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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.13前編

透明ボディのペンがブーム!?

ジャム.jpg
左からきだてさん、高畑編集長、他故さん


本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.13前編では、限定品などで注目を集める透明ボディの筆記具を取り上げました。

インク色も素敵! コンプリートしたくなる限定ボールペン

1.jpgエナージェルインフリー」(ぺんてる) 2018年2月に発売した、なめらかで速乾性の高いゲルインキボールペン「エナージェル」のクリアボディの数量限定アイテム。ブラック、ブルー、ブルーブラック、オレンジ、ターコイズブルーの個性的なインキカラーをラインアップ。各税抜200円、専用替芯は1本税抜80円。

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――今回は、透明ボディーのペンで新製品が立て続けに登場したので、取り上げたいと思います。まずは「エナージェル インフリー」からにしましょう。全色コンプリートされているのはどなたでしたっけ?

【他故】私全色持ってます。

【きだて】俺も一応持ってます。

【高畑】僕も持ってまーす。

――3人全員ですか(笑)。

【他故】ただ、使用頻度から言っても、何にしても、一番きれいなのはやっぱりターコイズですよ。

――ですよね。

【高畑】「もうちょっと買っておけばよかった」っていうね。最初買ったときに「2本かな」とか言っていたけど。もうちょっと買っておけばよかった。

【きだて】そうなるのを見越して、ターコイズだけはリフィルを3本追加で買っといたわ。

【高畑】俺が買ったときは本体しかなかったから、本体を2本買ったんだけどね。本体を3、4本買うのはちょっとなと思ったので。

【きだて】遠慮の基準は本体3本以上なのか。

【他故】だけど、本体と言ったって、実際は中のリフィルの色だけでしょ。ガワ的には変わりないでしょ。

【きだて】そう、一緒。

――私もターコイズのリフィル2本買いましたからね。

【他故】私も、リフィル3本と本体2本買いましたよ。

【きだて】ていうか、「エナージェル」だから、使い始めたらあっという間にインクがなくなるしね。気に入った色なら予備のリフィルは欲しいよね。

【他故】0.5mmだから余計にね。

【きだて】本当にドバッと出るので。

【他故】するすると出る。

――お店で見ていると、ターコイズのリフィルがなくなってますものね。

【他故】本体もないですよ。

【高畑】ターコイズは、本体も何もなくて、そこだけスコーンと抜けているから。

【きだて】店頭での人気はとにかくターコイズ、次にオレンジで、そのあとはトントンという。

――やっぱり、この2つなんですね。

【きだて】この2つが圧倒的に人気。

【他故】この2つは本当にすごいですよ。

【きだて】どの文具店さんでも、インフリー什器は0.5㎜の一番右、ターコイズのところがスコンと穴が開いてる。

【他故】ターコイズのところに、たまに商品が入ってくるから、「あれっ」て思いながらのぞいてみるとブルーブラックだったりするけど(笑)。

【きだて】一応「ブルーブラック」は新色なんだよね。今まで「エナージェル」に、ブルーブラックがなかったんだよ。

【高畑】ブルーブラックはブルーブラックで人気なんだけど、圧倒的にその2色が人気だから。

――他にない色ですからね。

【他故】外観もきれいなんですよ。

【きだて】なにより、やっぱり発色がすごい。エナージェルインクってそもそもにじみが少ないし、書いた文字がキリッと濃いでしょ。だから、オレンジでも視認性がすごく高いのよ。

【高畑】ああ、そうだ。オレンジが見やすいの。

【他故】見やすいんだよね。

【きだて】かなり明るいオレンジだから、白い紙に書くと読みにくいかなと思ってたんだけど、ぜんぜん読めるんだもの。

【他故】文字としてちゃんと読めるものね。なんか、みかんの香りが匂い立つぐらいのイメージでいつも見ているんだけど。

【きだて】最初にこのオレンジ見たとき、「あっ、ネーポン色だ」って思ったよ。蛍光オレンジジュースの(笑)。

【高畑】ネーポンって何それ?

【きだて】関西の一部でのみ流通してる瓶入りのジュース。『探偵ナイトスクープ』でも取り上げられたよ。

【他故】それは知らね~(笑)。

【高畑】でも、いい色だよ。

【きだて】すごい鮮やかなのね。

――これ、リフィル自体に色が付いているんですよね。

【きだて】リフィルにカラーのフィルム巻いてるんだよね。

【高畑】軸が透明ならインクの色が見えるからそれで良さそうに思うかもしれないけど、インクがそのまま見えていても、こんなに鮮やかに見えないんだよね。黒っぽく見えてしまう。

【他故】そう。

【高畑】だから、イメージ色を外側に出している。

【きだて】その辺が上手いなと思って。

【高畑】「ボールサインノック」もそうだったじゃん。

【他故】そうだね。外から色が分かって、すごく期待感があるじゃないですか。「ああ、この色が出るんだ」って。

【高畑】それで、期待された色がちゃんと出てくるのがまたいいじゃない。

【他故】「そう、本当にこの色」っていう感じでね。

【高畑】最近の、リフィルをきれいにデザインするっていうのが、大分こなれてきたというか。インフリーは、最近っぽいデザインだよね。

【きだて】そうそう。そういう方法論っていうか、「これでお客さんが喜ぶ」っていうのが、ちゃんと分かってきたというか。

【高畑】冷静に考えると、エナージェルの金型そのままなんだよね。何で今までこれに気がつかなかったんだろうというくらい、きれいだよね。

――透明度は相当高いですよね。

【高畑】ねえ。

【他故】これはすごくきれいですよ。

【高畑】たまにあるんだよね。透明化してみたけれど、あんまりきれいじゃないものって。設計的にあんまりよくなかったというのが金型であるんだけど、これはやっぱりいい金型だね。筆記具メーカーさんの量産する金型は、やっぱりきれいだよ。

【きだて】これ、ひと昔前のデザインだったら、軸を角柱で作ったと思うんだよ。

【高畑】それは、透明軸にするときに? プリズム効果みたいなのかな?

【きだて】古から続くゼブラ「クリスタル」の呪縛というか。でも、スマートに円筒にした方が中のリフィルもキレイに見えるし、やっぱりこっちの方がいいな。

【高畑】もちろん、型はそのままというのもあるだろうし。それにしてもきれいだよね。

――通常のエナージェルだと、このサイドにロゴが入らないですよね。

【他故】全体的に模様が入っていて、どこにロゴがあるかはっきり憶えていないんですけど(笑)。

――通常品がここにありますけど、クリップの下ですね。

【きだて】あ~、そうだ、ここだ。実物見ると思い出すな。

【高畑】昔から、樹脂自体は半透明だったんだね。

【他故】クリスタルの部分はあるんだけど、銀色のイメージが強くって。

【高畑】ノックのあたりに、切り込みというかツキノワグマみたいなモチーフがあったんだけど、今回は外してきているよね。

【きだて】だって、特にいらないもの。

――透明軸だから付けようがないですよね。

【他故】今回はなし。

【きだて】シリーズモチーフみたいな話なんだろうけど、ああいうの必須って思ってるのはメーカー側だけだったりしてね。

【他故】統一されているという意味じゃないか。

【きだて】あくまでも個人の主観だけど、これがつくことで価値が上がるかというと。

――別にいいと思うけどな。

【高畑】最初はこれに意味があったと思うけど。

【きだて】スポーツ用品っぽくて、チープなんだ。

――これは、書き味のなめらかさを表現しているんじゃないですかね。「ジェットストリーム」と同じように。

【高畑】まあ、きだてさんの言うことも分かるんだけど、ただ最初に筆記具を出すときにみんなデザインを頑張るんだよ。そこに関して、みんながみんな、レベルの高いデザイン美意識で見てくれるかというと、そうでもないんだよね。

【きだて】うーん。

【高畑】そこが難しくて、最初から色や特徴付けする記号的なデザインのないストレートなやつを出したら、それで新商品が売れるかというと、分からないところもあって、ああいうデザインにしちゃうというのはある。ただ、結果的に時間が経って、ブランドや商品が充分に浸透したあとで、シンプルな透明になったりということはあるんだけどね。いやあでも、上手いこときれいになったなというね。

――すっきり感が違いますよね。

【他故】正直、エナージェルの性能がいいのは分かってたんですが、手が出なかったんですよ。僕も、このデザインは決して好きじゃないので(笑)。でも、こっちだったらホイホイ買っちゃうというのも、不思議な感じがしますけどね。

――エナージェルは、「エナージェルユーロ」のあのブルーの軸色がきれいですよね。

【高畑】そうですね。僕も、どっちかというとユーロ派です。

【他故】「エナージェルユーロ」はいい感じだなと思っているんですけど、どうもノック式に手が出なくって。

【きだて】個人的に、このノックは好きなんですけどね。このごんぶとノックが。

【高畑】あ~、ノックパーツがでかいのが好きなんだよね。

【きだて】押し込んだ感じも、すごい好きなのよ。「ゴリン」っていう。押し応えがあるというか、気持ちいいので。ノックパーツと見た目は好きなんだけどね。

【高畑】エナージェルとユーロの書き心地が違わね?って、前からずっと思っていて、俺はユーロ派だったんだけどさ、このターコイズはこれにしかないからさ。

【他故】きだて氏は、このグリップ滑らない?

【きだて】(きっぱりと)滑る。ツルッツルです。

【他故】最初、粉でもふいているんじゃないかというくらいツルツルだったんで、皆さんこれで大丈夫なんでしょうかというくらい(笑)。

【きだて】なんか、指なじみしないというか。

【高畑】普通のエナージェルはどう?

【きだて】素材一緒でしょ。(通常品のエナージェルのグリップを触って)あれ、違うな? 経年かな? インフリーはエラストマーでしょ。

【高畑】いや、どっちもエラストマーだよ。

【きだて】ああ、本当だ。

【他故】エラストマーだけど、何かが違う気がするんだよ。

――経年かもしれませんよ。

【高畑】配合変えたりするから。あと、色によって違ったりするから、違う感じするのかも。

【他故】ああ、色で違うこともありえるか。

【高畑】こういうのって、顔料の量とか、素材の色を変えたりすると性質が変わったりすることもあるからさ。

――これは、透明感を出したかったからというのもあるかもしれないですよ。

【高畑】透明度を上げるために、何かやるとこうなっちゃうということもあるけど、どうなんだろう?

【他故】今は慣れてきたから平気なんだけど、最初のうちはツルツルで「あれ」っと思ったから。不思議なものだな~。でも、好きだから使っているし、普段から持ち歩いているし。

【きだて】本格的に運用し始めたら「プニュグリップ」付けるだろうな。

【他故】大好きな「プニュグリップ」ね(笑)。

【高畑】これも時代なんだろうね。「エナージェル」が最初に発売されたときに、このデザインにはできなかったんだろうなという気はする。最近な感じはすごいするな。

【他故】「エナージェル」が発売されたのって、21世紀入りたてぐらいじゃないか。

――「ジェットストリーム」よりちょっと前ぐらいですよ。2003年発売ですね。「サラサクリップ」と同級生ですよ。

【きだて】15年前のペンですね。

【他故】それが、こうやってきれいになって、まだまだ現役という感じがね。

【きだて】“就活ボールペン”と言われ出してから、「エナージェル」自体は定番化していたじゃない。だから、ずっとファンはいたんだよ。

【他故】ただ、多色化されてなかったからね。

――カラーボールペンという扱いじゃないですよね。

【他故】そう、カラーのバリエーションが少なかったので。

――ブルーブラックがなかったというのも意外でしたね。

【きだて】実用ペンという位置付けで、ブルーブラックがなかったというこの意外さ。

【高畑】ブルーブラックとか、くすんだ色が流行り始めたのって、これが出たときよりもちょっと後だよね。

【他故】そうそう、その時はまだね。

――「エナージェル」は欧米でも販売されているけど、欧米はブルーを使うことが多いから。そんな理由ですかね?

【高畑】ブルーブラックって、どのメーカーもあまり出してなかったよね。

【きだて】ラインナップは入ってなかったね。

【高畑】日本だけで売れているからじゃない。海外が需要大きいわけではなくって。

【他故】海外の人は、ブルーがあればいいはずなので。

【高畑】日本人が好きだから。日本人用のブラックと一緒じゃないの。

【きだて】そういうことかな。

――日本だと、ブルーだと青すぎるし、黒だとつまらないから、ブルーブラックということかな。

【他故】ヨーロッパの人は、青ければ青いほどいいですからね。

【きだて】「エナージェル」のブルーはすごい青いしな。

【他故】めっちゃ青いよ。

――あの色きれいですよね。

【きだて】インフリーで再確認したけど、鮮やかだけど視認性もいいという、すごいブルー。ターコイズに飽きたら、このブルーかブルーブラックをレギュラーにしようかなと。ブルーブラックもかなりいいよね。こってりしたブルーブラック。

【他故】そうなんだよね。「シグノ」とも違うし、「ハイテック」とも違うし。それぞれ何となく違うところがあって。

【きだて】そうなんだよね。0.4㎜にもブルーブラックを用意してくれているので、それを使う感じかな。

【高畑】今回は、透明軸を出してきて、追加で色をさして、その全部が上手いことはまった感じがするよね。ブルーブラックは堅いところで、ピンクとか他の色は入れずにターコイズとオレンジという色選択がまたおしゃれだったなあ。

【きだて】そうだよね。これだったらピンクを入れたい誘惑にかられるよね。

――そうか、暖色系はオレンジしかないんですね。

【高畑】エナージェルって、グリーンがまだないんじゃない?

【他故】ないよ。

【高畑】赤、青、黒があってグリーン作らずにターコイズ作るというのがね。元々スポットのつもりで作ったからできた大胆なやり方だったんだろうけど、あまりに惜しいよね。

――このまま埋もれてしまうには惜しいという。

【高畑】数量限定で発売しているんだけどさ、「残せよ」って思う。

【きだて】ユーザーとしては、「頼むよ」と思うよね。

【他故】でも、ターコイズって、海外用でありませんでしたっけ? 替芯を輸入で買ったという人の話を聞いたことがあるような気がする。

(一同)へぇ~。

【他故】リフィルに色が付いていない、ノーマル品なんですけど。

【高畑】検索してみたら、「ノック式エナージェル海外仕様を買ってみた」とか出てきたぞ。ターコイズブルーもあるね。やっぱりあるんだ。

【他故】ベースはあるんだね。

【高畑】この、海外モデルいいじゃんね。

【きだて】グリップにそのインクの色が入っているのいいじゃん。

【他故】グリップの色いいね。もちろん、インフリーもいいけどさ。

【高畑】じゃあ、ターコイズはその下地があったのね。

【きだて】この海外版のターコイズのグリップを、インフリーに付け替えたいね。

【高畑】そうなるね、分かる。

【他故】そういうのもありだね。

【高畑】もう何度も言っているんだけどね。色柄違いで買うのもどうかなと思いつつ、つい買っちゃう魔力を持っているよ。

――確かに、これ1本買えば、リフィル入れ替えて使ってもいいですからね。

【高畑】まあね。でも、このボディがないと、リフィル作り続ける意味がないし、リフィルがあってのこのきれいなボディだから。これは、ぜひ続けてほしいな。

【他故】この組み合わせで、ぜひ続けてほしい。

【高畑】この場を借りて、ぺんてるの人に「やってくれ」「続けてくれ」と。

【きだて】頼みますよ、ぺんてるさん。

――でも、これだけ売れているから、続ける可能性はあるんじゃないですか。

【高畑】ねえ。

【他故】続けるにしても、このままのかたちかどうかは分からないですね。

【高畑】でも、通常のエナージェルにしても、本体のデザインを見直す意味はあるということは、何となくありそうだね。

――ちなみに、みなさんが一番好きなのは、やっぱりターコイズなんですか?

【他故】一番使うのはターコイズですよ。

【きだて】やっぱり、ターコイズだね。

【他故】他のメーカーのターコイズっぽいものも買い揃えて、書き比べてみたんですけど、今のところこれが一番好き。

【高畑】きれいだよね。で、オレンジは書類にチェックを入れるのにめちゃくちゃいいので、これは両方ともいいです。

――このリフィルは定番になりそうじゃないですか。

【高畑】せめてリフィルだけでも残ってくれれば。そうすれば、俺は今持っているボディで頑張るよ。

【きだて】そりゃそうだ(笑)。

大人気シャープペンのメカの動きが見える!

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アドバンス 限定スケルトンボディ(写真右)」「クルトガ海外限定モデル」(三菱鉛筆) 2018年3月14日に数量限定で発売された、長時間書き続けても文字の濃さも太さもずっと同じキレイな文字が書けるシャープペンシル「ADVANCE(アドバンス)」のスケルトンボディは、内部のバネや自動芯回転機構など全体の構造が見えるデザイン。税抜550円。“芯が回ってトガり続ける”人気のシャープペンシル「クルトガ」の発売10周年を記念して3月20日から数量限定で発売された「海外限定モデル」は、スケルトンカラー4色(透明スモーク、透明ブルー、透明ピンク、透明グリーン)をラインアップ。税抜450円。


――次は「クルトガ」10周年限定のスケルトンモデルと、「アドバンス」限定カラーのスケルトンモデルです。もう出てるんでしたっけ?

【きだて】出てます。「アドバンス」スケルトンは早くも売り切れなお店もあります。

【他故】「クルトガ」も大分お店に並び始めてますよ。

――「クルトガ」の方は、海外モデルなんですよね。

【他故】そうですよ。みんなスケルトンなんですよね。

【高畑】俺、これ前にスイス行ってきたときに買ってきたんだよ。だから、これが出たときに、ここに書いてある文言を憶えていたんだよ。海外の人に、芯が回るのを主張するために、このシールに「Revolving action keeps the lead Sharp!」と書いてあるんだよ。それが面白いと思って買ってきて喜んでたら、輸入されてしまったのでちょっとね。まあ、別にいいんですけど(笑)。

――レア感が薄れてしまったという(笑)。

【高畑】というモデルで、半透明だったんですよ。それで、「アドバンス」が完全透明軸だね。

【きだて】「アドバンス」のスケルトンは、書くたびに中でヒコヒコとメカが動くのがかわいいんだ。

【高畑】いいですよね。デモンストレーターって、万年筆だとよくあるけどね。これは、中の構造を見せてもいいとなっていると思うんですけど。まあ、ありがたいよね。僕みたいな分解派にとっては。

(一同爆笑)

【高畑】自分で分解はできても、動く様をこんなに見られないから。

【きだて】生きたまま中が見えるのはありがたいよね。

【高畑】これはまだ透明度があるからいいけど、最初のモデルは、軸に塗装をしているから、中がよく見えないんだよね。

――ああ、そうでしたね。

【高畑】完全に中が隠れる印刷がされているので。

――前の鼎談で、いずれこのシャープペンの認知度が高まってくれば、メカの部分が見えない不透明ボディが出てくると言っていたじゃないですか。

【高畑】全身透明のやつが先に出てきた(笑)。

【きだて】そっちだったかという(笑)。

【高畑】きだてさん的には、ここにグリップが付けられてないので。

【きだて】そうだね。でも、これはメカが動いているのを見るための観賞用だよ。

【他故】観賞用(爆笑)。

【高畑】そのうちここに、動く人の絵とか入れたりして。すごい小さな「イッツ・ア・スモールワールド」的な何かが。

【きだて】お年寄り向けに、昔の写真が中で回転するのが見えるってのはどうだろう。走馬燈モデルという。

――何とまあ不謹慎な!

【他故】小さすぎて見えんだろ。

【高畑】中の仕組みが見えることが、プラスなのかマイナスなのかというのがあるじゃないですか。これは堂々と、「見せメカ」として見せても大丈夫という感じなんだろうね。

【他故】そうだね。

【高畑】よくできているよね。

――元々、このメカの部分は見せていましたからね。

【高畑】見せたかったからね。まあ、グリップのところは見せるようになっていたけど、その上の軸の部分はそうじゃなかったから。

【きだて】しかしあれだね、透明iMac作ったジョナサン・アイブも、2018年に日本でスケルトンブームが復活しようとは思ってなかっただろうね(笑)。

【高畑】筆記具では、インクが流行り、そこに入れるデモンストレーターが流行ったところで、「カクノ」が来てというところで、何か見えた感じがするよね。透明「カクノ」が出たときの「これでええやん」って思った感がすごく強くて。

――やっぱり、「カクノ」がきっかけなんですかね。

【きだて】やっぱり、きっかけにはなったと思うんだけどね。

【高畑】万年筆では、「ハイエースネオ」も透明で出してたけど、あれは擦りガラス調だったじゃない。完全に透明がきれいというのを真正面から出したインパクトがあるじゃない。

【他故】大きいよね。

【高畑】今回のは、本当に無色透明のがど真ん中にあって、その周りにカラーがあるじゃないですか。そこが今まではちょっと違う、新しい世代の透明という感じがする。

――普通は、ここまで大胆に見せないですよね。

【他故】冷静に考えたら、ここの軸のところを見せる必要はないですよね。(笑)。

【高畑】これ、初めから透明で出そうとしたら、周りから「安っぽいからやめろ」と言われて、絶対に印刷を入れたと思うんだよね。

【きだて】だろうね、それは分かる。

【高畑】これは、中身に対する自信の表れだと思うよ。

【きだて】それが透明文具ブームと上手くかみ合ったというか。

【高畑】透明軸が本当にきれいになったよね。

【他故】本当にそうだよね。

――そして「クルトガ」の方は、10周年のお祝いということで。

【高畑】「クルトガ」のは海外モデルだけど、海外で「回る」というのが、ちゃんと認識されているのかな。

【きだて】出た当初から、海外だとアルファベットで画数が少ないから、「クルトガ」の意味ないという話があったじゃん。あれは今どうなの?

【他故】漢字使ってる中国なんかでは売れているんじゃないの。

【高畑】これ、ヨーロッパで売っているモデルでしょ。だから、ヨーロッパではどうなんだろうね。お店では見たけど、実際に流行っているかどうかは分からない。

【他故】この間ニュースに出ていたけど、アメリカの若者は筆記体で書けないみたいじゃないですか。

――じゃあ、ブロック体だと「クルトガ」は有効かな?

【他故】でも、キーボード使うから字も書けない。書こうと思ったら、自分の字も読めない(笑)。

――それは、ものすごい問題じゃないですか。

【きだて】まあ、日本だとさらに進んで、キーボードも打てない高校生とかいますからね。フリックしかできない。

【高畑】でも、フリックが超絶早いやつとかいるからな(笑)。それはともかく、こういう商品がひと回りして、今は踊り場だからこういうものを出してね。

――起爆剤というか刺激策というか。でも、こういうことって、10年売り続けているからこそできることですからね。

【高畑】そういうことですよ。

【きだて】だって、つい先日の『お願いランキング』文房具総選挙で、10代に聞いたら1位が「クルトガ」だったでしょ。

【高畑】全ての文房具のジャンルの中で「クルトガ」が1位というのは、やっぱりすごいなと思うよ。

――「クルトガ」に対する信頼度は高いんですね。

【他故】高いと思いますよ。

【高畑】ど真ん中の位置を取ったので。シャープペンにおける「ジェットストリーム」的な存在になった。だから、三菱鉛筆は強いよね。

【きだて】シャープペンとボールペンで1位だから強えよな。

クリスタルな入門万年筆登場

プラチナ1.jpgプレピー クリスタル」(プラチナ万年筆) 低価格ながらも本格的な書き味の万年筆として人気の「preppy(プレピー)」にインク色が確認しやすい透明ボディーが登場。キャップを締めた状態で、カートリッジインクを差し込んだまま1年経ってもインクが乾かない” スリップシール機構” も搭載。税抜400円。

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――最後は「プレピー クリスタル」です。

【他故】「プレピー」の中でも特別な商品ということなんですか?

――そうですよね。値段もちょっと高くて400円ですよ(従来品は300円)。

【高畑】元々「プレピー」も、透明なボディにプリントが入っているかたちじゃない。それをすごく極小化したというか。他の透明ものと比べると、変えた部分がすごく少ないんだよね。

――これが元の「プレピー」です。

【他故】これって、フィルムが巻いてあるの?

【高畑】これ、成型色だね。

【きだて】ああ、それに文字を印刷しているんだ。

【他故】そうか、塗ってあるわけじゃないのか。断面から見たらそうだよね。

【高畑】それで今回透明軸を出したんだけど、これ販売時にはブラックのインクが入っているの?

【他故】黒のカートリッジが入っているんじゃない?

――万年筆って、大体黒のカートリッジがおまけで入っていたりするじゃないですか。

【高畑】でも、これはコンバーター付きで買うべきだし、同時期に「ミクサブルインク」の新しいボトルが出るじゃない。この「ミクサブルインク」もまたちょっと変わったインクで、万年筆のインクは普通は混ぜてはいけないものなんだけど、混合しても構わないというインクなんだよ。そのインクと同時期に出すことを考えてみても、これはコンバーターで使ってほしいというものだよね。

【きだて】というか、透明軸に黒のカートリッジ入れても、なんの面白みもないし。

【高畑】海外だと、柄入りのカートリッジを売っていたりするけどね。

【きだて】中国にもあったよ。ファニーな柄入りの学童万年筆用カートリッジ。

【高畑】「プレピー クリスタル」に関しては、コンバーターとセットで売ってほしいくらいだけど、リテラシーのない人でもすぐに使えるようにカートリッジ入れているということだね。でも、ファンの人ならば、コンバーターでいろんなインクを楽しむのがいいよね。

【他故】「ミクサブルインク」の新しい什器だと、この万年筆にインクが入っているんですよね。

【きだて】あ~、そうなんだ。

【他故】0.3㎜で細字でしたっけ?

【高畑】0.2があるんじゃない?

【他故】0.2㎜が極細か。で、0.5㎜が中字だ。それで、この「クリスタル」は0.3だけ?

――そうですね、細字しかないです。

【きだて】そうか、中字と極細がないのね。

【高畑】プラチナが不思議なのが、コンバーターが金と銀の2つあって、値段が違うんだよね。

【きだて】同じ物なのにな。

【高畑】これは銀色のコンバーターを付けないとダメだよね。

【きだて】銀の方が落ち着きはあるよね。

【高畑】残念ながら、銀の方が値段が若干高いんだけど。

【きだて】200円高いんだっけ?

【他故】そう。500円と700円。

【高畑】それで、銀のコンバーターを入れて色々と遊ぼうということで。これ、銀のコンバーターと本体を合わせて1,100円だっけ?

【他故】そうだね。

【高畑】この値段でコンバーター付きが手に入るというところを考えると、なかなかよくできているよ。

【きだて】これ、軸が細いから、ビーズとかは入らないな。

【他故】また、そんなこと考えて(笑)。コンバーターが長いから入らないよ。

【きだて】あ~、そうかそうか。

【高畑】でも、1㎝弱ぐらいのすき間はありそうだぞ。

【他故】たった1㎝弱(笑)。

【高畑】もうすでに、何か入れて改造する気満々のきだてさんですけど。

【きだて】いやいや(笑)。

【高畑】それはともかく、今みんないっぱいインク持ってるじゃん。透明軸はやっぱり便利だよ。「何のインク入れたっけ?」っていつも思うから。

【他故】色は特にそうだね。

【高畑】俺、コンバーターにマステを貼って、入れたインクの名前を書いているもの。

【きだて】それよりは、見えた方がスマートだわ。これ、出たばっかりのセーラーの100色インクのテスターとして使うとかね。

【他故】これが一番安い組み合わせになるのか。

【高畑】1,100円×100色で11万円でしょ。インクはいくらだっけ?

【きだて】そんなにビックリ値段ではなかったような。

【他故】1,200円じゃなかったかな。20ミリリットル入ってその値段だよ。

【きだて】あ~、そうだね。20ミリリットルで1,200円だ。

【高畑】ということは、1,200円×100色で…、23万円で100色万年筆だね。

【きだて】トライアルとしては、悪い値段ではないね。

【他故】トライアル(笑)。

【高畑】でも、100色分あって、それを平等に使っていくのは難しいよなあ。どんだけ書くんだっていう(笑)。

【きだて】観賞用だよ、観賞用(笑)。

【高畑】インク乾いちゃうからね。でも、スリップシール機構だからいい方だけどね。

【他故】乾きにくいからね。

【高畑】でも、1年以内に使い切らないといけないので、1日2、3色は使っていかないと。

【きだて】そうだね。

【高畑】でもこれで、セーラーから「ハイエースネオ」の透明が出て、「カクノ」の透明が出て、「プレピー クリスタル」が出るから。

【きだて】各社出そろった感はあるな。

【高畑】それぞれ使い分けて、楽しめばいいのかなと思うよ。

【きだて】この透明ブームはいつまで続くのかね? 定着するのかな。

【他故】どうかな。波があると思うので、「透明ダサいよね」という時期は来ると思うけど(笑)。

――でも、みんな結構透明好きじゃないですか。特に、万年筆を使っている人はすごい好きですよね。

【きだて】見た目に加えて、透明なところに実用価値もあるからね。

【高畑】透明文具ブームは、iMacの頃は「色がかわいい」で透明化したけど、今上手くいっているのは、インクを見せるとか何かを見せるという方向で、そことからんでいる透明だからというのもあるよね。

【他故】そうだよね。

【きだて】見た目は流行の波が大きいけど、実用性の部分はそんなにブレないもんね。

【高畑】そこら辺が透明化されるのはいいことだよね。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『
この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。

弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売された。

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