【連載】月刊ブング・ジャム Vol.17 夏休みスペシャルその4
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.17では、「夏休みスペシャル」として、ブング・ジャムのみなさんがおすすめする“夏休みに使いたい文房具”を4日連続で紹介します。第4回目は、他故さんが選んだサマーカードです。
ブング・ジャムも脱帽! サマーカードのディープな世界
他故さんかセレクトしたサマーカードの数々(すべてサンリオ)
――では、トリは他故さんですね。
【他故】みなさん、測ったり、作ったりということなんですけど、私の場合はそこから視点は外れまして、夏休みに何をするというよりは、自分の夏休みで何をすると考えたときに、ただ単に実家に帰省するのではなくて、帰省する前に「帰るよ」というはがきを書いたりとか、子どもに「おじいちゃんに会いに行きますよ」と書かせたりとか、というのをですね。
【きだて】へぇ~。
【他故】やっているんじゃなくて、やりたいなということで。
【きだて】ああ、やりたいのね。
【他故】そういうときに、暑中見舞いを売ってるよねということで、久しぶりに売り場を見たら、あまりにも盛況でビックリしたんですよ。今は、「サマーカード」という言い方をするんですね。
――ああ、そうですね。
【他故】グリーティングカードといってもいろんな種類があって、僕の中のグリーティングのイメージだと、基本的にはクリスマスカードのような、みんながやっているというイメージだったんですけど、夏にこんなにカードが流行ってるんだというのに気がつかなくて。今日はサンリオのやつだけなんですが、気に入ったものをいくつか買ってきたので、みんなで見てみようかなと思って。
――なるほど。
【他故】これは今年の新作なのかな。レーザーカットで立体的に飾れるっていう。
【きだて】この時点で相当涼しげでいいけどね。
【高畑】紙製品はレーザーカットができて、いろんなものが変わったね。
【きだて】これすごいね、いいね。
【他故】精度もすごいんだけど。
【高畑】これでいくら?
【他故】これで500円。それで、その下にあるのがメッセージカードになるんだね。
【きだて】この台紙がメッセージカードなんだ。そうだよね、これにメッセージ書くところどこにもないよね。
【他故】書けんだろ!
【きだて】いいねこれ、かっこいい~。
【他故】この段階で、21世紀になって随分技術が上がったなと思うよ。技術だけでもすごいんだけど、誰が見ても涼しげでしょ。これを送られてきて、嫌がる人がいるかな。
【きだて】いや、これはいいね、うん。
――これは飾っておけますからね。
【他故】この下のタグも、立ち上げればちゃんと立つみたいで。
【高畑】あ~、なるほど。
【他故】安定するんだよ。いろんな工夫があって。
――今どきのグリーティングカードはすごいですよ。レーザーカットのカードはトレンドじゃないですか。
【他故】いや、売り場としては本当にノーマークだったので。すごく華やかな売り場だっていうのは知ってたんですけど、全くのノーマークで。
――男性はあんまり近寄らないコーナーですよね。
【高畑】つい俺らは、自分で作らなきゃって思っちゃうからね。
【他故】いや、工作派の人たちの気持ちも分からなくはないけどね(笑)。
【きだて】これを見て、「いいな」と思うと同時に、「負けてられるか」という気持ちになるんだよ。
【高畑】あとは、「こんなのやられたら、商売上がったりだよ」って。こんなのが500円で売られたら、あとは何を作ったらいいんだと思うじゃん。
【きだて】レーザーカットとか技術では勝てないから、「面白系の方で何とか」とか、こういうの見ると色々と考えることが増えちゃう。
【他故】わはは(爆笑)。
【きだて】今年は、暑中見舞いに使えるキラーワードとして、「平成最後の夏」というのがあるわけじゃないですか。
【他故】あ~、はいはい。
【きだて】だからみんな、暑中見舞いを出したがっている風なんですが。
【他故】そういうのがあってなのかもしれないけど、とにかく売り場が活況ですげえなと思って。これなんか、逆に目立たない方なんですよ。今のやつって、光ったり鳴ったりするのが非常に多いので。
【きだて】オルゴール付きは何年か前から鉄板だよね。
【他故】でも、レーザーカットのものでも、こういうものを500円で平気で出してくるっていう(笑)。
――今は、グリーティングカードって単価高くなってますよ。光ったり、音が出たりするものが主流なので。
【他故】かと思うと、これも今年の新作だと思うんですけど、うなぎの蒲焼き。
【高畑】それはどうなるの?
【他故】これはね、蒲焼きの売り場になるの。
――蒲焼きを焼いているところですね。
【他故】焼いた状態になるの。
【高畑】これ、蒲焼きがさ、ちょっとだけ湾曲するようになるんだ(笑)。
【他故】立体になるんだよ。
【きだて】ふっくらするように作ってるのかね? さすがに匂いはしないな(笑)。
【高畑】香り付きだと、もうあれだよね。
――これは、うちわに書くんですか?
【他故】そうですね、裏側にメッセージスペースがあります。
――完全に工作ですね(笑)。
【他故】「簡単に立体にして飾れます」となっているよ。
【高畑】う、う~む(笑)。
【他故】さっきのレーザーカットのと比べて、完全に違う方向を向いているんですが。夏っていうのを、こういう風に表現するんだと思って。
【きだて】俺はね、うなぎのふっくら感を出してるこの作りの良さがね、「くっそ〜」っていう(笑)
(一同爆笑)
――そんなに対抗心を燃やさなくても(笑)。
【高畑】何なんでしょうね、これは(笑)。
【きだて】こっちもそうだけどさ、メッセージ書く部分はわずかで、おまけの部分が多いじゃん。
【高畑】それは、全国的な流れとして、メッセージを考えるのが面倒くさいんだよ。
【他故】それだけ小さければ、時候のあいさつとか省略できるからさ。「元気ですか?」ぐらいで済むから。
【高畑】そうそう。逆に書くところが大きいと、書く内容に困るから、そのぐらいがいいんだよ。
【他故】それぞれ郵便料金も120円とか書いてあってさ、「このまま送れます」とかフォローしているから。
【高畑】郵便で送れないとね。
【きだて】このうちわも硬くして、うちわとして使える重みを出しているところとかね。くそ~。
【他故】この立体感はすげーなっていう(笑)。
【高畑】これも500円ぐらい?
【他故】450円だね。
【高畑】これを450円で出そうと思った担当者と、それにゴーサインを出した上司がいるわけでしょ。何やってんだっていう感じはするよね(笑)。
――こういうカードは、今は普通じゃないですか。
【他故】逆に、今の流行りはこっちの光ったり、鳴ったりするタイプだから。ボタンを押してみると…(光って水の流れる音と風鈴の音が聞こえる)。
【きだて】灯籠になるわけだね。
【他故】結構音がでかいな。
【高畑】音姫みたいな(笑)。
【きだて】俺もトイレ置くやつかと思った(笑)。
――トイレに置いてもいいかも。
【高畑】これで消臭機能があったら完璧じゃん(笑)。
【他故】そして、光がすうっと消えていくという。
【高畑】これでいくらなの?
【他故】1,400円だね。光るのと鳴るやつはさすがに値段が。
【きだて】それぐらいするよね。
【他故】かと思うと、これも同じく光が出て音が鳴るやつだけど。
【高畑】線香花火をするんだ。
【他故】女の子が線香花火をするんだけど、ちょっとすごいのは…(BGMが流れて線香花火が光る)。
【高畑】あっ、光り方が変わるんだ。
【他故】そう変わるの。段々光り方が弱くなってくんだよ、線香花火だから。
【きだて】本当だ、光が減ってきている。芸が細かい(笑)。
【他故】あ~ほらほら終わる、終わる。夏が終わるよ(笑)。
【きだて】あ~、最後パチッと光った(爆笑)。
【他故】これすごいんだよ(笑)。
――細かいですね。
【他故】本当に芸が細かいんですよ。こんなの知らないで見てたら、泣くかと思うくらい(笑)。
【高畑】何灯付いているのよ? (数えて)30個LEDが付いているよ。
【きだて】要は穴の数だけあるっていうことだね。
【他故】ちょっと分からないけど、周りも光ってるよね。星かな?
【高畑】ホタルじゃない?
【他故】ああ、ホタルだ。ホタルも光ってるよね。
【きだて】これ、透過光じゃない? 違うか。
【他故】1個ずつ付いてるでしょ?
【きだて】ああ、付いてるね。まじか~!
【高畑】ホタルだからぼや~んと光ってるね。
【他故】もうちょっと暗いところで見るものなんだろうけどね。
【高畑】40灯も付いてるよ!
【きだて】(周りを暗くして)うわ~、暗いところで見ると、何じゃこりゃ!
【高畑】LED40灯で、それぞれプログラムで動いてるんだ。しかも音入りで。
【他故】それで1,400円。これ最高峰に近いんじゃないか。このコントロールされているようなやつだと。
【高畑】灯籠のやつだと点滅するだけだものね。しかもLEDの数がめちゃくちゃ多いじゃん。40灯ってすごいよね。
【きだて】いやびっくりした。今こんなことになってるのか。
【高畑】電池内蔵で、40灯で、音楽付いてて1,400円。
【きだて】音源も昔より圧倒的によくなってるよね。
【高畑】音いいよね。
【きだて】昔のって、すごい音が割れてたじゃん。ガビガビに。
【高畑】しかもこれ、JASRACにお金払ってるよ。
【きだて】そらそうだろうよ。
【他故】BGMが「secret base 〜君がくれたもの〜」だから、そりゃ普通に払うでしょ。
【高畑】それで1,400円だよ。
【他故】多分、これが今日見た中では最高かなと思うんだけど。それ以外に、野球のやつがあったんですが。
【きだて】甲子園のだね。
【他故】これも立ち上げると、こういう風に立体になるんだけど。
【高畑】すげえ、野球盤じゃないか。
【他故】これが音付きで(「狙いうち」が流れる)。これは、高校野球が好きな人にはたまんないだろうな(カキーンと打球音がして、歓声が聞こえる)。
(一同爆笑)
【高畑】カキーンっていったぞ(笑)。
【他故】何がすごいって、これだけ2曲入りなんですよ(「サウスポー」が流れる)。
【きだて】何でチャンスマーチばっかり流れるの。もう1曲はオルゴール版の「栄冠は君に輝く」とかにしろよ。しみじみとメッセージを読む隙がない。
――甲子園の応援でよく使われている曲を選んでるんですね。
【きだて】そうなんだけど、1曲は違うものにしたほうが(笑)。
【高畑】でも、そこはLED付いていないから2曲入ってるんだね。
【他故】これはサマーカードのシリーズなので高校野球なんですが、誕生日カードのジャンルにはちゃんとプロ野球のバージョンがあるらしいので。とにかくこれは、野球好きな人にはいいだろうと思います。2曲も入っていて、技術的にはすごいだろうと思うけど。
【きだて】いや、すごいすごい。ちょっとびっくりした。
【高畑】レーザーのカードなんてさ、レーザーのスピードが上がってるからこんなのできるんだろうけど。
――対抗心はあるんでしょうけど、さすがにここまで来ると無理でしょう?
【きだて】無理、無理。俺、電子工作弱いし。
【他故】せっかく買ったので、どれかは親に送ろうかと思うけど。
【高畑】いや~、何なんですかね。すごいな。
【他故】ここまでやらないといけないのかとは思うんだけど、お客さんのニーズなのか、それとも年々向上しているのか。
――ニーズもあるんでしょうね。
【きだて】ニーズというよりかは、作っている側の「お客さんの度肝をぬいてやるぞ」っていうのが大きいと思うんだ。
【高畑】あとは、新しい何かを提案しないと、周りが納得してくれないとか。
【きだて】社内的なね。
【他故】これができるメーカーはそうはないだろうしね。
【きだて】どこまでエスカレートするのかね。
【他故】僕も今年発見したので、今年の新製品かどうかも分からんのですよ。
【高畑】音が出たり光るのは知ってるし、レーザーカットもなかったわけじゃないけど、レーザーカットのカードはお手頃な価格のわりに、3層重なってるしさ、デザインがまた上手になってるじゃん。この基板に関してもあった技術なんだけど、3灯とか4灯じゃなくて、30灯とか40灯だからさ。
【他故】ちょっと残念なのは、多分電池が交換できないので。
【きだて】そりゃそうだろうな。
【他故】使い終わったらおしまいみたいなはかなさも多少はあるんだけど。
【高畑】でもまあ、そこが使い捨てだからできるんだろうね。
【他故】そうだね。
【高畑】いやでもすごいね。テクノロジーは安くなるね。
【他故】この線香花火のカードは、最初は音が鳴るだけかと思ったんだけど、光るんだというのが分かって。しかもよもやプログラムでそんなに変動するとは思わなかったので、これは絶対みんなに見せたいと思ったので。
――打ち上げ花火バージョンとかもあるんでしょうね。
【他故】打ち上げ花火ありましたよ。
【高畑】それはプログラムがまた違うんだろうね。
【他故】違うんだろうね。あと夏のお祭りでもっとでかいのがあるんですよ。「炭坑節」が流れて。あと、今回買わなかったんですけど、衝撃的だったのが提灯のカード。
――提灯?
【他故】ハローキティとかドラえもんとかの絵が描いてあって、それを膨らませると電飾で光るという。
――本物の提灯みたいなやつですね。
【他故】そうです。提灯のグリーティングカードなんて、今までに見たことも聞いたこともないような(笑)。
【高畑】俺が子どもの頃にこんなのがあったら、戦意喪失していたかも。
――ここにあるものすべて、30年前にはなかったでしょうね。せめて開くと絵が立ち上がるという。
【きだて】ポップアップカードはあったでしょう。
【高畑】僕らのときでも音が出るユニットは、あったっちゃあったんだよね。電子オルゴール的なユニットはあったんだ。
【きだて】学研の付録に付くくらいはあったんだよ。
【高畑】ボタンを押したら音が出るというパターンに関しては、ここまでじゃなくてもあったんだよ。音とかはよくなってるけど。今は光と連動したりとか、造りが上手になってるじゃん。
――ブング・ジャムとしては盲点だったんですかね?
【他故】知識として何となくあるのは知ってたんですけど、買ってみないと分からない部分があるんだなと。
――さすがに、男性だとここまで手に取らないですからね。
【他故】少なくとも、送られてくることはなかったですからね。今回、送ろうと思って初めて見えてきたものなのですけど。
【きだて】俺、母の日のカードをちょっとだけ定点観測しているんだけど、毎年カーネーションの立ち上がり具合がよくなっていったりとかね、やっぱバージョンアップしてるんだね。
――何で定点観測してるんですか?
【きだて】以前に母の日カードの記事を書いたので、それ以来ちょいちょい気にして見てるんだけど「今年は花弁の立ち上がりが派手になって、華やかさが増した!」とか。
――それも日夜研究しているんでしょうね。
【他故】去年の反省点をふまえて。
――夢にまで出てきたりして(笑)。
【他故】絶対そうですよ。
【高畑】いや~、びっくりです。
【他故】いろんな人に、夏にはこういうものがあると知ってもらえたらいいかなと思います。
――勉強になりました。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。
弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売された。
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