤ カラー」芯(全7色)を内蔵し、カラー芯も折れにくい新開発の多色用シャープリフィルを搭載した、3色カラーシャープ。初期搭載芯は、「ユニ ナノダイヤ カラー」 の中でも勉強に最適なレッド、ブルー、オレンジの3色。リフィルはレッド、ブルー、オレンジの色がついており、半透明の先軸から見えるので、初期搭載の3色が分かりやすくなっている(外観が白色のリフィルに差し替え可能)。もちろん初期搭載の3色以外のカラーシャープ替芯も使える。税抜500円。

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――今回は、夏休みの思い出を語っていただきますが、まずはこの夏に編集部でゲットした文具をご紹介ということで、多色ペンを取り上げます。

【きだて】こっちの3色カラーシャープからですかね。

【他故】「ユニカラー3」ですね。

【高畑】シャープペンばっかり3色ということでね。昔、ぺんてるが「ファンクション357」っていうシャープペンばっかり3つ入ってるやつを出してたけど、あれは0.3、0.5、0.7㎜っていう太さ違いだったんだけど、今回は色違いで。

【他故】そうだね。

【高畑】「そこか」っていう。この前にカラー芯を刷新して出してきたからね。

【きだて】で、次はそのカラー芯入れる用のスリムなシャープペンが出て。

【高畑】そして、今回新たに3色シャープペンを出したという。

【他故】赤と青とオレンジを入れてるんだよね。

【高畑】これは学生向けだよね。

【他故】学生向けだね。

【高畑】暗記対応だよね、これ。

【他故】オレンジは赤シートで消えるからね。

【高畑】大人的に、そこオレンジかって思うけど。他の色でもいいからね。もちろん、替え芯の色のバリエーションがあるから、替えればいいけど。あれ何色あるんだっけ?

【きだて】「ナノダイヤ カラー芯」は7色。

【他故】しかも、リフィルユニットとして、白を別売しているから。色を替えてもいいよっていう。

【高畑】ああ、そうね。

【きだて】普通に考えて3色だと赤・青・黒にしたくなるんだけど、そこで黒じゃなくオレンジが入ってるのは、本当に学生仕様なんだなって思う。

【他故】黒は別にあるからね。

【きだて】黒は持ってるんだものね。

【高畑】黒のシャープペンはガツガツ書くやつだから、やっぱり自分のお気に入りがあるじゃない。グリップにこだわりがあったり、折れないやつだったり色々とあるわけで。

【他故】三菱鉛筆なんだから、そこはやっぱり「クルトガ」だろう(笑)。

――「芯が回ってトガるやつ」って言わないと(笑)。

【高畑】そこのところは、そっちを使ってくれよということで。元々これは、色からして「サブですよ」というカラーペン代わりのシャープペンという立ち位置だから。僕らだと「フリクション」の3色ペンなんかを使っちゃうけど、消しゴムで消せるカラーシャープペンを提案するということだよね。

【きだて】そうそう。実はこの3色シャープの対抗馬って「フリクションボール3」なんだよね。

【他故】言っちゃえばそうだよね。消せる3色ペンという意味ではね。

【高畑】フリクションのどこがすごくいいかというと、カラーが消せるというのが、僕ら原稿に赤入れしたりするので、すごく便利じゃないですか。

【他故】手帳で使うときも、色を変えられるのがすごくいいわけだし。

【高畑】カラーペンなのに消せるのがフリクションの強みだったから。それだったら、こういうシャープペンタイプでもいいんじゃないのかなということだね。

【他故】しかも、これって折れにくくなっているということでいいんだよね?

【きだて】ということなんだけど。

【高畑】元々がカラー芯だから、めちゃくちゃ強度があるわけじゃなくて。ただね、これめっちゃ面白いところが、このノックなんだよ。何が面白いって、このノックが「ジェットストリームプライム」と一緒なんだよ。

【きだて】はいはい、軸の中にノックノブが沈み込まない構造でね。

【他故】沈み込んじゃうとノックして芯を出せないからね。

【高畑】そこなんだよ。今までだったら、沈み込んだ上に、センターで押してたんだよ。それを、あえてジェットストリームプライムと同じ機構を使うことで、へこまさずに横でノックさせるというのがね。「ファンクション357」はどうなっていたっけ?

【他故】ただ単に、ノック棒が出っ張っていたんじゃないかな。すごいでかい出っ張りだったような気がするけどな。沈み込んだかな?

【きだて】あれ、どうだったかな?

【他故】そこまでは憶えてないな。でも、沈み込んでるよね。沈み込んで、出っ張ってるよね。

【きだて】ノックノブがやたらとでかくて、沈み込んでもノックできた、みたいな話だったかな。

【他故】という記憶があるけど。

【高畑】三菱鉛筆が作ったということで、換え芯の技術とノックの機構がね。それがスリムに納まっているのは、あの機構のおかげだよ。

【きだて】ただ、そもそもサイドノック方式が苦手なんだよなー。

――あ~、手汗とかかく人はね。

【きだて】そうなんですよ。爪をかけてノックしないと不安で不安で。

【高畑】爪かけるよね。

――まあ、女性は爪長い人多いし。

【他故】そんなに爪長い人用ですか(笑)。

――そこまではいかないですね(笑)。

【きだて】だから、サブのペンだなと思うんだけどね。

【他故】バリバリ書くものじゃないのかもね。

【高畑】まあ、「R:E」に3色ペンがまだないので、三菱鉛筆が学生に対して消せる3色ペンを提案すると、このかたちになるということだよね。

【きだて】そうだよね。

【高畑】僕らみたいに大人になると、ボールペンで書いちゃうってなるけど、学生のときにこれがあったら使っている気がするな。

【他故】使っているんじゃないかな。

【きだて】どうだろう、今は学生も普通にボールペンでノートとったりしてるからね。カラーのボールペンに対して、俺らの頃より抵抗がないと思うんだよ。

【高畑】でも、消せるボールペンって、インクがなくなってるわけじゃないじゃん。もっときれいに書きたいんだよ。

【きだて】あ、消した跡に透明化したインクが残ってるのが気になる?

【高畑】気になる。

【他故】気になる人はいるだろうね。

【高畑】まあ、人によるんだろうけど、ノートをとるときにボールペンで書くときの抵抗感というのは、消せないし、フリクションでも消した場所に書くとツルツルすべるんだよ。それを考えると、ちゃんときれいに消せるし。ボールペン気にならない人なら、修正テープをピーッと引いちゃえばいいし。

――図の中を塗るのには、シャープペンの方がいいんじゃないですか。

【高畑】面塗りができるからね。

――もちろん、筆跡はボールペンの方がはっきりしてますけど。

【高畑】大人になってボールペンに慣れちゃうと、筆跡がはっきりしてないと、自分の頭がぼんやりしているような気がするんだけど。学生の時は全然困ってなかったし。むしろ、きれいなノートを作ろうと思ってたから。

【きだて】確かにね。いまHBのシャープペンで書いた文字って薄くてすごく読みづらいんだけど、学生の時はなにも気にしてなかったもんな。これって加齢によるもの?

【他故】加齢(笑)。

【高畑】加齢というか何なんだろうね。

【他故】普段目にしているものの違いだよ。

【高畑】コントラストに対する感度も違うんだろうけど、昔は0.3㎜のシャープペンでHとか2Hとか使ってたから。

【きだて】今だとそれ、白地と見分ける自信すらないな。

【高畑】0.3の2Hのシャープペンとかを使って、どこまでもシャープに書きたかったから。芯の粉が出るのが許せないくらいで。

【きだて】あ~、はいはい。

【高畑】ノートが、製図の出来上がりくらいになったりするわけですよ。四角い文字書いたりして。

【きだて】それ、石版にケガキ針でいいんじゃねえの。

【高畑】それは、僕が教わってた先生が、ガリ版をめっちゃやっていた人だから。ちょっと角アールがついた四角い文字を書く人で、かっこいいなと思っていたので。

【きだて】あ、冗談のつもりが冗談じゃなかった(笑)。

【高畑】冗談じゃないよ。鉄筆で書いたような文字を書いてた。僕は、小学生のときは下手くそな字だったので、きれいに書こうと思うと、角張った字を書くときれいに見えると思ってたんだよ。その時は、限りなくシャープに書こうとしてたから。ボールペンで間違えて、修正テープを引くのが、とてつもなく嫌だったんですよ。

【きだて】ああ、それは分かるよ。俺もそういうタイプだったから。

【高畑】だから、きっちり消したいと思っていて。…でも、最近はそうでもなくなったなと思って。

【他故】うふふふ(笑)。

【きだて】話戻るけどさ、この芯本当によく消えるんだよな。

【高畑】消える。

【きだて】従来のカラー芯のイメージを覆すぐらいよく消えるなと思って。

【他故】本当によく消える。

【きだて】フリクションの対抗馬ってさっき言ったけど、ほんとに完全実用レベル。「いざという時は消せなくもない」じゃなくて、最初から消せるのを織り込み済みで使える。

【高畑】大人になると、ベースはボールペンじゃない。それで消せるボールペンを使うことで、全体のトーンが揃うじゃん。でもさ、ベースをシャープペンで書いているところに、ボールペンで書くと、そこだけ濃くなって浮くじゃん。それを使うことでトーンが揃うじゃん。

【他故】シャープペンシルで書いていけば、シャープペンシルで赤、シャープペンシルで青という方が色調的に合うし、もちろん同じように消えるので。

【きだて】そういうことだよね。

【他故】シャープペンの芯としてはよく消えますよ。

――消えますよね。

【きだて】普通の墨芯と同じレベルで消えるから、全然違和感がないんだよ。

――カラー芯とか色鉛筆って、普通は消しゴムで消せないですよね。

【きだて】昔あったレガシーな赤芯って、とにかく消せなかったじゃない。実際にいつまで経っても、ベットリした感じで残っちゃう。

【他故】子どもの頃買ったことありましたけど、赤芯は消えないと思っていたから、基本的に使うのが恐いぐらいでしたよ。書くとヌルヌルするし(笑)。

【きだて】そうそう。使うのに覚悟がいったよね。「よし、今から赤で書くぞ」って気合いが必要。

――色芯は消せないというのが、今もなお共通の認識としてみなさん持っているのかな。若い子たちも含めて。

【他故】でも、今の子たちは消せる色芯から入るんじゃないですか。

――この商品を見て、「消せる色芯がある」って驚いて買うという感じでしょ?

【高畑】僕らは「色芯は消えない」というイメージがどうしてもあるからね。

【他故】あと、そのオレンジは本当に見えない(笑)。

【きだて】どうしても、目が認識しない(笑)。

【他故】残念ながら、モスキート音と同じレベルで、そのオレンジは見えない。

【きだて】クリーム紙に書いたらなおさら見えないよ。

【他故】「何か書いてあるぞ」ぐらいな。

――これは、中高生なら見えるんですか?

【きだて】見えるんでしょう。

【他故】見えないものは作らないでしょう(笑)。

【高畑】別に、見えなくはないけど。

【きだて】大人は「何か書いてる」ぐらいの認識だよ。

【高畑】そんなにかな?

【きだて】それは、俺が老眼だからというのもあるけど。

【高畑】いやいや、そうでもないんじゃないの。

【きだて】コントラストの差が、本当に見分けづらい。

――(試し書きをしながら)あれ、白よりもクリーム紙の方が見やすいぞ。

【きだて】白の方がつらいか。

【他故】白の方が反射がきついかもしれない。

――かもしれないですね。

【高畑】(試し書きをしながら)この白い紙の方が、表面が滑るんだよ。こっちのクリーム紙の方が、ちょっとザラザラした感じがあるから。教科書なんかでも、コートされた紙だと食いつきがよくなかったりするじゃない。

【きだて】それはあるね。

【他故】でも、ノートやルーズリーフに最適なかたちになっているはずなんだけど。中高生はそんなにクリーム紙は使わないから。

【きだて】そうだね、多分ルーズリーフ向けにチューニングされているはずだから。

【高畑】教科書への書き込みに最適な芯ってあったじゃない。

【他故】あれは黒芯だよね。

【高畑】あれも三菱鉛筆だっけ?

【きだて】そう。

――この紙は割とツルツルしてるから、色がのりにくいんだ。

【他故】ガッチリのれないということがあるのかもしれませんね。

【きだて】硬さでいうと、どれくらいになっているのかよく分からないけど。

【高畑】ちょっとワックスの滑る感じがあるじゃない。カラー芯だと、クックって力が入って筆圧が強くなるから、ちょっとグリップが滑ってということはあると思うけど。

【きだて】でも、昔の色芯に比べたら、大分オイリーさは軽減されているよ。

【高畑】そうそう、だからそれがあまりなくなったなと。それで、後ろに消しゴムが付いているのね。このフタが、回しても引っ張っても開くという。

【きだて】ひねると開くんだ。

【高畑】そう。だから、色々と実験している感はあるよね。

――でも、単色のカラーシャープが出てきたすぐ後に、こうやって3色シャープが出てくるんだから、すごいですよね。

【きだて】すぐというほどでは。1年以上は経ってるでしょう。

――でも、単色は去年の12月に出てますよ。芯が結構先だったんじゃないですか。

【きだて】あ~、そうだったんだ。

――矢継ぎ早にという感じですかね。

【きだて】でも、ゼブラだって、蛍光ペンでにじまないボールペンを出して、半年経たないうちに、ボールペンがにじまない蛍光ペンを出したから。この矢継ぎ早感(笑)。

――最近、色々とサイクルが早いですね。

【高畑】そうか、これはユニット部分を入れ替える感じだから、先端も透明にしているんだね。

【きだて】そうそう、ノブの色は変えずにね。

【他故】これは、ノブに色を付けて固定でもよかったような気がするけど。

【きだて】でも、色を入れ替える前提であるから。

【他故】そうか、7色あるしね。「好きな色を入れて下さい」という方がいいか。

【高畑】ここが二重になっているのは、先端のテーパーの内側に突き当てずにノックできるようになっているんだね。

【きだて】シンプルにみえて、色々と細かいところを作ってあるんだよね。

【高畑】そうなんだよ。先端を押さえずに、後ろだけでもノックできるというのもなかなかだね。

――なんか、トピックが色々とありすぎて、記事をまとめるときに大変そうだ。

【きだて】がっつり行を割いて説明するほどでもないけど、工夫してるなー…という事の積み重ねでできてるんだよね、これ(笑)。記事にしてしまうと、「消せる色芯」の方がメインになっちゃうくらい。

【高畑】ユーザー目線で考えるとそれほど驚くほどでもないけど、メーカー目線でみるとすごい細かな工夫をこの中に入れていて、新しい仕組みの実験みたいなのがいっぱい入っているから、これまで見たことのない部分が多いよね。

【きだて】そうね。

【高畑】まあ、オタクの目線で見るからだと思うけど、すごい意欲的な商品にみえるな。

――これ、売れてますよね。

【高畑】売れてるんじゃないですか。店頭でみるとかなりスカスカになってますよ。

【きだて】マニアックに観察すると見どころ多いけど、普通にユーザー目線だと「はいはい、3色のシャープペンね」で終わっちゃう。実は難しいアイテムなんだ。

【高畑】でも、3色のシャープペンをできるのは、三菱鉛筆だけじゃないですか。

【きだて】そうだね。

【他故】他はやりようがないからね。

――せっかくなので、このシャープユニットは全色出せばいいのに。

【きだて】さすがに、そこまでやる必要はないでしょ。紫とかそこまで需要があるとは思えないし。

【高畑】昔の製図ペンみたいに、カラー芯の中にリングが入っていて、それを外してはめると何の色か分かるというのもあるけど。

【きだて】あ~、あったね。でも、このカラーシャープ芯にはアソート芯もあるから、リングは使えないね。

――あ~、そうか。

【高畑】アソート芯って、おみくじみたいじゃない(笑)。

【他故】好きな色を出すんじゃないんだよ(笑)。

【きだて】とりあえず使ってみたい派とおみくじ派だよ。

――「今日のラッキーカラーはこれ」って(笑)。

【高畑】ロシアンルーレットみたいな。

【きだて】あの水色がまた見えないんだわ(笑)。

【高畑】あの水色は、漫画家の下絵にはいいわけですよ。写りにくいから。

【きだて】コピーに出ないんだよな。

【他故】そうそう。

――まあ、とにかく面白いということで。

【高畑】そう、面白いんですよ。いろんなことを実験しているから、次に普通のシャープペンにこの技術を入れてもいいんですよね。だから、いろんなことができるんじゃない。

【きだて】だから、今後の展開を見据えているんだね。

超スリムで握りやすい! 多色ボールペン

スーパーG.jpgスーパーグリップG2・3・4」(パイロットコーポレーション) 低価格帯の油性ボールペン「スーパーグリップG」シリーズの極細ボディの多色ボールペン。2色・3色ボールペンで最大径10.7mm、4色ボールペンで最大径11.8mmの極細ボディを実現した。細身のボディなので、バッグなどはもちろんスーツや手帳のペン差しなどにも収まる。グリップには、「スーパーグリップG」シリーズの特長である、格子状のスリットを入れることで、極細ボディでも指の動きをしっかりキャッチできる「グリッドグリップ」を採用。「グリッドグリップ」で覆うことで、握る力が弱くても安定した握りを実現した。2色税抜250円、3色同300円、4色同350円。

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【きだて】次は「スーパーグリップG」。まあ、細っいね。スリムというだけあって。

【高畑】細い! これね、3色ペンが特に際立っている感じがするんだよな。

【他故】2色と3色の太さが同じじゃないかな。

――同じに見えますよね。

【きだて】4色が太目というのは分かるけど。

【他故】2と3は同じ。

【高畑】2もあれだけど、3がこの太さというのがすごいよね。

【きだて】すごい、よく詰め込んだという感じだよね。

【高畑】4はしょうがないけど。

【他故】それでも、標準的なペンとしては、これに4色入っているようには見えない。

【きだて】4色でも、グリップのところで確か12.5㎜だったから。そんなの普通の単色ペンとほとんど変わらないじゃない。

【他故】ギッシリっていう(笑)。

――これ、中の油性インキは、普通のインキなんでしたっけ?

【きだて】アクロインキじゃないけど低粘度です。

【他故】新しく開発した、「スーパーグリップG」用って言われているやつだね。

【きだて】俺の感じだと、わりとアクロに近い印象なんだけどね。

――(試し書きをして)黒色は割とはっきり発色しますね。でも、油性のネットリ感もちょっとあるかな。

【きだて】これで4色は350円だね。安いなー。

【他故】そう、350円。

【きだて】あとさ、俺はこのトレッドパターングリップが好きでさ。

【高畑】きだてさんがほめるって、かなりだよね。きだてさんがほめるグリップは滑らないよね(笑)。

【きだて】なでてると若干ツルツルなんだけど、書こうとして持つと、指紋とかみ合うというぐらいの感じで。

【高畑】お~、指紋とかみ合うかー (笑)。

【きだて】いや、もちろん実際にかみ合ってるわけじゃないけど、握って指の腹で圧をかけると安定するんだよね。

――指紋とかみ合うという表現は初めて聞いた。さすがですね。

【きだて】これは俺は非常に好き。あと、割と先端の方まであるじゃん。

【他故】そうだね、随分先端の方までグリッドがきている。

【きだて】俺はかなり前の方でペンを持つので、先端までグリップがあるとうれしい。

【高畑】確かにね。前の方で持つ人って、グリップ付いてるのに、グリップじゃないところ持っている人いるよね。

【きだて】そう、それ!

【高畑】あるね。

【きだて】あるよ。

――「シグノRT1」なんかそうですよね。先っちょまでラバーがあって。

【きだて】そうです。「RT1」最高。

【他故】あれがいいんだね。

【高畑】そうか、きだてさんが好きなのは、その辺だ。先端のテーパーギリギリのところでちょっとななめになっているところがグリップになっているのが。

【きだて】パイロットがやたら好きな例のグリップあるじゃない。途中で凹んで、先端のほうに行くに従って膨らむやつ。あれが苦手でさ。

【高畑】そうか、あの膨らんでいるところを持ちたいのか。

【きだて】持ちたいんだよ俺は、っていう。

【高畑】それだね。色々と分かってきたぞ。先端のななめになっているところがあって、その後ろの平行部分がグリップだと、それより前を持っちゃうから滑るんだ。それもあるよね。単純にグリップのパターンじゃなくて。

【きだて】それに対して、これだけ滑りにくいグリップを付けてくれていることが、俺はとても好きなわけです。

【高畑】そういうことか~。

【きだて】あとね、個人的な好みでいうと、これの透明軸タイプって透明度が高くていいのよ。

【高畑】ちょっと昔の多色ペンみたいなイメージだよね。レトロっぽくも感じるくらいで。

――昔ながらの事務用ボールペンみたいな。

【きだて】それで、このゴムグリップが半透明というね。何かね、「あっ、きれい」ってなっちゃう。

【高畑】はぁ~、そこか。なるほどね。

――そこは盲点だったな。つい色軸の方に目が行きますよね。

【他故】でも、クリアーなやつは何だかんだ言って売れてますからね。色んな人にウケているのでね。

――カラー軸はやっぱり女子とかですかね。

【きだて】この色プラがチープなので、それよりは透明の方が。

【他故】これはチープでかわいい“チプカワ”というイメージだからさ。

【高畑】そうか、俺はもうちょっと後ろを持つから、昔のスーパーグリップの方がよかったけど。以前のスーパーグリップは、前が膨らんでいて、それで引っ掛かってたからね。だから、昔のが好きだったんだけど、新しくなって大分イメージが変わっちゃった。それと、単色のスーパーグリップと全然デザインが違うじゃん。同じ兄弟とは思えないくらい。

【他故】結局は、グリップも全然違うじゃん。

【高畑】きだてさんみたいな持ち方をする人は、先端が太くならずにスリムになってるけど、先端までグリップが付いていて、パターンが入ってるというのがいいんだ。

【きだて】最近ちょっと、字をなんとかきれいにしようという気持ちもあって。

【高畑・他故】おっ!

【きだて】持ち方から矯正しようと「プニュグリップ」とか使ったりしてね。プニュグリップを付けるともうちょっと後ろを持つことになるけど。

【他故】そうだね、太くなっちゃうから。

【きだて】ところが、スピードを出して書こうとすると、グリップポイントがどんどん前に行っちゃう。

【他故】指が前のめりなんだ。

【高畑】あ~、そうか。前のめりに持つんだ。

【きだて】で、さらに手のひらを紙にべたーっとつけて書くので、どんどんペンも傾くし、字もガタガタと汚くなってくる。

【高畑】そういうことか。

【きだて】字が汚い理由を、色々と自分で解析しているんだよ(苦笑)。

【高畑】後ろの方を持つというのはやらないんだ。

【きだて】丁寧に書こうとすると、後ろの方を持つ。

【高畑】それで、早く書こうとすると前になるんだ。

【きだて】顔も、棟方志功ばりに近くなるし。

【高畑】それでピントは合うの?

【きだて】だから、こういう状態だよ(メガネを上げる仕草)。

【他故】近距離任せとけって感じだよ。

【きだて】老眼鏡かけるか、メガネ外して前のめりになるかだよ。

【高畑】そうなると、余計近づくわけだ。

【きだて】「ワだば平成のゴッホになる」だよ。

(一同爆笑)

【高畑】そうか、そうか。このグリップは。「RT1」派の人たちとか、この「スーパーグリップG」派の人たちとか、一定数の需要はありそうだね。

【きだて】需要はあると思うね。

【他故】そうか、先の方を持つっていうのはあるよね。

【きだて】そうやって、字がきれい派の2人が突き放したような言い方をするわけじゃん。

【他故】そういう意味じゃないよ(苦笑)。

【高畑】万年筆を使うと、そんな前を持てないから。

【きだて】首軸を持って、手がインクでベットベトに汚れるとか。

【高畑】首軸というか、きだてさんの持ち方だと、普通にニブを持ってるから。

【きだて】さすがの俺も、万年筆を持つときは後ろを持つよ。

【他故】ニブ持っては書けないからな(笑)。

【きだて】それは無理だ。

【高畑】その気持ち分かるのは、ボールペンって立てた方がよく書けるじゃない。

【他故】そうね。

【高畑】あんまり寝かせると、エッジが引っ掛かるじゃん。ボールペンは立て気味で書かないといけないから、そうすると前の方を持った方が持ちやすいというのはある。

【きだて】そのグリップの部分で高評価なのと、あとは太い軸はそれだけ指が疲れるわけですわ。

【高畑】そうなの、細い方が楽?

【きだて】個人的には、細い方がいい。

【高畑】そうなんだ。自分の筆圧で疲れるじゃん。

【きだて】細過ぎはもちろんキツいけど、これぐらいのスリムさは合うね。

【高畑】低粘度じゃない油性がいいってこと?

【きだて】ゲルか水性がいい。字が汚い人は低粘度油性は向かないよ。

――滑り過ぎちゃうから?

【きだて】そう。ホント鬼門ですわ。

【高畑】低粘度じゃない油性のリフィルは入るかもしれないけど、ゲルにしようと思ったら、このスリムな軸じゃ無理だ。インクのタンクが大きくなっちゃうから。

【他故】この細さでリフィル作ったら、「何字書けるんだ」という話だから(笑)。

【きだて】あっという間になくなりそうなやつだよね。

【高畑】このリフィルは他のと互換性はあるの?

【他故】同じでしょう。普通に入っている多色系のリフィルと同じだよ。

【きだて】今は普通の油性はある?

【他故】普通の油性がこれに切り替わっているんだよ。

【高畑】そうじゃない。

【高畑】サクラクレパスが、「ボールサイン4*1」を作ったときに、あのリフィルって専用で細いんだよね。リフィルを細くしないで、ゲルで多色で細いペンが作れない。サクラのやつって、他で使えないのかね?

【他故】どうなんだろうね。

【きだて】これで低粘度油性でなければ、俺にとって理想に近いボールペンではあるんだ。というくらい「スーパーグリップG多色」のボディは好き。

【高畑】そうか、ゲルじゃないとダメか。

【きだて】油性の多色ボールペンを使わなきゃいけないシチュエーションがあれば、俺は多分これをチョイスする。

――でも、アクロインキよりは滑らないでしょう?

【きだて】アクロよりはややもったりしてるけど、それでも滑るのには違いない。

――なかなか、きだてさんの要望に応えるのは難しいですね。

【高畑】まあ、開発のしがいがあるってもんだ。

【きだて】ただ、欲しがっているところは限定的なので、そこさえ満たしてくれれば。

――とりあえずは、ゲルでこの細さを望むということですか。

【きだて】まあ、さすがにそれは無理だろうけどね。

【高畑】これは見たときに、思った以上の細さに驚いたよね。

【きだて】売り場に並んでいると、すごいいっぱい並んでいるように見えるものな。細いのがシュッと出てて。

【高畑】この2色と3色は「細っ」て思うよね。たった1㎜、2㎜の話なんだけど、この1㎜がすごい。

【きだて】ペンの直径で1㎜違ってたら、持った感じが違うものね。

【他故】全然違う。

――ノックボタンも細いですよね。シュッとしてて。

【他故】ボタン自体も細いですよね。

【きだて】これも削り込んだんですかね。

【他故】誤動作もなく、よく動く。

【きだて】そうそう。ノック不良もまだ無いね。

【他故】すげーよく動くよ。

【きだて】本当によくできたペンだなと思う。

【他故】これ、3色ボールペンだと一番細いと言っていいのかな?

【高畑】4色でもそうじゃない。

【きだて】トンボ鉛筆の「リポータースマート」と同じくらいの、直径12㎜台。

――この4色が3色ペンでも細いと思うかもしれませんよ。

【他故】この細さは、普通で考えたら2色ぐらいですよね。

【高畑】「もうこれ以上は」というところまでそぎ落としていくのが、今の流れなんだろうな。

【他故】まあ、他との差別化というのも、いろんな見方があるんだろうけど。

【高畑】見た目的にもだけど、きだてさんが言うようにグリップの滑りにくさもあるんじゃない。油性ボールペンでしっかり書きたいという、例えば伝票書いたりとかでゴリゴリ力を入れて書くというのは、用途としてあるからね。いいんじゃないかな。

――事務用ボールペンもずいぶん変わったなという感じがしますよね。一応、用途としては事務用なんですよね?

【高畑】だから、この透明軸のを見ると、「ニュー事務用ボールペン」っていう感じがしません?

【きだて】(爆笑)はいはい、未来事務用ボールペンだ。

【高畑】未来っぽいけど、すごい事務用っていうか。

【きだて】分かるよ。「事務用ボールペン2.0」だ。

【高畑】80年代にタイムスリップして、その当時の俺らがこれを見たら「何それ」って思うよ。

【きだて】あの当時の事務用ボールペンって、それこそゼブラの「ニュークリスタル」とかじゃん。

【高畑】それの多色が出はじめて。

【他故】そうね。

【きだて】ニュークリスタルが「事務用ボールペン1.0」。そこから「ジムノック」が出たあたりで「あっ、新しくなった」という感じがしたじゃない。そこが「2.0」だとすると、これは「3.0」になるのかな。

【高畑】「ラバー80」とかからジムノックになって、キラキラした感じになったじゃないですか。その頃にゼブラが出していた4色ボールペンがあったわけですよ。それが何かね。

【他故】あの頃だと、トンボ鉛筆の「オブジェクト」で透明軸のすごいいいのがあった。頭がくるんと丸くなってて。

【きだて】あ~、あった!

【他故】それで、業界が一気に「あのかたちいいな」になって、bicっぽいのからいろんなかたちになっていくという(笑)。

【きだて】確かに、その辺で分岐があったね。

【他故】80年代の中頃から、トンボのこのかたちが突然きているんだよ。あれを経て「スーパーグリップG」の多色透明軸になったわけだ。

【高畑】オジサン的には、懐かしさと新しさの共存みたいなのがあるよね。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。

弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売された。

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