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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.17 夏休みスペシャルその2

夏休みに使いたい文房具はコレ! その2

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左からきだてさん、高畑編集長、他故さん

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.17では、「夏休みスペシャル」として、ブング・ジャムのみなさんがおすすめする“夏休みに使いたい文房具”を4日連続で紹介します。第2回目は、高畑編集長が選んだ観察するためのアイテムです。

文具王おすすめの観察キット

ルーペ.jpg折りたたみ式のスタンドが付いた「スタンド付ルーペ(右)&スタンド付ルーペPRO(左)」(サンスター文具)、15cm定規に配したスライド式の目盛を使って物の厚みを挟んで測れ、0.1~120mmまでの立体物を0.1mm単位で計測できる「CL 厚みを測れる定規」(デザインフィル)。

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――次は、顕微鏡からのつながりで、高畑編集長ですね。

【高畑】サンスター文具の「スタンド付ルーペ」と「スタンド付ルーペPRO」なんですが、レイメイの「ハンディ顕微鏡DX」が250倍で、プチが25倍だから、10倍違うんだよね。それで、「スタンドルーペ」が2.5倍だから、さらにその10分1になるのかな。「スタンドルーペ」は脚があって自分で立ってくれるので、置いたままで両手使えるから楽。

【きだて】本当に、これ楽なんだよなあ。

【高畑】観察なんかでも、ちょっと大きく見えるのは重要なので。実は、割と知られていないんだけど、こっちの大人用の「スタンドルーペ付PRO」は、レンズがデカいけど倍率は2倍しかないのね。子ども用のレンズの方が倍率高いんだけど、これは元々の設計の思想が違っていて、PROは目がつらくなった人が見る用なの。

【きだて】老眼用だ。

【高畑】そうなんだよね。でも、子ども用のルーペは、元々見える人がもっとギューッと見たい用なので、子ども用ルーペは、もっときつい設計にしても平気なんだよね。だから、子ども用の観察ルーペは、周辺がひずむんだけど、中心部分が大きく見えることを重視しているので、倍率が高いです。

【他故】ふむ。

【高畑】これで3倍とか3.5倍くらいなので、見えなかった構造が見えるのではなくて、見えるものが大きく見えて、観察したものを描き写しやすい。

【きだて】より細かく観察できるという、焦点をそちらに合わせた感じだよね。

【高畑】例えば、肉眼で見てても葉脈があるのは分かるんだけど…。

【他故】あぁ~、そのつながり具合とかね。

【高畑】気孔を見るのは顕微鏡なんだけど、つながっているかたちとかをちゃんと描こうと思うとね。あとは、昆虫の脚の付け根みたいなのがどうなっているのはかは、これでいけるかなと。

【きだて】この時期、朝顔の葉っぱとかルーペで見たなぁ。

【高畑】楽なんだよね。置いておけるし、両手使えるから、片手で観察対象を持って片手でペンを持って描けるというのが、元々の商品コンセプトでもあるので。

【他故】うん、なるほど。

【高畑】もう一ついいのは、ストラップ穴があいているんだけど、ここにヒモを通して、首から提げた状態で、このままスタンドを展開してあげると、胸の前に固定できるんですよ。

【きだて】お、お~。

【高畑】こうすると、野外で観察しているときに、立ったままで両手を使わずに観察できる。胸からぶら下げた状態で観察できるというのが、ちょっと面白い。

【きだて】それ、いい使い方だな。へぇ~。

【高畑】これ、「こういうのできるよ」って昆虫が好きな人に教えてもらったんだけど。あとはね、デジタルカメラのレンズにはめると、マクロレンズとして使えるんですよ。

【他故】うははは(爆笑)。

【きだて】それ、何ミリ径がいけるんだろう?

【他故】何となくパカッとはまるんだ。

【高畑】はまるの。

――やってみましょうか。アームを筒にはめるんですね。

【高畑】そう。ポコッとはまって固定できるんですよ。

――本当だ。

【高畑】それで、普通に倍率アップになるんですよ。

――(試し撮りをして)結構ちゃんと写るじゃないですか。

【高畑】意外とちゃんと写るの。

【きだて】これすげーな。ちゃんとマクロになってるやん。

【他故】見た目があんまりだという気もするけど、すごいね。

【高畑】これは、カメラマンの人のブログで見て、「できるんだ」と思ってやったらカメラにはまったという。

――高いマクロレンズ要らないかも(笑)。

【高畑】まあ、簡易的なものなので。

【きだて】ひずむしね。

【高畑】もちろん、高いマクロレンズの方がちゃんと写るけど。

【きだて】ちょっと遊びで写す分にはこれで全然いいよね。マクロレンズ買わなくても。

【他故】全然いいっすよ。

――マクロコンバーターだ(笑)。

【高畑】そう。使い方は一緒なので、マクロコンバーターが自前でできるよっていう。何なら、このレンズをななめにするとチルトシフトするよ。

【きだて】(爆笑)お~、そうか~。

――(カメラを見せながら)ルーペ付けないとこんなものですよ。

【高畑】やっぱり一段違うね。

【他故】面白い、うちでも試してみよう。

【高畑】まあ、そうやっていろんな遊びができますという。このアームは使いでがあって。

【きだて】いいね。

【他故】レンズの方ばかり見てたからそういう発想はなかったけど、そうだね。

【高畑】PROは大きくてちょっと重いけど、大人的にはこっちの方が楽。

――これでプラモとか作ったりするんですよね。

【高畑】プラモ作ったり、ネイルアートしたりするのは、大人的にはやはり大きいレンズの方がいいんだけど。

【他故】PROは持っているんですけどね、子ども用のは買ったことがなかった。

【高畑】夏休みの子ども用にはこれを使った方がいい。

――親子共用で使えるんじゃないですか。

【きだて】ちゃんと作業するならヘッドルーペの方がやっぱり楽なので、それよりは子ども用のやつの方ががっつり虫メガネとして遊べていいかもね。

【高畑】昆虫の人は、こうやってぶら下げると、アームが胸に当たって安定するから。

【他故】内蔵レンズが飛び出しているみたいで、非常にかっこいい。

【高畑】小さい方は350円くらいなんだよ。

【他故】めちゃくちゃ安い。

――それでマクロコンバーターが買えるんだから(笑)。

【高畑】今デジタルカメラって、ピント合わせを画像でしてるからできるんだよ。

【きだて】そうだね。

【高畑】スマホと組み合わせて大きく写すこともできるので。こういうのを使っていて、見たいものが分かってくると、「もうちょっと倍率が欲しい」とか、「低いのでもいい」とか色々と出てくると思うので。

【他故】そうだよね。

【高畑】すべての観察の基本は見ることなので、ぜひこういうのを使ってほしい。

――もう一つあるんですよね。

【高畑】研究では、観察することと同時に測定することも大事なんです、という話でミドリのこの定規なんですけど。

【きだて】「厚みを測れる定規」ね。

【高畑】これ、大人的にはノギスというやつと一緒なんですけど、要はここのアゴの間にはさんだものを測れるので。意外と、朝顔の観察か何かで記録をとっておいて、葉っぱの幅とか茎の太さとか、特に茎の太さは正確に測るのはかなり難しいんだよ。

【きだて】茎とか円筒のものに普通の定規を当てても、直径はまともに測れないからね。

【高畑】文房具の開発をやっている人間なんかはそうなんだけど、両側からはさんでものを測るというのは、絶対なんだよ。だから、すべての小学生に、理科の時間にこれを配布したいぐらいの気持ちなんですよ。これ大事。ペンの太さなんかでもすぐ分かるし。丸いものを測るのってめちゃくちゃ難しいじゃないですか。

【きだて】そう。このペンの直径が何ミリでとかさ。

【高畑】ペットボトルのキャップなんかでもさ、上手く測れないんだよね。そういうときに、はさんで測れるものがあるだけで、全然観察の精度が上がります。

【きだて】実際、文房具の記事を書くようになってから、手元にノギスが増えたなあ。高いのも買ったし。

――そうか、測って正確なところを書かないといけないんですね。

【高畑】昆虫の体長なんかを測るにしても、これを使えば簡単に分かるじゃないですか。

【きだて】およそこれぐらいってピッと出せて、本当に楽なんだよ。

【高畑】これ、横に副尺というのが付いていて、これを使うと0.1㎜まで測れるんですよ。

【他故】ああ、そうだね。

【きだて】意外と、あれの見方を知らない人がいるけどね。

【高畑】言葉だけだと分かりにくいので、こちらのリンクからどうぞ。分かると測るのが楽なので覚えてください。ものを測るときに、もう1ケタ細かく測れるので。この副尺の数字の見方を知ることは、ルーペに近い意味がある。

【きだて】これは自由研究をやるときのポイントなんだけど、長さ何ミリとか書く場合に、コンマ何ミリまで書くと、途端に本格的な研究っぽくなるんだよ。きちんと調べました感が出るので、先生にほめられるよ。小学生のみんな、覚えておこう!

【他故】本当にそうだよね。「どうやって測ったの」って訊かれるよ。

【高畑】これは日常でとても便利なのね。板の厚みも測れるので、工作なんかにも便利だし。

【きだて】正確に言うとこの定規はノギスじゃないんだけどね。ノギスだと穴の深さを測る用の棒とか、くちばし引っかけて穴の直径測れるようになってるんだけど、そこら辺を簡略化してあるだけだから。これだけでも充分に使えるもんね。

【高畑】これに慣れて、もっとやりたければ、もうちょっと高いやつで、もっとちゃんとしたやつがあるので。それだと、穴の深さを測るのが付いていたりするから。これが使えるようになったらそうしればいいけど、この定規はプラスチックで、落としても割れないし、ケガをしないので。金属のやつは結構重たいし、凶器なので落とせば危ない。

【他故】尖ってるところがあるからね。

【高畑】そう、尖っててあぶないから。これだと、普段は普通にペンケースに入れていてもいいので。普段のペンケースに、ノギスを入れろというのは、昔からそう思っているので。

【他故】でも、今これ学校で使い方を習うの?

【きだて】小学校ではやらないんじゃないかな。俺は中学の技術の授業で習ったけど。

【他故】え~、ある?

【きだて】やらなかったの? 俺はやったよ。

【他故】俺は記憶にないな。

【きだて】その辺は、それこそ先生によるのかもしれない。

【他故】少なくとも、個人的に買わされたことはないからさ。

【きだて】買ってはいないよ。学校にあるやつを授業で使って、副尺の見方を覚えようというのをやったから。

【高畑】俺は、小学校低学年のときに、「副尺が読めるようにならないとダメだ」って言われたから。

【きだて】誰に言われたんだ(笑)。

【高畑】いや、親父にね。「0.1㎜まではノギスで測れ。それより細かく測定したい場合は、マイクロメーターを使え」と。

(一同爆笑)

【きだて】そこまで行くのか~。高畑家の教育は恐いな(笑)。

【高畑】測りたければ、それがあるよということなんだけど。いい加減な定規で測るよりは、これ使えば速く測れるじゃんっていう。俺は小学校3年生のときに、ハンダ付けの特訓をさせられたりしたから。

(一同爆笑)

【高畑】電子工作キットを親父が作っていて面白そうだったから、俺も作りたいと言ったら、「まずはハンダ付けの練習からだ」と言われて、延々と素振りみたいな練習をさせられて。

【きだて】電子ブロックを与えられるのなら分かるけど、ハンダ付けの練習から入るところが恐いわ(笑)。

【他故】もう、ここの家の話は、『巨人の星』と同じレベルだから(笑)。

【高畑】まあ、測定がすべての基本なので。「測れないものは作れない」というのは、ものづりの基本なので。見ていないものは理解できないし、測れないものは作れないんだよ。だから、ものを作るときは、板の厚みを知らないといけないし、ネジの太さを知らないといけないし。

【他故】確かに。

【高畑】それで、世の中は丸いものがすごく多いので、すごく重宝するから、これは是非文系・理系かかわらず、これぐらいで使い方が分かっていると、大人になっても使える技術なので、ぜひぜひ何度でも測れるくせを身につけて下さい。ほら、きだてさんのペンケースにも入っているわけでさ。

【きだて】そう、俺も持ち歩いてます。普通の15㎝プラ定規の代わりにこれを使っても何の支障もないわけじゃん。むしろメリットが多くて。

【他故】そうそう。まずはそこだよね。ちゃんと定規として使える、普段使いができるということが重要だしさ。

【高畑】何気にゼロ始まりだから便利だよね。

【きだて】そう、端っこがゼロ始まりなのも使いやすい。とにかく、こういう測りやすい道具を手に入れたら、小学生なんてほっといてもそこら中を測り始めるから。

【他故】そりゃそうだ。

【高畑】抜けた乳歯の大きさとか。

【きだて】測れる物は片っ端から測り出すよ。

【高畑】最近は、観察して絵を描くのがWebで流行ってるんですよ。身近にあるものの構造とかをちゃんと理解することだけでも、デザインや構造の勉強になるよということで。

【きだて】インスタとかで?

【高畑】そう、インスタで流行ってるんですよ。

【他故】いくつか例を見たことあるよ。静物のスケッチというよりは、細かく観察して描くという感じ。

【高畑】そういう観察スケッチが、大人の間で流行ってるの。デザイナーの人が提唱しているんだけど。

【きだて】へぇ~、面白いね。

【他故】改めて観察して描いてみると、思ったものと違うとかね。

【きだて】スケッチしようと思って観察するのが重要だね。

【高畑】知識があると、「何でこのかたちになっているのか」が分かってくるし。だから、自由研究などのために必ずしも「山へ行かなくてはいけない」ということはなくて、家の中にあるものでもよく観察して、それを絵に描くとか、サイズを測ってみるとか、そういうことをするだけで発見はできるし、自由研究になるよ。だから、こういうものを試してみるのもいいかなと思います。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。

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