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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.14 GWスペシャル・その4

春の総決算特大号 “すご過ぎる”文房具が続々登場!!

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左から高畑編集長、他故さんきだてさん


本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.14は、ゴールデンウイークスペシャルとして、この春に発売された文具の中から「これはスゴイ!」という文具を5日連続で紹介します。

発想がユニークですご過ぎる! 離席時に荷物を見守るモニタリングアラーム

トレネ.jpgモニタリングアラーム「トレネ」(キングジム) 一人で外出した際にカフェなどで荷物を置いたまま離席するときに、スマートフォンと連携して荷物の"見守り"をしてくれるデジタルツール。スマートフォンと「トレネ」を専用アプリで連携させ、荷物の上に「トレネ」を設置。スマートフォンを持ったまま「トレネ」から離れると自動的に警戒状態になり、荷物を動かそうとして「トレネ」に振動が加わると、警告のアラームが鳴る仕組み。スマートフォンを持って「トレネ」に近づくと自動的に警戒状態が解除され、この時に「トレネ」に振動が加わってもアラームが鳴ることはない。税抜6,800円。


――では、次は他故さんですかね。ご紹介いただくのは「トレネ」ですか?

【他故】きだて氏に比べると、何も語ることがないんですけど(笑)。

【きだて】いやいや(笑)。

【他故】とにかく、お皿の上にちょこんと乗っている富士山みたいのが「トレネ」という商品で。

【きだて】かたちがアポロチョコだよね(笑)。

【他故】これが、クラウドファンディングで資金を調達するようなことをしていて、それで応募して初期ロットを手に入れたんですけど。

【高畑】俺も気になって手に入れちゃいました。

【他故】元々僕は、外で作業するような人ではなかったので、そんなに関心なかったんですけど、「森市文具概論」で連載することになったときに、うちで作業をするとあんまり原稿が進まないことが分かってしまって(笑)、外に出てやりたいなと。それで、たまたまいいものがあると手に入れたんですけど。

――はい。

【他故】それで、何が面白いかというと、まだあまり有名じゃないから、これがそういうものだって分からないのがいいんじゃないかと個人的には思っているんです。

【高畑】うん、それはある。

【他故】知っている人はすぐに分かると言うんですけど、ほとんどの人は、これが何物なのか知らないと思うんですよ。ただ何か置いてある程度にしか見えないので、これを持ち上げると光って鳴るなんて思いもしないんですよ。知っている人は「そっと持ち上げればいいんだろ」なんてネットなんかで書いてますけど、そおっと荷物を持ち上げている人がいたら、それは怪しくないですか。

――そうですよね。

【他故】Bluetoothでいつもつながっていて、特定の距離が離れると、スタンバイから鳴るモードに切り替わるんですね。切り替わって、それで荷物が動かされると、これが鳴ったりといういくつかのモードがあって、それで分かるということなんです。

――なるほど。

【他故】それで、使い始めて4カ月くらい経つんですけど、実はその間一度も席を立ったことがないんですよ。

(一同)え~!!

【きだて】何で?

【他故】トイレに行くほど一つの店にいないんだよ。3時間以上いたことないよ。

【きだて】それぐらいいれば、1度は行くだろ?

【他故】最初に飯を食って、何か飲んでからトイレへ行って、それで「さあ、やるかあ」ってパソコンを開くんだけど、その時点ではまだトレネが出てないんだよ。

【きだて】あ~、はい。

【他故】それで作業して、途中で飲み物追加したりするから、後でトイレ行くだろうと思うんだけど、結局行かない。

【高畑】最初にトイレに行くときは、まだカバンの中に入っているけど、そのカバンは置いていくの?

【他故】カバンはドーンと置いておくの。

【高畑】その段階で盗まれることがなくはないけどね。

【きだて】カバンの上にトレネを置いておくのはどうなの?

【他故】カバンの上に置いておいても、フラフラして落っこちたら鳴るからさ。

【高畑】まだ使ったことないんだね。

【他故】実際に、スタンバイさせて置いておくのはやったことがあるんだけど、離れたことがないんですよ。

【きだて】てことは、鳴ったこともないんだよね。

【他故】ない。

――試験的に鳴らしたこともないんですね?

【他故】うるさいのは分かってたので、やってないです。

【高畑】俺は鳴らしたよ。

――ここで鳴らしてみます?

【他故】やってみましょうか。

【きだて】これ、離れる距離も設定できるんだっけ?

【高畑】できるよ。これ光らないね。待機中は光るはずなんだけどな。これって、光る・光らないも選択できるんだっけ?

【他故】できるよ。

【高畑】じゃあ、光ってない状態なだけか。

【他故】そう。光らない状態にしてあるから。

【高畑】そうなんだ。俺は光るようにしているよ。

【きだて】おっ、鳴ったな。

――結構大きい音ですね。

【他故】それで、圏内に入ると止まる。

【高畑】俺は、待機状態でオレンジ色に光るようにしているのね。

【きだて】警戒してるぞという意思表示?

【高畑】そう。知らない人が持ち上げて鳴るよりも、これが光っていて「盗ったらまずいだろう」という雰囲気の方が抑止力だと思っているので。

【他故】なるほどね。

――確かに、光っていると不気味ですよね。

【きだて】何かしてるなという感じはあるから。

――触ると恐いという感じがありますね。

【高畑】離れると光るよ。(離れて)どう?

【きだて】点滅してるよ。

【高畑】何か気持ち悪くない?

――時々光るからね。

【他故】時限爆弾かと思われるかもしれない(笑)。

【高畑】あ~それもやばいね。トイレから戻ってきたら、機動隊が盾を構えてたりしたら(笑)。

【きだて】明らかに不審物だからね。

【高畑】それも困るけど、あからさまに怪しい機械が置いてあるやつを「盗んでやる」と思わないでしょ。光らせて席を立ったことはあるけど、それで鳴ったことはないから、抑止力にはなっていると思う。ただ、これがあったから盗まれなかったかどうかは分からないけど。

【他故】それはね。

【高畑】検証のしようがないんだけど。

【他故】でも、用心のためにいつも持っているし、必要があれば出しておくので。

【高畑】これの弱点は、席を離れてBluetoothの圏外になったときに、「ピピピ」って鳴って現場は慌てていても…。

【きだて】聞こえない距離まで行っちゃうと分からないということだね。

【高畑】自分の方に通知が来ないんだよね。要は通信圏内から外れているから。まだ通信圏内で見守り中だった場合は、スマホにも「今動いたよ」って通知が来るんだけど、Bluetooth圏外に出ちゃったら、それが分からない。鳴っているのを無視して強引に盗まれたとしても、自分には分からないという状況が弱点ではある。だから、本当に抑止力なんだよね。

【他故】そうだよ。

【高畑】だから、あんまり過信はしないで下さいというのはあるんだけど。

【きだて】逆に、セキュリティ商品にそこまで期待をしちゃうのもよくないじゃん。

【他故】まあね。

【きだて】複合的に自分が気を付けるべきであって。

【高畑】そう、そこがね、どこまでこれをおすすめしていいのかとなるとね。僕は他故さんとは逆に、もっと危ない光り方をしているものでもいいのかなと思う。

【きだて】それだと、ルノアールみたいな落ち着きめの薄暗い喫茶店だと迷惑だな。やっぱり光ってるのが目に入ると気になるよね。

【高畑】普段見かけないかたちのものがあって、見かけない光り方をしているというのの気持ち悪さって、通りすがりに強奪しようというにはリスクがある感じがするから。

【他故】そうね。

【高畑】「盗むなよ」という意思表示として。ほら、カサに「お前のじゃない」っていうシールが貼ってあったりするじゃない。

【他故】抑止としてそれはすごく分かるよ。

――街角に貼ってある「見てるぞ」っていう目のシールもそうなのでは。

【高畑】そうなんだけど、それをデジタル製品としてこうやって動いていることで、本当に見ている感じがするじゃないですか。

【きだて】そういう意味では、この何だか分からないかたちとこの真っ黒いボディが、もうちょっと足りないような気がするんだよ。

【他故】もうちょっと気持ち悪い方が?

【きだて】それこそ、黄色と黒のトラ柄にすれば、より警戒色が強まるじゃん。

【高畑】ここが、太陽の塔みたいに目が付いてて光ってるとか。

【きだて】そう。普通に、ここからトゲが生えているだけでいいじゃん。そうしたらちょっとよかったのかなって思う。極端な話。

【高畑】威嚇しているぞっていう。

【他故】ここに目があるとかね。

【きだて】そう。ギョロッていうね。

【高畑】あ~、目ね。

【他故】目があるのはいいかもしれない。「見てるぞ」っていう。監視カメラっぽいのでもいいんだけどね。「見てるぞ」的な何かがあればいいから。

【きだて】そうだよね。

【高畑】ダミーの監視カメラみたいなのね。

【きだて】360°カメラのダミーみたいな、透明のドームの中にね。

【高畑】透明のドーム付いてて、中にレンズっぽいものが見えれば、ちょっと近づいて盗みにくいよね。

【他故】そうね。

【高畑】実際に鳴ってしまうのがよくない状況で、できればそういう状況に会わないのがいいのであって、今のところ他故さんも俺も会ったことがないので。これノートパソコンの上だと絵になるんだけど、普通に席を取っておいて、ノートの上にポンと置いておいてからコーヒーを注文しにいくでもいいんだよ。

【きだて】俺は、まぁ大丈夫じゃない?ぐらいの根拠のない思い込みに従って、普通にノートパソコン置きっぱなしでトイレ行っちゃうんだけどね。

【他故】さすがに「iPad Pro」を買ったときに、「なくしたくないな」と思ったので。

【きだて】そうね。こういうものを抑止力として置いておくことでリスクが減るんだったら、全然ありだとは思うんだ。

【高畑】黄色と黒のトラ模様を入れて、「警戒中」っていう黄色い文字を入れてさ、そんな感じだよね。

――自分でテープ貼ってもいいですよね。

【他故】テプラ貼りましょうか?

――黄色いテープで。

【高畑】そんな感じですよね。

【きだて】オリジナルのカバーか何かを作ればいいんだよね。

【他故】そうだよね。「神は見ている」とでも書いておけば。

(一同爆笑)

【他故】これ自体を持って行かれるとキングジムも考えていて、アタッチメントがあるんだよね。貼り付けるアタッチメント。

【高畑】あ~、本体に貼り付けるアタッチメントね。でも、これ何だか分からないけど、これを盗もうとするやつもやつだよね(笑)。だから、そういうことをやり出すときりがないし。置き忘れも心配なので、いろんなものに置き忘れ防止のトラッカール付けてたりするんだけど、そういうのの1個かなって思うよ。今のデジタル技術で、こういうのが作れるようになってきたんだけど。

【他故】なので、これについては万人が持つわけではないけど、今回の中では面白い商品で、「試してみてはどうですか」ということですよ。

――これを使うことで、カフェで落ち着いて仕事ができるんならいいんじゃないですか。これは、持ち去るというのもそうですが、ノートパソコンの画面が見られないようにするという意味もありそうですね。

【他故】触れないようにしちゃうというものですからね。

【高畑】まあ、それにしても、キングジムのデジタルツールの攻め方の面白さはあるよね(笑)。

――これ、いくらでしたっけ?

【きだて】6,800円。気になってたから、値段だけは調べたよ(笑)。ぶっちゃけ、俺だって開き直ってはいるけど、不安がないわけじゃないからね。

【他故】そりゃそうだろ(笑)。

【高畑】セキュリティも、面倒くささとの兼ね合いがあるからね。

【他故】何度も言いますけど、仕掛けたことはあっても席を離れたことがないという変わった人間ですけども、でも安心はできたのでね。これを置くことで。

――7,000円弱で安心が買えるのであれば、いいんじゃないですか。


*次回(5月6日)は「ジェットストリーム プライム 回転操出式シングル」を紹介します。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。

弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売された。

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